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カササギ殺人事件の作者。前作が面白かっただけに期待し過ぎた感はある。資産家の老女の死から始まるミステリー。騙されてはいけない、と一字一句疑いの目で読み進めたが、見事、どれもこれも騙された。見落としてた小さなヒントの数々。4点なのは元刑事のホーソンのキャラが個人的に好きでなかったから。
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内容(「BOOK」データベースより)
自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は、自分が殺されると知っていたのか?作家のわたし、ホロヴィッツはドラマの脚本執筆で知りあった元刑事ホーソーンから、この奇妙な事件を捜査する自分を本にしないかと誘われる…。自らをワトスン役に配した、謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ!7冠制覇の『カササギ殺人事件』に並ぶ傑作!
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ホームズ役の元刑事、ワトスン役は著者が本人として登場。その関係性、捜査を本にしろという契約。書くということも描かれていたりして作家の胸中が垣間見えるのも面白い。そして事件、捜査、推理の面白さ。隠されているものはなくフェアに提示される。犯人当てへの興味が掻き立てられる。捜査の過程で語られること、関係者たちの人生、人物造形にも引きつけられる。色々なものが絡み合っているように複雑に見えたり、実はシンプルだったりと見え方が変わったりと読み応え充分。シリーズとして続くらしいのでもっと読みたい。
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やはりカササギ殺人事件の衝撃が強かったせいか、
どうしたってカササギと比べてしまう。
が、それはとってもナンセンスな話である。
もはや別物と捉えた方がより楽しめるといったものだ。
元刑事と共に事件を追うことになったのは
他ならぬアンソニー•ホロヴィッツ、著者自身。
この設定がどこまでも痛快だ。
どこまでが真実でどこからが創作だとイイ意味での混乱。
こういった設定を惜しげも無くできるあたり、
やはり相当な出来栄えだという自信の現れだろうか。
構成からネタバレ含めて、非常に秀逸。
人間の思考がいかに在り来たりかというのを痛感させられる。
一言で言えばフェアな戦いであった、ということだろうか。
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斬新な手法で読者をあっと言わせた『カササギ殺人事件』のアンソニー・ホロヴィッツが、今度は正攻法で読者に挑む、フェアな叙述による謎解き本格探偵小説。しかし、そこはホロヴィッツ。大胆な仕掛けがある。なんとホロヴィッツ自身がワトソン役となって作中に登場し、ホームズ役の探偵とともに事件を捜査し、身の危険を冒しつつ解決に導くというから愉快ではないか。
ホームズ役をつとめるのは元ロンドン警視庁の腕利き刑事ダニエル・ホーソーン。過去に問題を起こして免職となったが、その腕を惜しむ元上司がいて、難事件となるとお呼びがかかる。警察の顧問(コンサルタント)として独自に捜査を行うというからまさにホームズそのもの。ただし、このホーソーン、口は悪いし、人付き合いも悪い。仲間内では鼻つまみ者で、妻とも離婚し、今は一人暮らしという、いささか剣呑な人格の持ち主だ。
ホロヴィッツとの接点は『インジャスティス』というテレビ番組の脚本を担当した時、ホーソーンが警察のやり方を教える係として一緒に行動したことがある。そのときも、頑固で自分の意見に固執する融通の利かないやり方に閉口したホロヴィッツは、二度と組みたくないと思っていた相手。ところが、ある日、そのホーソーンから一度会って話がしたいと電話がかかってくる。その話というのが、今自分が関わっている事件が面白い。本にしないか、というものだった。
