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学生のときに、配膳のバイトをホテルでやっていたので、想像しやすい。こんなにドラマチックな感じはなかったけど。
梶くんが右翼化するのが、切ない。
倉地やお姉さんの描かれ方がおそろしい。
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初出 2019年「文藝」夏季号
あっという間の単行本化
初読みの作家さん。
高校を出て東京のシナリオスクールに入った浜田は、派遣で神社の会館の宴会部に配属され、結婚式の裏方を勤める。同僚の梶と大金をかける結婚式のおかしさを笑い、誰にも見せないシナリオを書き続けるのだが、浜田は結婚や神社の意味を考えるようになり、そこで働くことに意義を感じてふたりとも中心スタッフに成長し、会社からも気に入られる。
この高堂神社(東郷神社がモデル)の会館は大規模で、派遣会社からスタッフを入れているが、同じ明治の軍神を祭神とする椚神社(乃木神社がモデル)からも応援を受けている。神道系の学生などのボタンティアが主体でテキパキ動かない椚のスタッフに、倉地という女性が入って改革しを進め、人件費の安さで派遣会社を押しのけていく。
高堂神社の宮司は同性婚も受け入れると表明し、それに反対する倉地ら椚の勢力は、高堂会館の乗っ取りを画し、倉地に想いを寄せる梶も椚に鞍替えしようとする。最後はお一人様の女性が自分の心と結婚するという結婚式を、浜田たちが2年越しで成功させる。
本当に大切なものは何かを自由に考える浜田はの姿は面白いのだが、高堂会館はどうなっていくのだろう?
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渋谷区にある高堂神社、結婚式場の高堂会館で働く派遣社員の浜野と梶、
高堂神社と縁のある椚神社の倉地が
主な登場人物。
明治通りとか原宿警察とか
立地的にどこかなーと思ったら
高堂神社は東郷神社がモデルで
椚神社は乃木神社みたいですね。
色々納得。
わたし自身、明治記念館で働いていた事があるのでより興味深く読めました。
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シーンは面白いのだけれども、流れが取っちらかり気味。ドタバタした雰囲気を出したかったのかもしれないけれど、ドタバタしたまま話を見失ってしまうなぁという印象。
ただ、こういうのは、読み手のリズムが合えば、楽しいのだと思う。
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どう感想を言えばいいのかわからない。
始まり方が歴史っぽくて
読めるかな?と思ったけど、読みやすかったです。
結婚式を実際しましたが、
裏側が語られたりしてて
勉強になったような、知りたくなかったような感じです。
主人公の、常に客観に立つような感じは
少しだけ共感できるような気がしました。
姉からの電話とか家に縛られるとか
結婚とか家とか煩わしさがあって
自分が自分として生きることがそんなにだめなのかな?という気持ちになりました。
うまく感想を言えないけれど
楽しくは読めました。
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面白いという一言ではくくれない傑作。タブー的な要素を絡めながら現代の私達が生きていく上で必要だと考えていることを、簡易な表現でエンタメに近い雰囲気で、しかししっかりと読ませてくれる稀にみる問題小説、かな。
自分自身の心に嘘をつけず、その心をまっすぐ信じることを誓うかたちで結婚式&披露宴をする女性に「この神社に神様はいない」と言わせてしまう、この問題提起こそまさに「どんでん」だなあ。著者の難しいテーマを読ませる技術はスゴイ。
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小谷田さんの名前も知りませんでした。1981年生まれと知って、驚きです。
明治神宮内の二つの挙式場の微妙な関係をそこで働く派遣社員を軸にして描きます。実在するのかと思わず調べてしまいました。一応二つ似たようなのがありましたが、ほんとにこんな感じなのかしらん。
天皇を神として崇めている神社が舞台ですので、そっち系かと思いきや、どっち系でもない。派遣だからこそ開き直って仕事に打ち込むことができる(仕事が終わればさっと我に返れる)ってのが、今の若者にぴったりくるのかな。
最後の「挙式」、naruhodo,kouiunoが増えてくる時代になるかもね。
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混沌!混沌!お仕事小説というか、生き方模索小説というか、神様って何?とか、シンプルにエンタメ小説として面白い、とか。
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高時給に惹かれ受けた面接は、神社付属の披露宴会場での派遣アルバイトだった。よくあるお仕事小説の“結婚披露宴版”だと思って読み進めたが、うーん……主人公の思いが今ひとつ伝わって来ない。「新郎新婦という客は、何もないところに金を出している」「虚飾の限りを尽くす──それが結婚披露宴の本質なのだ」など、なかなか鋭い現状認識はあるのだが、その世界で彼がなぜ長年働くことになるのかわからない。さらに仕事仲間と飲みに行ったりはするが、それ以外のプライベートの時間の記述がほとんどないのもどうかと思った。
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入り込めずにサクサクっと読んでしまったが、結構大事なことが書かれていたような気がする。結局なんだったんだろう…
2019/11/16読了
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橋本治は、時代を背景に「普通の人」を書きましたが、この人は「職業」を背景に「普通の人」を描こうとしているところに好感を持ちました。
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感想をネットで見かけて図書館で。面白かったのかよく分からないが、苦ではなく最後まで一気に読んだ。深く読めていない気がする。自分には書けない文章だなと思う。
主人公が上手く仕事にフィットして、出世(?)していく様子は読んでいて心地よい。役割を演じること。
明治通りとか表参道とか、名前の意味を考えたことがなかったことに気付いた。東京、長く住みたくはないけど、そしてもう住むことはないだろうけど、本を読むといつも憧れを感じる自分がいる。
演じること。信じること。
結婚式という虚飾とその裏側。
心の絆とお金と?
