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何かが起きた時、皆んなが理由や動機を知りたがるのは、それをを知って自分とは無関係の違う世界の話だったと安心したいからなんだろう。
でも、誰かが何かをする時、他人にはっきり説明できて納得させられるような理由や動機が常に存在するんだろうか。
誰かに対して分かりたいと思う。
でも私はその人じゃないから本当には分かれない。
でも分かりたい。
少なくとも誰かに対して分かったと勘違いすることだけはしたくない。
分かっていることと分かっていないことを間違えないように生きていきたいと思った。
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凪良ゆうさんの『流浪の月』読了。
切ない。とにかく切ない。許すこと、認めること、慮ること、人間の優しさの現れのようなこれらの行動がときには残酷な刃と化す。よく耐えたよ、ふたりとも。ただひたすら耐えた先に平凡な、できるのならば幸せな毎日がずっと続けばいい。そう願う。
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初めての作家さん。こんな強烈な人を知らなかった私はやはり視野が狭いなと思いました。
ここで描かれているはいわゆる「愛」ではない。
でも人と人のつながり、それも強いつながり、が描かれている。それも世間一般の人々からは反対されるもの。そんな禁断のつながりを求めることが許されるのか。
途中読むのが辛いというか、主人公たちの行動に多少いらいらしながら読み進めた。途中でやめることができないほど物語の世界にとらわれてしまいました。
読み終わって、ようやくほっとすると共に、自由とは何だろうと思いました。でも心は少しザワザワとしています。
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息苦しい毎日の中でやっと見つけた居場所。
手足を伸ばして、大きく息を吸い
空を見上げるようになる。
しかし世間では「幼女誘拐事件」と評された。
家族でも、恋人でも、友人でもない。
名前などないけど離れられない。
新しい関係の物語。
「半透明の氷砂糖みたいな声だった」
「けれど細長いので威圧感はない。
白いカラーの花みたいだった。」(p30)
やさしくて、どこかさみしい、
ロマンティックでていねいな描写が
重たいテーマをやわらかく表現している。
「少なくとも、私は拒絶されていないのだ。
それだけでわたしはどこまででもいけるし
なんでもできる気がする」(p212)
赦されたい、救われたい、自由でいたい。
だから人は一緒にいてくれる誰かを
探してしまうのだと思う。
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再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人を巻き込みながら疾走を始める。
(カバー内側の解説文より引用)
おおよその内容を知らずに読んで欲しいと思いつつ。以下、ネタバレを含みます。
少女誘拐事件の被害者とされた小学生、家内更紗(かないさらさ)、そして犯人とされた大学生、佐伯文(さえきふみ)を主軸にした物語。その説明だけで、おおよその展開を予測できてしまう人もいるかもしれない。おそらくその予想は間違っていない。
ただ予想通り流れるようにはいかず、所々で引っかかって、その度に傷を負いながらも2人の物語は進んでいく。2人を取り巻く人々もまた、良くも悪くも個性的な人間が多く、一度読んだだけで印象に残っている。たぶん描き方の妙なのかもしれない。
2人については特に強烈で、しかもまったくと言っていいほど嫌な印象が無い。それは読者である私にとっての良い子ちゃんという意味ではなく、するすると、まるで自分自身であるかのように判断し、考えて、行動しているように思えてくるからだろう。
また、メインの人物は更紗ではあるものの、文の側が抱える葛藤について、共感あるいは納得する男性も多いのではなかろうか。
こと性別にまつわる事柄というのは、なかなかオープンに話すのが難しい現状で、彼が抱える葛藤とその帰結に、もし私も同じ境遇であったなら同じ思考に至ったかもしれない。
個人的に好きな場面は、更紗が文の何気ない行動から、ペットを飼っていたのかと聞いた場面だ。それに対する文の回答が、更紗の予想を越えて彼の境遇を引きずり出してしまう。この部分は面白く、そして同時に驚嘆ものだった。
物語が展開される場所や、それらを彩る小物についても抜かりなく、宝石箱のような印象を持った。ただ箱の隅には闇色の宝石もあって、宝石箱を覗く者を取り込まんと、てぐすね引いて待ち構えている。2人もまた、その闇に幾度も飲まれそうになる。
文体は読みやすく、緩急のつけ方も私には丁度よかった。何より凄いのは、無駄に思えるものが思い浮かばないのだ。
冒頭にて複数の人々が1つの場所に会する場面があるのだけれども、それが物語の全体を上手く暗示しており、かといってその場面が置かれているだけでもなく。お見事。
そして物語に陶酔した人の何割かは、作中に登場したボンベイサファイアを買ったり、あるいはウィスキーなどを求めるだろう。悪者にされがちな印象のアルコールが、小気味よく読者を酔わせてくれる。お気に入りのグラスで一杯やりながら。それはオススメしないけれども。
読後から数日が経ち、ぼんやりと思い返していたら追記しておきたくなった。
2人の行く手を阻むものに対して、読み手である私はため息をついて、もう許してくれと思っていた。だけど周囲は「普通」の考え方に基づいて思考し、行動することで2人を傷つけていく。
読んでいてページを閉じてしまいたくなる瞬間はあれど、メインとなる更紗、そして文の2人が過ごした時間を、めげそうになる度、反芻し、乗り越えていくことでページをめくる手を逆��進めてくれる。
2人の過ごした時間を読者である私もまた、大切な宝物として共有できているからこそ、それが成り立つ。
周囲からすれば2人は被害者と加害者であり、更紗にとっては憎しみや恐怖を呼び起こすであろうと周囲は考える。そうして親切心から出た言葉や行動が、むしろ傷つけるのだと想像することさえできない。
でも実際、当事者たち以外は外野でしかなく、自称の良い人になってしまうのが常であろう。
誰かを救いたい、そこまでいかなくとも、助けになりたいと思うこと自体は、とても美しい情動だと思う。
だけど自己満足するためだけが目的となり、相手がどのような願いを持っているのかと思考を深めてみてはと、作品を読んでいて諭されているように感じた。
(Twitterより転載・一部変更)
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事実と真実はかくも違う.恋愛ではなく恋でもない,もっと聖なるもの.9歳と19歳の2ヶ月の時間を抱きしめて生きる二人の姿に言葉もない.世間の人々の正義と言う名の興味本位の中傷の恐ろしさいやらしさに気分が悪くなった.そして文が喫茶店にcalicoとつけたその想いに涙が出た.