しばらく会っていなかったはずなのに、会うやいなやホーソーンは作家の近況をすべて知っている口ぶり。不思議がる作家にホーソンがその推理を語って聞かせる。靴に砂が付着しているから別荘から帰ってきたばかり。ジーンズに犬の足跡がついているから犬を飼った。たぶんその犬は仔犬だ。靴ひもを噛んだ跡がある。と語り口がそのままホームズだ。はじめは断るつもりだった「わたし」も、ついつい話に乗せられて相棒役をつとめることになる。
事件というのが、資産家の老婦人が自分の葬儀の契約のために葬儀社を訪問したその日の午後に殺される、という偶然にしては話がうますぎる事件。しかも、被害者の息子はハリウッドの人気俳優ときては話題性に事欠かない。しかし、夫人はその人柄ゆえ誰にも好かれていて殺される理由が見つからない。警察は物盗りの犯行とみるが、ホーソンの見るところ、これは泥沼案件。そうこうするうち、葬儀のためにアメリカから帰国した息子が殺される。母子二人が殺される理由は何か、という「ホワイダニット」のミステリ。
実は十年前、夫人は眼鏡をかけるのを忘れて車を運転し、二人の少年をはねている。一人は死亡、もう一人は助かったものの脳に損傷を受けて障碍が残った。夫人は逮捕されたが裁判の結果無罪となった過去がある。殺される前、母が息子に送ったメールに「損傷(レスレイテッド)の子に会った、怖い」という文面が残っていたことと、脅迫状ともとれる手紙が残されていたことから、その子、もしくは親の犯行ではないか、と「わたし」は考える。
本格探偵小説もいろいろあるが、ホロヴィッツはアガサ・クリスティがお好きなようだ。個人的にはクリスティは、好みではない。しかし、今回ホロヴィッツはフェアな叙述を心がけていて好印象。ただ、ホームズ物の新作を依頼されるほどの作家のはずなのに、実際の捜査に不慣れなためか、大事なところでホーソーンの注意をそらせたり、ミスディレクションを誘ったりする。これが効果的に用いられていて、容易に謎を解かせてくれない。
面白い設定で、まず小説の第一章が置かれているのは当然のことながら、第二章は作家、脚本家としてのホロヴィッツの仕事について触れている。コナン・ドイル財団に依頼されて、ホームズの登場する探偵小説の新作『絹の家』を書きあげたばかりで、テレビ・ドラマ『刑事フォイル』の脚本の仕事も終わったところ、というのは事実。次の仕事にかかろうとしていた矢先、ホーソーンが現れた、というところから虚構となる。第一章は、その新作の初稿ということだ。
「わたし」の仕事は、ワトソン役となってホーソーンに付き添って、現場に足を運び、目撃者や容疑者の話を聞き、メモを取り、事件解決後はそれを本に書いて出版するということだ。もちろん、読者が今手にしている本がその完成作、という設定。どこまでが本当でどこまでが虚構なのか、何やら番宣めいた、スピルバーグやピーター・ジャクソンと映画『タンタンの冒険』の続編を撮るという話まで出てくるが、どうやら本当にあった話らしく、驚いた。
もちろん事件は虚構なのだが、その中に作家自身が関係する事実が混じるので事件がさも同じ頃に起きていたような錯覚が生じる。『カササギ殺人事件』でも、作中作が事件と絡み合っていたが、ホロヴィッツという作家は、こうした仕掛けがお気に入りのようだ。しかし、今回はホーソーンから、見たこと、聞いたこと以外は書いてはいけない、という縛りがかけられているので、読者は探偵たちとフェアな戦いができることは約束されている。
現実に、手がかりは目立つように書かれている。ホーソーンが意味ありげに呟いてみせるのもヒントになる。ただし、頭のどこかには残るものの、最重要な手がかりが登場してくるまで、犯人を絞り込むことができない。前作でアナグラムを使用しているホロヴィッツのことだ。メールに残る「損傷(レスレイテッド)の子」というのが鍵なのだが<lacerated>で合っているだろうか。いつも思うことだが、こういう箇所は原文を記すくらいの配慮が欲しい。勘のいい読者なら、それで分かるかもしれないのだ。
