紙の本
土佐の伝奇ホラー
2003/11/25 08:45
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投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
——獣の姿となり果てて
月日も見えず冥きより
冥き道にぞ入りにける
遥かに照らせ山の端の遥かに照らせ
山の端の月のした
血と血を交じらせて
先祖の姿蘇らん先祖の姿蘇らん——
土佐の狗神憑きの旧家、坊之宮家を舞台にしたホラーです。ずいぶん前に一度読んだことがあるのですが、また読み返してみました。
土佐に伝わる伝承を土台にして、主人公のロマンスを軸にして物語りが展開される、切なくて怖い物語です。主人公、坊之宮美希の性格が繊細なためか、ひどく怖い話なのに、読んでいても嫌悪感を感じません。
美希が十代の頃、そうと知らずに兄と交わって子を成したところから、怪異は発生します。赤ん坊の描写がひどく陰惨で、恐ろしい反面、土佐の『殺生人』と呼ばれる猟師や犬神伝承が興味深い。
女性の方のほうが、感情移入しやすい物語だと思います。
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何事もなかったはずの日常の中に、少しずつ忍び寄ってくる非日常。狗神筋とよばれる家に生まれた主人公をとりまく恐怖が、今始まる。
2001/03/15 12:56
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投稿者:なりてん - この投稿者のレビュー一覧を見る
信濃、善光寺からプロローグは始まる。この後いったいどうなるのだろう、と思ったところで場面は切り替わって物語が始まる。読者は、このプロローグが頭の片隅のどこかに引っかかったまま、読み進めることになるだろう。
物語は、尾峰という高知県の60戸ほどの山村を舞台に繰り広げられる。季節は春。そののどかな情景とはうらはらに、村人達は毎夜、毎夜のように悪夢を見始める。
そして、何事もなかったはずの日常の中に、少しずつ忍び寄ってくる非日常。徐々に徐々に日常は崩れていき、得体の知れない不安、恐怖が広がっていく。
この辺の心理描写は秀逸だ。春のすがすがしい風景描写と、主人公の心理描写が対比され、不安、後悔、苛立ちといった感情がより強調されている。
もう1つ、この物語の登場人物にリアリティを持たせ、狗神筋という、時代錯誤的なものに違和感を感じさせないのが、方言と善光寺念仏だろう。これらが相まってか、知らず知らずのうちに物語の中へと引き込まれていく。
そして物語が終わり、全てに決着がついたかと思って読み始めたエピローグ。ここで最初のプロローグが不意に思い出される。実はこの物語全てが、次の恐怖の物語へのプロローグだったのだ。
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狗神よりも恐ろしいものとは…
2001/01/31 12:58
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投稿者:がんりょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
血、迷信、禁断の愛、呪われた運命に操られる一族。山村の美しい自然とドロドロした人間関係がここに描かれている。
表面上はにこやかに付き合っていた、心さがない村人たちの差別が徐々に顕在化していく過程は、本当に恐ろしいのは人間であることを教えてくれる。
タイトルのように、狗神伝説を題材にしているが、条理と不条理のバランスがよく、子供だましのオカルトに陥らないぎりぎりのラインをキープしていて、読んでいて違和感は感じない。
映画化されたが、この40歳の主人公を元宝塚の天海がどのように演じているのか楽しみである。
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土着的な伝奇を書かせたら坂東氏は1番だろうと思うほど凄い!四国、特に土佐って不思議な所のように思われる。1度行ってみたいなぁ。よそ者の男が村に来た事から血の悲劇は始まる。血筋って・・・恐いわぁ〜
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とにかく面白かった。舞台といい、人物の描写、恐怖の演出、どこをとっても、実に丁寧に描かれていて、読み心地がいいです。特に人と人との関係を通した恐怖感がいい感じだと思います。出だしから前半部分にかけての怖さは、読んでいて鳥肌がたつくらいでした。
話の進め方も唐突ではないので、細かく読んでいけば、大体前半で物語のキーになっている人物の関係が薄々わかってきます。この辺りの伏線の張り方も無理が無く、気が利いていると思いました。後はページをめくる度に秘密が少しづつほぐれていくのが非常に心地良く感じました。後半に入ってからは、それほど怖くは無くなるが、ある種の気味悪さはずっとつきまといます。
テーマとして「一族」を扱ったものなので、こういう話は生理的に受けつけない、という人もいるかもしれません(だから気持ち悪くていいと思うのだけれど…)。私はこの日本特有なジメジメ感、割りと好きなのかもしれません。
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過去の辛い思い出に縛られた美希は、四十路の今日まで恋も人生も諦め、高知の山里で和紙を漉く日々を送ってきた。そして美希の一族は村人から「狗神筋」と忌み嫌われながらも、平穏な日々が続いてゆくはずだった。そんな時、一陣の風のように現れた青年・晃。互いの心の名かに同じ孤独を見出し惹かれ合った二人が結ばれた時、「血」の悲劇が幕をあける! 不気味な胎動を始める狗神。村人を襲う漆黒の闇と悪夢。土佐の犬神伝承をもとに、人々の心の深遠に忍び込む恐怖を嫋やかな筆致で描き切った傑作伝奇小説。
