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秘めた思い。
くすぶる思い。
ままならない恋慕を秘めて日々生きる。
こんな素晴らしい小説家がいたとは。
こんな素晴らしい作品があったとは。
古書価が高騰しているのも納得。
大人の恋の物語三篇。
最高。
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人の気持ちってワタシはワタシのことしか知らないから、本を読んだり映画をみたり漫画を読んだりテレビでドラマやアニメをみたりするわけで、どんなに友だちと話をしても友だちの本当は分かるわけではないとか思ってしまっている。
それってさみしいのかなぁとか時々考えるけど、夫婦だって兄弟姉妹だってつながりはあったとしても自分ではなく他の個人なんだから、ワタシは絶対絶対わかることなんてないと思っている。
この多田尋子小説集『体温』はそれを確信させてくれてめちゃくちゃ気持ちのよい読書だった。こんな風にひとりでいてもいいんやなって思えた。
ありがとう、他の多田尋子作品も読みたいので図書館で予約しまくった!
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『体温』『秘密』『単身者たち』の3編。30年くらい前の小説がなぜ今?全体に鷹揚だな、と感じる。家族、結婚や夫婦、女性が1人で生きるということ、異性との距離感、など。家族の描写では庄野潤三を、恋愛の風景では田辺聖子を連想した。40歳前後という設定がまた絶妙なのかもしれない。若さと老いの間の端境期のような年代。諦めている部分と、まだ諦めるには早いような部分。サバサバしているのかと思うとねっとりしているところもある。
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今の私にとって最も好きな女性作家さんかも知れません。若い時だったら違ったと思うけど45歳で読むとちょうどいいです。主人公はだいたい私くらいの年齢の女性だから多くの部分で共感します。
多田さんは現在88歳で、約30年前に書かれた作品なのにとてもそうは思えないほど今っぽいです。偏見だけど昭和7年生まれの女性が書く内容ってもっと所謂昔の日本的な感じだと思っていたのに全然そうじゃなくて、どの女性も自立して一人で生きていこうと決めていて、現代の女性に近い印象です。
『単身者たち』は古道具店というシチュエーションのため他の作品より古く落ち着いたトーンですが、内容は現代でも変わらない問いや考えで、すごく良かったです。
あとがきの短い文章も人柄がうかがえて、可愛らしい素敵な人なんだろうなぁって、心が温まります。
私が特にいいなと思うのは、主人公の女性たちは皆たくさん迷うこと。これまで読んだ女性作家さんが書く女性たちは迷いがなく、理想像というか「こう生きられたらいいだろうけど」みたいな強さがあって嘘っぽいのに、多田さんの作品に出てくる女性たちは嘘偽りがなく、決意だって変わるし、こうしておけば良かったかな?と後悔もするし、悩むし迷うし、強かったり弱かったり、流されて揺れて、ものすごく心情がリアルなのです。こんなにリアルな女性たちは読んだことがありません。男性作家さんは割とダメダメな部分を曝け出した私小説風の作品(太宰治とかあの頃の、酒と女と借金とみたいなの)は多いけど、女性作家さんはそういうのがあまりない気がします。だから多田さんの作品はすごく新鮮でした。
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けっこう年上の妻子ある男性と未婚女性の不倫モノやお妾さんだった母親とその娘が同じ男性と関係する話、若い後家さんと亡き夫の同僚との恋愛など4編が収められていました。
なんだかどれも設定は普通じゃないのに低体温なお話だった。時代設定がレトロだからかな。
つまらないわけじゃないけれど、面白くもない。不思議な生ぬるさを感じる低体温短編集でした。
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大人の女性たちのままならない恋愛を綴った小説三篇を収録。
三十年前に書かれたとは思えぬ名文。主人公たちの純朴さと不器用さにやきもきしつつ彼女たちが選ぶ幸せの形にため息が漏れる。書評は作品を通して当時と今の橋渡しをしてくれる。大変素晴らしかった。
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クロワッサン特別号『すてきな読書』掲載作品。今まで読んだことない作者さんで、30年ほど前に書かれた作品とのこと。新鮮な読み心地で愉しめた。
大人の恋愛がテーマとなった短編集。平穏な生活の中で小さなさざなみのようにそっと生まれる恋心。既に確立してしまった自分の立場や、周囲の視線、過去の失敗、それらの集大成として抱える将来全般への諦念。安易に行動には移せないもどかしさの中で、それでもいつか何か小さいきっかけが訪れるのを密やかに期待してしまう。静寂。戸惑い。躊躇。憂鬱。読みながらそんな言葉たちが頭に浮かんできた。