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愛しい、怖い、切ない。読む人によって見え方が全く変わってしまうであろう不思議な作品。また一人、好きな作家さんが増えてうれしいです。
2017年に直木賞を受賞したそうですが、私は全く前知識なく、本屋さんで山積みにされたこの本に出合って気まぐれに購入しました。冒頭のミステリーチックな雰囲気からその頭で読み進めていましたが、見る角度によっては恋愛小説になったり、ちょっとオカルトやホラー的な要素もあったり、きっと次に読むときには違った表情を見せてくれるのではないかなあと。
東京のとあるホテルのラウンジで、初老の男と若い母娘が待ち合わせ。もう一人来るはずの男、三角(みすみ)はまだ来ていない。三人はぎこちなく話し始めるが、男と娘の会話はイマイチかみ合わない。三角を待つ間、三角と彼らをめぐる物語の過去を辿っていく…というお話。
ストーリーが進む方向は途中からなんとなく見えてきますが、それでも小説としての面白さを最後まで保っていられるような、安心感のある一冊でした。複数の人物が時代をまたいで登場するので、全体を把握するのにちょっと頭を使います。そこもまたこの作品の良さなのでしょうが。
2017年に単行本が出版され、今年10月に文庫化された本書は岩波出版から出ていますが、岩波文庫じゃないんです。「岩波文庫的」。なんじゃこりゃ?と思って調べてみると、装丁や細部を微妙に崩しながら岩波文庫「風」の文庫本に仕立てた自社パロディだそう。単行本が発行されてまだ二年半しか経たない本書を、佐藤正午さんご自身が岩波出版へ文庫化の打診をしましたが断られ、岩波文庫がダメならそれ風の…といったようなやりとりがあり、編集者さんの粋な計らい(おそらく)で実現したとのこと。岩波さん、素敵です。
そして何より印象的なのは巻末に収録されている、伊坂幸太郎さんの特別寄稿「解説はお断りします」。解説ではありません。本書の解説の寄稿を辞退したという断りの文章です。読んでいただければわかりますが、伊坂さんの佐藤正午さんに対する愛情あふれる文章となっています。本書はこれも含めて素敵な作品です。
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直木賞受賞作。他に読んだ数作品も面白かったし、岩波からってのも面白いし、早速入手して読んでみた。この、前世云々の考え方がどうも苦手で、頭ごなしに否定にかかってしまいがちなんだけど、そのあたりは作者のさじ加減が絶妙で、変にカルト的にならず、上手い具合に物語のスパイスとして効かせられている。だんだん人の繋がりがややこしくなってくるけど、各キャラがよく書き分けられていることもあり、抵抗なく頭に入ってくる。面白かったす。
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トリッキーな装丁デザインのサンプルぐらいのつもりで購入したが、よみだしたら止まらず一気に読んだ。
瑠璃たちが時間を超えて、月のように死に、生きるのに対し、男たちは樹のように生きる。男たちが建設業者なのは、それが空間に根差す仕事だからだろう。
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ホラー感満載のラブロマンスだった。
生まれ変わる度に親やまわりを巻き込んで、愛する男に必死に会いに行こうとする瑠璃さん、純愛なんだけどなかなか怖い。
ランドセルしょった小学生が、現在中年になっている昔の不倫相手を追いかけて家出するって。。ひぇー。
時間軸がいったりきたりするのと、まわりの人間関係が意外に絡み合ってて、ちびちび読むと混乱してきたので中盤からは一気読み。
最後の最後にキュン、で締めれてほっとした。
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一人の女性が恋した男性と再会するために周囲を巻き込みながら選んだのは輪廻転生であった。
第157回直木賞を受賞した本作は、職業作家としてベテランの域に達している著者の匠なストーリーテリングによって次に何が起きるのかというワクワク感と、輪廻転生してまで恋した男性に再開したいという女性の思いに胸を包まれる傑作である。
数度の輪廻転生により、その父親や母親、友人なども影響を受け数奇な運命を辿ることになる。女性がどのように輪廻転生を繰り返していくのか、そして周囲の家族・友人はその都度どのような影響を受けていくのか。2つのテーマが重なりながらフィナーレに進んでいくストーリーテリングは見事。これぞ直木賞の醍醐味、とでも言うような作品だと思う。