などなど、色々…面白かったな。気になる本。
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高校図書室(長女)
入試休みで大量に借り出してきてくれた中から、気になっていた作品その2。
架空の高堂神社の結婚式場を舞台として、派遣事務所のスタッフとして勤めることになった高卒の主人公・浜野の2003年から2019年まで。商業主義的結婚式場で見習いから始まって、仕事を覚え、同期の相棒(ごくふつうっぽい浜野とは好対照な元ヤンもとい熱血漢)と競うように仕事ぶりに合わせて立場と時給が上がっていくなか、神社同士の関係上助っ人(?)としてやってくる別の神社の会館(高堂とはタイプが正反対の守旧派)のスタッフとの出会い、若気の至りが思いがけず未来の自分を窮地に陥れるような経験も経つつ、仕事や故郷の家族との距離のとり方を少しずつ変えていく姿を描いている。仕事の矜持と虚飾の典の裏側を体感できるお仕事小説でもあり、あれこれ迷い悩む青春小説でもあり。最後の展開はちょっと『聖者のかけら』の聖フランチェスコ大聖堂の顛末と似ていて、親友や夫婦、いちばんの理解者同士のつもりでも思いがすれ違っていることは多々あるのだなぁ、と改めてと思った。
結婚を披露する意味って? お金はそんなに汚いか、奉仕の精神はそんなに尊いか、神様は神様になることを望んでいたのか、神様はほんとうにそこにいるのか? 効率を重んじ一見ドライで軽薄な高堂vs精神を重んじ伝統的な椚のよしあしをひっかかりに、さまざまなことを考えながら読めるおもしろい物語だった。
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「ブーケトス一万、キャンドルサービス十万、完全に狂ってる!なんでみんな、結婚を披露するの?」神社の披露宴会場で働く、浜野、梶、倉地ーー配膳スタッフとして日々披露宴の「茶番」を演じるうちに、神社の祀る神が明治日本の軍神であることを知り・・・。結婚、家族、日本という壮大な茶番を切り裂く、圧巻の衝撃作。金と愛と日本と神が交わる、狂乱のパーティーがいま始まる!
ダヴィンチのプラチナ本で紹介されていたので読みましたが(よく面白い本を載せてくれるので参考にしています)、今回はだめだ、全然面白さが分からなかった。こんなリアリティのない話ある?!派遣会社でずっとやっていて上の気分で時給アップとか。しかもそれで貯蓄できるとかさ。脚本を書いてはいるけどそれで身を立てたいと思わないとか。1mmも主人公どころか、倉地にも感情移入できなかった。私は神様とか信じてないけど、浜野の思考があまりにころころ変わりすぎて結局この人は何がしたいんだろうと最後まで謎でした。あと筆者が何を言いたいのかは分からないけど結婚式を挙げようと考えてる人が読んだらわりと不快になりそう。
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若い人を主人公にして、一人称限定視点で語られているので、老人としてはなかなか入り込むことが難しかったのだが、そのうちに主人公が何にこだわりを抱き、何を自分の内側に入れることを峻拒しているのかが呑み込めて来ると、ああ、そういうことね、と理解できるようになった。この物語は、自分の世界を創り出すことのでき、そこではじめて息をする人間、安易に既成の世界に身を寄せ、いつの間にやら知らぬ間にそれと狎れ合い関係になってしまうことをしんから恐れる人間を描いた物語なのだ。
十八歳の浜野は時給千二百円という高額につられ、一緒に面接を受けた同い年の梶とともに派遣社員として高堂会館という結婚式場のスタッフに雇われる。高堂会館というのは高堂神社の一部にあたる。明治の軍人、高堂伊太郎を祭神にした神社という設定は、東郷平八郎と彼を祭神とする東郷神社がモデル。同様に椚萬蔵(くぬぎまんぞう)は乃木希典、椚神社は、乃木神社のことだ。
生まれも育ちも全くちがう別世界を生きてきた二人の青年が、切磋琢磨し、友情をはぐくんでいく。そこにやはり同い年の倉地という娘が登場し、互いに微妙な感情を抱きながら、一緒に仕事をする中で、成長をしてゆく。そう言えば聞こえはいいが、実は三人三様にどうにも譲れない部分があり、時にはその部分で衝突し、あるいは今まで気づいていなかった事実について思い知らされる、そのやりとりを三人の出会いから別れまでを見つめてゆく。