チェーン・スモーカーの探偵、ホーソーンという人物がよく描けている。個人的な話や世間並みの挨拶は一切抜き。一度口を閉じたら二度と開かない。ポリティカル・コレクトネスなど知ったことか。いつも単独で勝手な捜査をするため相棒がいない。裡に秘めた暴力性や同性愛者や小児性愛者に見せる憎悪、子どもに寄せるシンパシーからは、過去に何かある人物であることは伝わってくる。本人が考えた『ホーソーン登場』という題名からして、シリーズ物の第一作と考えられる。謎につつまれた探偵については、おいおい明らかになることだろう。次回作が楽しみなシリーズ物の誕生である。
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カササギ、のゴシック調重厚さはそれほどないものの、本来ホロビッツ氏の作風はこっち寄りでしょう。ホーソーンに翻弄される「私」が滑稽に思えました。映画製作のリアルなシーンも出てきて、映画ファンもニヤリとさせてくれます。ひねりにひねった事件の様相に比して、結末はわりとあっけない感じ。それでもホーソーンと「私」のやりとりで収束していく過程にはのめり込めました。とても楽しい時間でした。
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最後ある程度納得できるが、えーそうやったんかって感じが物足りない気が・・
メッセージのスペルも言葉の壁が・・
次作も1位なんで、読んでみようとは思う。
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『カササギ殺人事件』が面白かったので期待して読んでみたら、『カササギ』とはまた違った魅力の正統派のフーダニットで楽しかった。
ホーソーンたちは過去の事件関係者にも聞き込みを進めていくものの、自分の手の内をなかなか明かさないホーソーンに「わたし」は苛立ち気味。でもって、事件の輪郭がつかめない不満もあって何かとぶつかり合いそうになる探偵コンビだが、この微妙な距離感がコミカルでもあり、ミステリアスでもあり。
さらに印象深かったのは、著者の作家像が随所でリアルに浮き彫りにされている点。虚構と実像のボーダーラインをぼかすことによって、「わたし」というキャラの背景を活き活きと描き、エンタメ業界の内情も織り交ぜながら、厚みのあるサイドストーリーが展開される。
メインの事件捜査だけ切り取ってみれば、ごくごくシンプルで、クリスティ仕込みのフェアな謎解きスタイルは切れ味もよい。謎多き探偵に振り回されそうなワトソンというコンビの今後が予感できそうな粋なラストもよかった。
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「筆の軌跡がそのまま楽しめる美しい油絵、あるいは断片の集合が織りなす上質なコラージュ作品をみているよう。この形以外では語りきれなかった見事な推理小説!」(帯の文句風)なんて、言ってみたりみなかったり。
今回も期待を裏切らなかった!
カササギ殺人事件で衝撃を受け、また書店でホロヴィッツの本を推していたので即買い。
カササギ殺人事件でも「語り方」にこだわっていたホロヴィッツ。今回もこだわりは健在で、「この本は実際にあった事件を、筆者が探偵についてまわって、探偵の行動を書き留めながら解決していった事件についての本です」という体をとっている。しかも筆者がホロヴィッツ自身なのだ。
語り手をホロヴィッツ自身にすることで、ただのミステリーではなく少し私小説かエッセイらしい趣になっているように感じ、私はそこが好きだ。
ミステリーというと、人間の機微や心理というものは、推理のために描かれるものであって、どこか都合よく作られたものだという印象を受けることが多い。
しかしこの作品では、ホロヴィッツ自身の憧憬や、作品を作る上での葛藤や迷いの痕跡がそのまま残している(そういう痕跡をどこまで残すべきなのか?という葛藤も出てくる)。
そんな雰囲気の中で描かれる物語なので、登場する人物の行動や心理も、目の前で起きている現実をそのまま切り取っていった結果という風にみえて、ごく自然に描かれていた。もちろん実際には全て計算で、きっちり取捨選択されているのだと思うが、どこまで本当なのだろう?と惹きつけられながら読みきった(なんとスピルバーグまで登場する!)。
シリーズものになる予定、とのことで、今後の楽しみがひとつ増えた!
