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中村好文さんがかつて設計した「上総の家II」をひょんなことから中村さん自身と仲間たちとで共同所有することになり、改めてこの家の魅力や使い方を紹介されている本。
一つの家に込められた工夫を詳細に取り上げられており、短いながらも読み応えがある。
そして、雨宮秀也さんの写真が美しすぎてため息が出る。
以下、特に気になったところ。
①どの家でもそこに自身が住むつもりで設計してきた。
②暮らしの隅々のことをきちんと、あたたかく処理するところに住宅の面白さがある。
③家の中で火を焚くことは愉悦。
④小さな住宅に暮らす愉しみは、家の隅々まで手が届くように感じられること、親密な空間に身も心も包まれる幸福感を味わえることにある。
⑤階段の段板の先端を欠き取ることで軽快に見せるために幅を小さくしたササラ桁と上手くおさめている。
⑥雨戸を室内側に設ける理由、ひとつは冬場にせっかく暖房した部屋で雨戸を閉める時に暖気を逃さないため。もうひとつは家を留守にするときも留守家に見えないので泥棒に狙われにくいから。
⑦オープンキッチンの食卓と向かい合うカウンターに据えるのはシンクかレンジか。レンジ派は自分が料理をするという晴れ姿を来客に見せることができる。
⑧食卓の上のペンダントライトの高さを自由自在に変えられるようにしておくと臨機応変に使える。上げ下げするだけでも雰囲気はずいぶん変わる。明るさも調節できるように調光器もつけたい。
⑨住み手が愛情をかけると家はみるみる輝き出す。家は使ってないと駄目。人の気配がない家はすぐ駄目になる。
⑩家というものは、いろいろな「物語」を詰め込むことによって世界にたったひとつの「宝箱」に昇華する。