浜野は、仮面夫婦を続ける両親から離れたくて、高校卒業後、生家のある松本を離れ、東京にあるシナリオスクールに通い出す。彼には、頭の中で物語を創り上げる癖があり、それを紙の上に吐き出さないと生きていけない。誰に見せるでもない。ただ、蚕が糸を吐いて自分の殻を紡ぐように、そうすることで自分の生を維持している。それは他人には理解しがたい生き方で、一人考え事に耽ってばかりいる浜野は周りからテキトーな人間と見られている。
東京で一人暮らしをするために働き始めた浜野は、初めはクビにならない程度に働くテキトーなスタッフだった。それとは逆に梶はきちんとした仕事に就くことで苦労をかけた祖母を安心させてやりたいと一生懸命に働く。そんな二人は、ある日、結婚式の見積額のあまりにも高額なことを知り、驚き呆れる。キャンドル・サービスが一万円。自分たちの給料が全くの幻の中から生み出されていると知ったのだ。
浜野には結婚式やそれを他人に披露する披露宴の意味が分からなかった、というよりも意味を見いだせなかった。ところが、それが全くの絵空事、虚飾であることが理解できた途端、俄かにやる気が出てきた。茶番であれ、喜劇であれ、それに参加するなら、目一杯真剣にやるべきだ。でないと面白くない。彼はその日を境に最も熱心なスタッフに変貌を遂げる。カサギという派遣会社は結果がすべて、社員の給料は実力次第で上がるシステムだ。二人は競い合うように仕事に励む。
そんな折、出張奉仕に来ている倉地たち「椚さん」と高堂のスタッフとの間に不協和音が立つ。高度にシステム化され、戦場のような披露宴を受け持つ高堂のスタッフは、素人同然の「椚さん」がはっきり言って邪魔だった。梶の一言が火をつけ、高堂スタッフは露骨に椚ボイコットを始める。自分は加担しないものの浜野はそれに心を痛める。倉地もまた、椚のやる気のなさを感じていた。倉地は二人に、高堂のやり方を教わりながら、椚を変えてゆこうとする。浜野は、そんな倉地をモデルに、女戦士が戦いに挑むシナリオを描く。
本作は披露宴を司るキャプテンに登りつめる浜野の活躍ぶりを描く「お仕事小説」でもある。初めは虚飾と思えた披露宴だったが、いつのまにか、完全にその渦中の人となった浜野の結婚というものに対する気構えのようなものが随所にキラキラと眩しく語られる、と同時に華やかな舞台の裏で繰り広げられる、戦場のような現場の様子もたっぷり味わうことができる。さらに、浜野たち高堂が育てた「椚さん」たちに高堂会館の式場が乗っ取られるようになるシビアな顛末まで。
それと同時に神社や神事、神様というものを真正面から受け止める梶や倉地と、戦争で多くの人を殺した軍人を無邪気にあがめることに共感できない浜野との間に、少しずつひびが入り、やがてそれは対決や別離の要因となる。祖母に死なれて、弱みを見せる梶をもっと見てやれ、と話す倉地に、浜野は食ってかかる。他人のことをよく知ろうとせず、ずかずか入り込んでくるな、と。一度口火を切ると、浜野はそれまで口にしてこなかった「椚さん」に対する批判を倉地にぶつけ、決定的な別れが来る。
倉地はもともと神道科の学生であり、右翼的な考え方になじんでいた。ところが、その日をきっかけに同性婚も挙行するという高堂会館への闘いを積極的に始める。死者との間をとりもつ、という神社の存在を梶もまた信じはじめ、それは次第に強いものになる。梶から見れば、両親揃っていて兄弟も帰る所もある浜野は羨ましい身分だ。ところが、浜野はそれを大事にしようとしないで、好き放題を言っているようにしか見えない。
日本の若者の右傾化が止まらないのは、梶のように欠落を胸に抱いた者にありがちな不満ゆえだろうか。親孝行や結婚、家と家の結びつきといった習慣をよく吟味することなく当然視し、その内側にいる一部となることで安心し、それを当然視せず、違和感を持つ輩に対して批判する。浜野はリベラルでも左翼でもない。ただ、その物語をすんなりと呑み込めない。頭だけでなく体もそれを拒否する。なぜなら、彼の居場所は彼が創り出す世界を核としているからだ。そこで、自由に生きることが現実世界と折れ合うために必要なのだ。
何ならそれを文学と読んでもいい。人を十把一からげにしないもの。異を唱える者を拒絶しないもの。自分と異なる他者と共に生きることを快く感じる、そういう世界がある。そして、そういう世界をよしとせず、みんなが同じ考えや感じ方、人種や血筋、といった共通点で繋がる社会を激しく拒否する。簡単にいえば、浜野はそういう世界に生きている。しかも、理屈ではなく、全身全霊でそれを生きている真っ最中だ。今風の意匠の中にどこか古風な人格形成小説風の骨格を隠した一篇。