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山尾悠子と人形作家・中川多理のコラボレーション。
画があるとイメージが固定されてしまうこともあるが、本書においてはどちらもイマジネーションを膨らませるようになっていた。人形というものに特別な思い入れはないのだが、81ページ以降の、喪服姿の人形は綺麗だと思う。
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山尾悠子好き。中川多理も好き。このふたりがコラボするなんて俺得。
予約購入してさて読もうかと思ったタイミングで、パラボリカ・ビスで特装版の通販が始まったと聞いて歯噛みしたものだ。
悔しさのあまり少し置いていた。
ところで今度は山尾悠子による豆本「翼と宝冠」がリリースされる、しかも今後短編集などに収録予定はない、と。
またも会場限定で販売されるとか。いずれ一般販売もあると期待して。
作者同士のやりとりについては、ありがたい。感謝ばかり。
さて中身について。
山尾流の無国籍ファンタジーかと「小鳥たち」で思わせておいて、
「小鳥たち、この春の廃園の」で、〈さて今は何世紀〉というフレーズとともに時代を超え、その断片の中ではなんと近未来すら舞台になる。
「小鳥の葬送」では再度時代も舞台も曖昧にされ、つかみどころがわからないままに本は終わる。
この「つかみどころのなさ」が山尾悠子の肝で、捕まえようとするや、小鳥に姿を変える侍女たちの「怪しからぬ後ろ足」に欲望を抱く伊達男の姿は、読んでいる私自身に見えた。
このあたり、球体関節人形の温もりや、寝台の残り香に胸ときめかせていた数年前のことを思い出す。
「最終的にはめきめきと音をたてんばかりの見事な被昇天であった」という強烈なフレーズで、まさに絵画的に終わる。
いやもう素敵な読書になった。
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読んだ、というより見て、感じて幻想の世界にどっぷりと浸った。中川多理の人形の写真が相乗効果をあげ、つかの間別世界に入れた。この山尾悠子の独特の空気は好き。
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細い四肢、小さな囀り。
庭園に舞う小さな小鳥。
そこだけ切り取られたような退廃的で逃げ場のない世界。
画によるイメージと文章によるイメージが脳内で溶け込む。
本を手に取り、装丁を愛でる。
決してデジタルでは味わえない醍醐味。
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新作が出ていたことに気づかなくて、慌てて購入。
人形と文章が相互にイマージュを膨らませ合う変わった合作本。
山尾氏の、いつものような緻密で錯綜した文体はなりをひそめ、ぐっと読みやすい文章になっている。
時系列の混乱や視点の頻繁な移動など、特徴的な切り取り方がないので入り込みやすいものの、これはこれで不思議な物足りなさもあった。
私はいつだって翻弄されたいのかもしれない。
ともあれ、山尾氏の文章の良さは少しも損なわれていないので、何度もショート・トリップを楽しめる作品。
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・一瞬の無重力。花のように仰向けに投げ出された自由。飛び散る羽毛も解けた髪も見分けがたく混じりあい、すべてが微笑みの世界に溶ける。雲だらけの青い虚空と尖塔群の世界が天地逆さに反転し、この今だけは何ものにも捕らわれることはない。
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夜想『中川多理特集──物語の中の少女』を読んで、そのままの流れで読みました。山尾悠子さんの作品は、まさしく幻想的。揺らぎながらも圧倒的に美的な幻想が、彼女の言葉の中にはあります。編み上げ靴の小鳥の侍女たちの美しい羽ばたきを追っていこうとする内に、ぐいぐいと時間の束縛を忘れて、迷宮庭園の備わる荘厳な〈水の城館〉を逍遥しました。ハッと覚醒したような、こちらの世界に「帰ってきた」ような、そんな読了感がやはり素晴らしいです。見える世界も幾何学的な、端正な世界に感じてしまう程です。「小鳥の葬送」なんかもう、素晴らしいとしか言いようがありません!
そして、なんといっても、多理さんの人形が圧倒的な感動を私に与えます。先に述べました『中川多理特集──物語の中の少女』の「幻鳥譚」の人形なども素晴らしいかったですが、やはり「小鳥たち」の人形ほど、華奢で儚い人形を、私は知りません。
ああ、とにかく大満足でした。これ以上の言語化は私には不可能です。是非、この2冊はセットで楽しむことを提案します。
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山尾先生と人形作家・中川多理先生が互いにインスピレーションを与え合って創られた掌編と人形写真。
侍女に変容する小鳥と水の城館の様相が美しい。
「小鳥の葬送」の老大公妃の曲者感が素敵。
モノクロ写真の老大公妃が本当に眠りについているような生々しさで驚愕です。
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山尾悠子さんの文章と中川多理さんの人形で彩られてる本です。
小鳥のように驚き易く、すぐに動揺する〈水の城館〉の侍女たちのお話。3篇のお話が入ってますが、続いてるような続いてないような。過去だったり現在だったり、時間軸もイロイロです。
不思議な雰囲気のお話に、中川多理さんの小鳥の侍女の人形が、世界観を広げてくれてます。
人形一つ一つも、表情や服装が違ってて、じっくり見てしまいました。
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あとがきも含め、ちょうど100ページの中につまった儚い幻想譚。これから寒くて暗い冬が来るたび、花と鳥のさえずりを求めて、何度となく〈水の城館〉への扉をたたくことになりそう。