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関東シャカミス課題本として。
海外ミステリは実は8作目。作者のアンソニーが作中に登場し、他にも舞台やモデルは実際のイギリスそのまま。登場人物のなかにはそのまま実名で登場する実在の人物もいたりして、非常に面白い。キャラクターが活き活きしていて、それぞれの思惑で秘密を持ち、様々な状況と理由で行動する。それをじっくりと観察して、真相を見抜いていく探偵役のホーソーンも魅力的なキャラクターだ。ヒントをヒントと思わせず配置して、思わぬ証言や証拠の組み合わせから謎を紐解いていく過程はうまい。一つの良い映画を観たかのような読後感だった。
ヒントの出し方や伏線、トリックの技巧は素晴らしいのだが、それを経て導かれる真相は容易に想像できるかなりベタなものだったのがやや残念ではあるが、全体としては面白い。ベタさは王道であるが故、とも言えるだろう。王道には王道の面白さがしっかりとある。
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アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭訳『メインテーマは殺人』(創元推理文庫、2019年)は自らの葬儀の手配をした当日に資産家の婦人が絞殺されるミステリーである。原題は『The Word Is Murder』。ワトソン役の視点人物は作家で、探偵役は元刑事のホーソーンである。
ホーソーンは強引で嫌な人物として登場する。「自分に見えている世界が実際にはどうなっているのか思いをめぐらす能力が欠けている」(24頁)。相手に配慮せず、自分の要求を押し付ける。現代日本流に言えばマウンティングしたがりとなるとなるだろう。主人公が「いつも苛立たしげで攻撃的、人種差別主義者すれすれの厄介な刑事」(25頁)と視聴者が反感を抱くキャラクターのモデルとしたほどである。このような刑事は愛媛女子大生誤認逮捕事件など見込み捜査で突っ走り、自白を強要し、誤認逮捕や冤罪を生むタイプである。優れた探偵役は相応しくない。これが探偵として活躍できるのかに注目である。
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『カササギ…』ほどの面白さはなかったかな…。
伏線に割と印象的なものが多くて、何となく結末の予感を薄々と感じさせた。
しかし、
風が吹けば桶屋が儲かるって言うけれど、まさか猫の迷子がこれほどの騒動になろうとは…でも意外と似たようなことは現実社会でも起き得るのかも知れない。
さて、どうもこれはシリーズ化されそうな終幕でしたが、
作者自身が作中に登場する必要性が今ひとつ不明瞭というか、釈然としないのは、それこそが今後への伏線なの?
とも取れる様に感じたりで、次作も必読必至。
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最初はあまり読む速さが進まず、ありきたりな内容になるのかと思ったのですが、被害者の過去が明かされていくあたりから、先が気になって読む速さが早くなりました。
脚本家の作家さんだけあり写実的で面白く、さり気無く驚くシーンもあって良かったです。
BBCのミステリードラマを見ているみたいでした。
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「カササギ殺人事件」で一躍有名となったアンソニー・ホロヴィッツの次作。
作者自身がワトソン役で登場(ほぼ主役級)する、しかも結構感情を露わにして…。これほど派手に自分を物語の中に投じた作者は、きっと楽しくて仕方なかったでしょう…。
いやいや、このアイデアがうかんだあと、きっと大変だったと思います。
フェアを宣言してしまっているし…
単に時系列に書き連ねた文章、年表や授業ノートのような、凡庸な物語となってしまうプレッシャーは、いかほどのものか…
ところが、出来上がったものは前作に引き続き絶大な人気作となった。
物語の謎解きもさることながら、ホロヴィッツ自身のオロオロ、ドジぶりもコミカルな上に、自分が「絹の家」を書き上げたこと、スピルバーグやピーター・ジャクソンとの次作映画の打ち合わせ、妻や子供など自分の家族も登場させ、果ては容疑者宅への単独突入など、もう好きなようにお祭り騒ぎ。
探偵役のホーソーンはどちらかというとわがままで遠慮なし、図々しく、とても愛されキャラとは思えなかったのに、ラスト近くでは「読書会」に「模型作り」が趣味と判明。本当は内気で凝り性と、可愛さが垣間見れました。
次回タイトル「その裁きは死」は9月。
また一つ楽しみができました。
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ミステリが読みたい!2020年大賞受賞。
昨年の『カササギ殺人事件』に引き続き、手に取りましたが、これは文句なしの大賞だと思いました。
自らの葬儀に手配をしたまさにその日に殺された資産家の老婦人。そして元刑事ホーソーンとともに事件を捜査し始める、ドラマ脚本家の「わたし」こと作者自身のアンソニー・ホロヴィッツがワトスン役を務めます。
捜査中に第二の殺人が起こり、事件の果たしてどの人物が犯人かわかったところで、上手いっ!と思いました。
アガサ・クリスティをやはり思い出しました。
伏線の張り方も見事で、最後の解説の章ではうなることしきりでした。
本編の続編The Sentence is Death、も来年刊行予定で、その続きも十作程ある予定だそうです。
『カササギ殺人事件』の続編もあるそうです。
古きよき時代のミステリーを彷彿とさせつつ、全然旧くない、このしてやられた感がまた味わえるのかと思うとものすごく楽しみです。