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これは読もうと決めていた。『図書10月号』の「こぼればなし」に、「岩波文庫的」という名称を使ったことの顛末を書いていたからである。初めての岩波書店の直木賞受賞作を、発行後2年半経っただけで「長い時間の評価に耐えた古典を収録する叢書に、みずみずしいこの作品を収録するのは尚早」ということで、「いたずら心で」で使ったらしい。(何故「的」の言葉を選んだのかというのはさて置き)そういう仕掛けは大好きなので、話のタネに読んで置こうと思っていた。ところが、予想以上に岩波書店はこの文庫本の発刊に力を入れていた。本屋で手に取ると、帯に『選考委員を唸らせた熟練の業が、「岩波文庫的」に颯爽と登場。』と岩波文庫的に難しい漢字を多用して煽っていたのだ。だけでなく、中に作者ミニインタビューの特別チラシまで入れているし、普段解説を書かないのに例外的に伊坂幸太郎が解説を書いていると思ったら、なんと『解説はお断りします』という編集者宛メール文をそのまま載せて解説の替わりにするというアクロバット式の解説を書いていた。
読んだ。とーっても面白かった。アクロバット式の小説「的」な仕掛けが随所にある。
メインの話は、小山内さんという還暦過ぎの男が、青森から東京駅に出向いて、ある人に会ってまた帰っていく間の2時間と少しのお話である。その間に登場人物たちの過去が次第に明らかになってくゆく。倒叙方式のサスペンスにもなるし、SFファンタジーにもなるが、そういうわかりやすい結末は排除している。「熟練の業」で余韻残る「お話」を作っていたのだ。
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『岩波文庫〝的〟』で、直木賞受賞作が文庫化。『的』というのも面白いが、表4のロゴも凝っているので、裏もちゃんとチェックしようw
『転生』が重要なモチーフになっている長編というと、つい『豊饒の海』……と考えてしまうが、冷静に見てみると、本書も負けず劣らず、『不幸』なんじゃないだろうか。
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口汚く言えば「おっさんのためのロマンス」って感じであまり好きなストーリーではなかったんだけど、一気読みさせられた。読まされる文章。集中させられる物語。
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生まれ変わり・転生
あるのだろうが、小説でやると、こうもこじつけ感が出てしまうのか。ご都合主義というか、面白いんだけどね。直木賞受賞としてはイマイチ。
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帯に伊坂幸太郎の名前があったので即決で購入
結果買って良かった、読んで良かった、他の作品も読みたいと思った。
どの時期の話なのか混乱する事もあったが複雑な割に概ねわかりやすく書かれていた。
小山内さんの奥さんのエピソードが印象的
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摩訶不思議な輪廻転生もの。
一人の男を追って次々と生まれ変わる女性。
しかも結構短いサイクルで。
だから一人の男性視点で語れる不思議な話。
ちょっと怖いけど、最後はほっこり。
読後感は良し。
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おもしろかったー。
2020年が終わる前に読み終わる予定だったのに年を越しました(笑)
最初の2〜3行読んだだけで、おもしろそうと思ってワクワク。
読み始めたらグイグイ物語に引き込まれて、久しぶりに心揺さぶられる作品でした。
どういう結末を迎えるのか最後まで予想がつかなかったです。
おもしろい!の一言しか言えない、そんな作品でした。
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直木賞受賞の時から読みたかったのですが、岩波文庫的装丁に惚れて、こっちで読みました。
信じられないぐらいの奇譚。永井荷風の浪漫的カッコよさや泉鏡花的なまさか感も感じました。そんな他の作家に喩えられたくないでしょうが。
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やはり外さない。最後すごく良かった。小山内さんがこれからどうするのか 読者がその人なりの今後を想うのもいいと思う。
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正木さんと母親のやり取りのところで何度か吹き出してしまった。不謹慎というか場違いなところで笑ってしまうようになった自分に少し怯えた。久しぶりに先が気になって一気読みしてしまった作品。