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残業しないで帰宅を急ぎ、通勤バスの中でも没頭して読ませてもらった。非日常を楽しみ、普遍的な事を考えさせられる小説ってやっぱり面白いとあらためて思えた本です。最後に解説ページもなく、それがまた読者に解釈、感想を委ねているように思え、良かったです。さて、誰に薦めようかな?
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夢中になって一気に読みました。
2人が世間からわかってもらえないことが辛く苦しかったけど、2人が再会でき、自分らしく穏やかに生きられる様になり本当に良かった。
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ページを捲る手が止まらず、気がついたらもう読み終わっていました。
2019年に読んだ本の中ではこの小説が一番面白かったです。世間に上手く溶け込むことのできない人に寄り添うような小説。繊細な情景描写には息を飲みました。
この小説は野暮な説明など要りません。
行き場のない感情、虚無感、居場所のない人に是非読んで頂きたい一冊です。
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2020 8/8-12
『流浪の月』は主人公であるふたり、更紗と文が長い時間をかけて紡いでいく関係に、どんな名前をつければいいのか、ずっと探していく物語なのかなと思います。どこもなにも尖ってないのに人を刺せる刃物が確かにあって、それらに常識や正義感や善意という名前がついているとき、一体どうすればいいのか。
ふたりと一緒に長い旅をするように読んでいただけると嬉しいです。
凪良ゆう 東京創元社HPより
読んでいくにつれ、つらい。
苦しい。悲しい。切ない。どうして2人はこんなに苦しまないといけないのか
。締め付けら、えぐられる。
コロナ禍で、人と人との繫がりを再認識させられるものの いかに人はものごとを自分の言いように解釈してしまうのか。
「真実なんて誰にも分からない」
すごく深い。
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読了後に著者の作歴を思い出した。そういうところの心の描写が繊細なのも、読者を惹きつける要因なのだろう。読み終わってから思わず序章を読み返してしまうのは良品である証拠だ。
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人の善意の恐ろしさを痛感した。
読みながら都度、自分は他者に対して「良かれと思って」当事者にとって余計なことをしていなかったかを振り返る。
作者は人それぞれの心の痛みを詳細に表現していて、読み進めて行くのがとても苦しかった。
どんな結末でも構わないから早く読み終わってしまいたい気持ちでいっぱいだったけど、穏やかな幸せが漂っていて、ホッとした。
事実と真実は違う。
忘れないようにしよう。
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初めて読ませて頂く作家さん。読みやすく、言葉選びが上手な作家さんだと思った。
実際に誘拐だったのか、更紗が文の家に来てからの生活がどうだったのかは別問題としても、文は小児性愛者ではあって、そのことに苦しんでいることは違わないのかと思ったら!繊細な問題が絡み合っていて、読みながら唸ってしまい、簡単には感想を言葉に表現が出来ないのだけど。なぜなら、現実にこう言う事件が起こったとして、加害者・被害者が、もし身内や友人や同僚になったとして、理解してあげられるかと言ったら、多分私は、更紗のバイト先の店長のように、優しさのつもりで傷つけてしまう人なんじゃないか、と思うから。
文の言う『事実と真実は違う』は、強く心に残った。同じ事実が目の前にあったとしても、一人一人見えているもの、感じていることは違う、なんてことは、こんな複雑なことや犯罪でなくても、日常でよくあることだ。だから、自分が見ていることや、ましてや人を介したりマスコミやネットで知ったことを「真実」「正義」だと思って、人を断じてはいけないのだ。物事を分かりやすく単純化して白黒つけてはいけないのだ。
・・・何だか、同じような感想を読後に感じた作品があったような、、、
【美しい庭】も読んでみようと思った。
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自由に暮らしていた両親の元を離れ、息苦しい日々を過ごしていた9歳の更紗の助けに手を差し伸べてくれた19歳の文。二人で穏やかに過ごした日々は少女拉致事件として終わりを告げ、二人は加害者と被害者の烙印を押される。15年後、更紗は文に再会。それまで抑え続けていた感情が動き出す。どんなに声を上げても真実が届かず苦しい立場になる更紗と文の関係。友情でも恋でも愛でもなく、ただ自分自身でいられる関係で有りたいだけの切なさが静謐な文章で描かれる。真実は当事者にしか判らない、という刃が重く胸に刺さる良作。
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善意とはという事を凄く考えさせられた。
常識、一般論とは?
独りよがりな、一方的な善意は、残酷だと突きつけられた。
SNSが大きな存在となった現代では、それが大きな凶器になっているのだ。