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高知の山岳部の村落、尾峰に棲む坊之宮美希は四十歳を越える今日の日まで静かに暮らしていた。
結婚もせず、尾峰から出ていくこともせず、静かに紙を漉く日々。
春のうららかさと共に一人の青年が村にやって来たことから、彼女の生活は一変する。
隣村の池野中学校に赴任してきたというその青年教師、奴田原晃に惹かれる美希。
晃もまた、彼女に惹かれていく。
だが尾峰には、彼がやって来た頃から不可解な現象が起こり始めていた。
眠れぬ闇の中の夜。
悪夢の続く日々。
人々は、不安に呵まれながら不吉な寝不足の日々を過ごしていた。
そして、二人が結ばれた頃から、悪夢は一層深くなっていく。
悪夢は現実となり、〈狗神〉に取り憑かれた人間が出たことにより、坊之宮家は村人から閉め出されていく。
「坊之宮さんくは狗神筋やき・・・。」
狗神を祀る坊之宮家と尾峰の人々の確執が表立ってくる。
そして、人々の誹謗中傷が渦巻く中、先祖祭りが始まる。
「普通の人と同じように、普通に幸せになりたかっただけなのに・・・。」
主人公美希の、そんな心の叫びが前編通して聞こえてきそうな、哀しい物語です。
若い頃の恋の過ちを引きずり、年を重ねてきた女と、世間と噛み合わなくても何とか更正してきた晃。
初めから、どうしようもない運命に翻弄され、結局運命に従うしかなかった二人。
人々の悪意がさらにそれを助長する。
〈極楽のお錠前〉に触りたかったと泣く女。最期まで思うように生きられなかった女。
息が詰まりそうなくらい、哀しい物語です。
『死国』の時も思ったけど、この作者が描くのは、民間伝承をベースにホラー仕立てで読ませてますが、基本テーマは【何が幸せなのか?】じゃないかなぁ。
それにしても哀しい。少し、【自分にとっての幸せ】を考えてみる気になってしまいました。
良い物語ですよ。・・・ラスト、後味悪いのはホラーだから仕方ないけどね。
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お、面白かった。
そんな昔の慣わしが残る村がいまどきあるのかなぁ、って思うんだけれども、村ってものに興味を持った。私みたいな引越し族は絶対に住みたくないなぁ、って思うけれどもね。
先祖を奉り、子孫が滅びる。
一体この矛盾ってば…。
終わりの方、映画「キャリー」を思わせる。
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Gyaoで映画が見れたので、久しぶりに本も探して読みました。映画が好きで読んだんだけど、本のが全然えぐえぐですね。坂東さん怖くて、他の本は読めません(笑)
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去の辛い思い出に縛られた美希は、四十路の今日まで恋も人生も諦め、高知の山里で和紙を漉く日々を送ってきた。そして美希の一族は村人から「狗神筋」と忌み嫌われながらも、平穏な日々が続いてゆくはずだった。そんな時、一陣の風の様に現れた青年・晃。互いの心の中に同じ孤独を見出し惹かれ合った二人が結ばれた時、「血」の悲劇が幕をあける!不気味な胎動を始める狗神。村人を襲う漆黒の闇と悪夢。土佐の犬神伝承をもとに、人々の心の深淵に忍び込む恐怖を嫋やかな筆致で描き切った傑作伝奇小説。 (amazonより抜粋)
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こういう雰囲気の話は好き。
とっても日本っぽいですね。
********* 再読記録 **********
2009.06.10
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田舎の風習ホラー。壷の中の狛犬?を想像して、私もそれ欲しーーみたいな。最後はなんか狗神(いぬがみ)がのり移って興ざめしました。はい。水戸黄門の印籠を出された気分です。この本は映画化されてます。天海祐希が脱いだやつ。まあそんなことはどうでもいいけど真砂子、子猫を海に投げるなーー!!
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読み始めは、これは怖いのでは?!と身構えていたのですが
読み進むにつれて、怖さが消えてしまった。
一人和紙を漉ってひっそりと生きてきた美希。
彼女はなにも悪くないのに、血に縛られてしまう。
美希はただ幸せになりたかっただけなのに・・。
なんて、なんて、哀しい人生でしょう・・。
切なくて切なくて泣けてきました。
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かなり濃い。
近親相姦が多いのでその手のが苦手な人は避けるよろし。
いける人はかなり、どっぷりはまれるかと。あと民俗学的なのが好きな人とか。
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物語がちゃんと計算されていておもしろかった。
ラストに近づいて思わず「やられた!」と思った。(笑)
こうゆう細かいところまで伏線が張られた話はまるで推理小説を読むみたいで好き。
個人的に小豆ぐらいの狗神はちっこくて可愛いと思う。(憑かれたらヤだけどね)