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既知の土地が舞台だったので。
同棲相手の男に殺された女性。
犯人はすぐに捕まるが、その取り調べの中で、
女性がつぶやいた言葉で過去の未解決事件が動き出す。
結論から言うと面白かった。
合田刑事は警察大学校の教師となっていて、
ぎらぎらした感が薄まっていたせいか。
スーパーリアリズムが、
知っている地域に対して発揮されていたせいか。
事件がほぼ過去の事件に絞られていたからか。
山も工場操業も宗教も関係なかったからか。
コールドケースを追う展開だからか。
結末は、相変わらず、あるようなないようなすっきりしない。
とはいえ、今までの作品に比べればまだまし。
そういう意味では、このシリーズを最初から読んで良かったのかも。
最後には、合田刑事が、元刑事がモンストをやるという、
一貫性の感じられないこの一連の作品群を。
そして、Lemon Dropのケーキが食べたい。
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登場人物の多さ、彼らの現在と回想が渦まいてくるようでなかなか入り込めず、ようやく馴染み乗ってきたところで終わってしまった。舞台の土地勘がないので公園を検索したりして、後は脳内で町を作り上げて読んだ。読みごたえがあった。
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我らが少女A 高村薫 2019 9/8読了
濃厚濃密な高村ワールドがここに極まれり!
まぁ個人的には初セミナーの準備やラジオの新番組の準備やらで落ち着いて読めない時間もありましたが
まったく裏切ることのない小説の素晴らしさを味あわせてくださいました。
本来ならあまり好きじゃない挿し絵のさり気なさにも常に新しい試みに挑戦されている気概にも感じ入りました。
日々の暮らしの中にこそドラマやミステリーや事件が常に其処此処に潜んでいるんだと改めて感じさせられ
この世の全ての人が物語の主人公なんだと感じさせられました。
素晴らし作品でした。
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物語の視点人物が入れ替わっていく、このスタイルで一作描き切る高村先生の力に感服する。そのうえで合田さんを登場させたのは読者へのサービスなんでしょうね。
一つの事件をめぐる様々な人間の記憶が語られ、関係性が再構築されていったりする。これが高村先生の濃密な描写で続く。合理的でないものが、冷徹に精妙に言語化されている。これは凄い。
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かつて新小金井駅付近に住んでいた自分としては何とも感慨深い作品です。
12年前の事件を関係者たちが当時見えなかったものをひとつづつ紐解いていく時間の流れを楽しみました。
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髙村薫さん、気になるんですが相変わらずむつかしいです。
毎日新聞に連載されていた当時は楽しみにしていましたが、毎朝毎朝、細切れに読んで到底理解できる内容ではないなと、単行本になるのを待っていました。
久しぶりの合田雄一郎の登場ということで皆さんの期待も高まっているようでしたが、合田さんもすでに一線を退き警察学校の先生をなさっていて、表立って捜査に加わるということはないです。
また単なるミステリーではないので(高村さんはこのミステリーというジャンルにひとくくりにされるのを嫌っておられますよね?)犯人と刑事との丁々発止みたいなものもないし、結局最後まで犯人が明らかにならないという、別に犯人はどうでもいいではないけれど、その事件を取り巻く人たちの生活、人生観、などが昔にさかのぼって目まぐるしく繰り広げられて、一つ一つ理解して追いつくのが大変でありました。
読後は、あ~面白かったなどということはなく、心に小さなさざ波がいつまでもいつまでも立っているような、ざわつきを感じています。
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一人の女性が殺された事件。犯人もすぐわかり、とりたてて特別なことがあるように思えなかったその事件が十二年前の未解決事件を呼び起こすミステリ。だけど謎を解くことよりも、各登場人物の物語が綴られることが作品のメインになっていると思います。すっきりとした解決を求めて読むと肩透かしかも。
忘れていたはずの過去を呼び起こされ、戸惑う関係者たち。各人の関係が再びつながることによって甦る過去の記憶。今の生活が大切で過去などに関わっていられないはずなのに、それでも容赦なく迫りくる事件の余韻。ひたすら日常的に思える物語の中で描かれる非現実が、実に不吉です。新たな事件が起こるわけでもなし、驚愕の事実が明かされるわけでもなし、だけれど読みごたえはたっぷりでした。
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ある殺人事件がきっかけで、12年前の未解決事件
に急転、あるいは解決に向かうかと思ったが、
そうではなく、12年前の被害者の関係者に様々な
気持ちの変化を丁寧に描かれていて、ミステリー
としては、かなり変化球な警察小説でした。
読後感は、犯人が分からない形で終わりましたが
最後まで、各登場人物の心境の変化に興味が尽き
ませんでした。
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宮部みゆきならともかく、高村薫ワールドで、モンストやらドラクエやらに遭遇するとは思わなかった。シャドバ?デッキ構築?あ、本筋と無関係でした(笑)
舞台は小金井周辺で、殺人現場は野川公園。
うーん、ローカル過ぎる。おまけにポルシェ洋菓子店やらLEMON DROPやら、実在のお店がわんさと出てくる。そうか、先日吉祥寺に行った時、なんか全然別の街…と思ったら、ロンロンがないからだったのか!
