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「円卓」のお姉ちゃんには私も胸が熱くなりました。こういうコンセプトとても素晴らしい。次はぜひ編み物バージョンで出してほしい…(三國万里子さんで…)
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この本のカテゴリを、自分の本棚で『読書案内』に入れるのは、いささか抵抗がある。図書館なら5類の家庭のところに入るかなと思うからだ。
私は昔から、壊滅的に家庭科が出来なかった。身体が丈夫ではなく、ざわざわ我先にミシンのところに駆け寄るのも苦手。家に帰って親に教わっても、気の短い母はしまいに、「自分でやる」と布を私からひったくる。手縫いも、遅い下手だと怒られて、しまいに針を持たなくなった。ところが、大人になって私は、自分で編み物を覚えた。上手くはないがマフラーや小物なら、編むようになった。そして、この段に至って気がつくのだ。「私は手仕事が嫌いではない。」「むしろ好きだ。」ということに。
出来もしないのにやれるようになりたい手仕事は、刺繍とレース編み。春から夏は、ニッティングより、そちらのほうが軽やかで似つかわしい。ちょうど5月くらいからだったら、ぴったりだ。という訳で、これまたゆっくり読んでいた。手のひらほどのサイズの本。
この本をブクログで見かけた時、なんとなく気を惹かれた。小説に出てくる小物や場面を想像して、刺繍を刺す。その作品が文章と一緒に紹介されているなんて。きっと図案を見ても「やれる!」とは思わないだろう。だけど、どんな小説が選ばれてるのかくらい、見てもいいんじゃない?なんて感じで。
私の想像以上の、大作ばかりが並ぶ、上等そうな白いシャツの背中いっぱいに刺された刺繍は、ため息が出るほど見事だ。こんなの、プロの刺繍作家さんだからこそ。だから、出ている図案見ても、自分が出来るなんて思わない。でも実際針を持つ人のことを考えた可愛い図案で、小物にアレンジしたりも出来るだろうし、器用な方なら、きっと写真のように見事に出来るのだろう。
『トリツカレ男』いしいしんじ
『グロースターの仕立て屋』ポター
『女生徒』太宰治
『円卓』西加奈子
『海賊と刺繍女』ジョンソン
『ニコルの塔』小森香折
『あの家に暮らす四人の女』三浦しをん
『働かないの れんげ荘物語』群ようこ
『刺繍』川本晶子
『戦場のコックたち』深緑野分
『美しい距離』山崎ナオコーラ
『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
『パノララ』柴崎友香
『苺をつぶしながら』田辺聖子
『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦
『なずな』堀江敏幸
『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子
『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹
『ノンちゃん雲に乗る』石井桃子
『ライ麦畑でつかまえて』サリンジャー
『ティファニーで朝食を』カポーティ
『不思議の国のアリス』キャロル
『三島由紀夫レター教室』三島由紀夫
『かわうそ(思い出トランプ)』向田邦子
目次から拾ってもこれだけの作品に想を得ていて…。なおかつ。刺繍シーンの抜粋はというと…。
『星を縫う』あさのあつこ
『紅梅振袖(名短編さらにあり)」宮部みゆき編)北村薫
『エリザベス女王のお針子』ペニントン…etc
いや、もう、メモしきれない。どの文章からも香り立つのは,刺繍をする人の、ひたとした眼差しや���虹のような柔らかい刺繍糸の光沢。物静かな、心落ち着く時間。仕事だったら、ぴりっとした感じで、刺し終わるまで寝食も忘れて向かう真剣さ…。小さな活字から、場面を想像して映像を心に紡ぐと、不思議なもので、針が持ちたくなる。手を無心に動かす喜びと、そこから美しいものが出来上がって行く楽しさは、コロナコロナばかりで息苦しく、制限緩和と急に言われても波立つ折、少しは私を女らしくしてくれるような…。
ああ、できっこないのに。刺繍とレース編みと、手すさびに弾くピアノとが身についていたら。言っても詮無い。太宰の『女生徒』読み直す気になっただけで良しとしなければ。
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刺繍がすきだ。
不器用なので、今はもっぱら眺めるだけなのだけれど、様々な布に施された綺麗な刺繍を見ると、贅沢な気分になって来る。
こちらの本のタイトル、『刺繍小説』とは、刺繍描写がある小説のこと。
『トリツカレ男』、『グロースターの仕たて屋』、『円卓』、『女生徒』、『あの家に暮らす四人の女』、『わたしを忘れないで』、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、、、他二十四編の小説の刺繍シーン、登場人物の洋服やバッグなどから、美術家の神尾さんがインスピレーションを経て作り上げた刺繍。どれも素敵でため息が出る。それぞれに添えられたエッセイもいい。
こんなふうに想われる小説も幸せだな。
小説、というものは作家が書いて、はい、完成、というものではなく、人に読まれる度に新しく生まれ直してるんだ、と感じた。
『トリツカレ男』のいしいしんじさんとの短い対談は、キラキラふわふわしてる。
ああ、じぶんもこういう連想ゲームみたいな会話したいな、と思った。
それぞれの刺繍の図案も掲載されているので、腕に覚えがある人は是非挑戦を。
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小説に出てくる刺繍のシーンや、インスパイアされた刺繍、あったかもしれない刺繍を再現。なんと洒落た本なのか。「あの家に暮らす四人の女」を読んだばかりで、ジャストな出会いだった。
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2021.02.13
物語の中にある「刺繍」のシーンってそういえばあまり見かけないが…絵を描くように裁縫をしたり布に向かい合う人はいるのかもしれません(村上春樹作品とか、見逃しているようで実はあったりしそうだね)。
それよか、あの小説に出て来るベッドの枕にはこんなワンポイントあるかもしれない、みたいに物語の中の小物にそっと刺繍を刻むのを妄想しうる面白さが良い。
当然、小説のイメージを図案にして縫うと言うのも素敵だ。
あまりない視点の本であった。新しい発見もあり読んでよかった。