登場人物は多めだが、キャラ造形が地道に丁寧にされるせいで混乱はない。同様にストーリーも阿漕なイベントでどんでん返しってこともなく、反則なギミックに欺かれることもなく、外堀を確実にじっくり埋めながら、現在形の神視点の三人称で淡々と終焉へと導かれる。
…ってでも、コレ、フーダニットじゃなかったってこと?うーん。仮にも警察官小説で、このラストはなくないか?ま、警視庁へ異動した合田の次作に期待する…って、次も7年後か?w
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高村薫作品、初読了。細かい人物描写と情景描写にまず圧倒された。ミステリー小説として読み進めていると、完全に裏切られた。恐怖と切なさと様々な想いに至る素晴らしい作品だった。他の合田刑事シリーズも是非読みたい。
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『つみびと』を読んだ後、次はすっきりとした小説が読みたいと叫んで、次に回ってきた本がこれだ。
現代人は誰も彼もが病んでいるのか?
まぁ、一人になったときにネガティブになった考えになることもある。が、こいつはどうだ。
登場人物すべてが病んでいる。
総じて鬱病患者だ。
そんな登場人物がおりなすストーリーなど、読んでいて楽しいか?もちろん楽しくない。
おそらく上巻、下巻になりそうなのを文字を小さく詰めて無理矢理一冊にまとめたようなボリュームなのに、ストーリーはまったく前進しない。
後半に期待するが、最後まで鬱状態の物語は鬱状態のまま幕引いてしまう。
面白くなかったわけではないまでも、決して読みやすい本でも無く、同じ行を何度も涅槃の世界に飛び立ちながら読んだことか!
もう次!
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ネットと現実の世界が混在している今の日本の状況を作者なりに捉えた小説。もはや、合田シリーズの最新刊という枠で捉えられるミステリーを大きく超えている。
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ジリジリとなかなか進まない物語に、
それで犯人は誰なのさ?!!、、、なんて癇癪を起してしまったらこの小説は楽しめない
(・・・それは私のことだ)
殺人事件から始まるこの物語、てっきり推理小説だと思ってしまったのが、失敗の始まりでした。
この物語の醍醐味は犯人探しでもなければ、推理の楽しさでもありません。
最終章までの長い長い道のりで見えてくる、
人々の表情や思い、感情が起こす化学反応や、
欲望や希望といった、時代が生み出したものたちの姿が
私の心に印象深く残したものは、
以外にも温かな人間賛歌でした。
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合田シリーズ。
とりあえず読み切った。
いろいろな人物からの視点で過去にあった未解決事件についてを語る体裁。
新聞で読んでいた人はいらいらしなかったのかなぁと思う。
合田も加納もおじさんになったというか老境に差し掛かってきたのだなーと時間の経過を感じるところが変に現実にリンクしていてリアル。
結局犯人はわからずじまいでなんだかなーというかすっきりしないというか。
事件解決が本題ではなく当時の風俗や社会的な倫理を書きたかったのかなぁ?
時間というのは不可逆的なものなので事件捜査という時間との戦いに負けちゃうと行くか後から物的? な証拠が出え来てもなかなか実証されないし。
ただ当時の人たちの感情に対して寝た子を起こすことになる。
刑事もお仕事なんだけど被害者の家庭も被疑者の家庭も関係者全員がなんか不幸。
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この小説の舞台はまさに自分の生活圏である。
東小金井駅から野川方向への道、また身内が住んでいるのも多磨駅の近くだ。
小説にたびたび登場する軽飛行機は、想像以上に低く飛んでいるため、爆音甚だしく、相当に五月蠅い。
高校生だった登場人物たちが自転車ですれ違ったJAは最近なくなって更地になり、近くにあった味も佇まいも昭和半ばといったラーメン屋もそれにひきずられるように店を畳んだ。
そこに住んでいる割には、というかそこに住んでいるからこそ目もくれない街の風景がこの作品では雰囲気のある描写で表されておりまるで違う街のようで、驚きつつもなんだかうれしい。
しかし、これだけ詳しい描写なのだから著者はこの辺りに足しげく通ったと思われるのだが、まるで見かけなかった(笑 仮にお見かけしたとしても、ぼんやり暮らしているただの一生活者たる自分が高村薫さんだと気づくわけもないだろうけど。
それにしてもこの著者、「」を使わない文体になってから、小説にさらに凄みと鋭さが出てきたなぁ。謎解き色のやや強めな『マークス~』も『レディジョーカー』もいいが、『照柿』をこの文体で読んでみたいものだ。