『富士日記』の書き表せない魅力
2021/09/29 15:24
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投稿者:ひるお - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の日記文学における金字塔『富士日記』。本作とその筆者武田百合子にまつわるエッセイ、書評、解説からその魅力を探る、というのが本書の内容。各界の巨星たちがその魅力について様々に語っているのだが、どれだけ言葉を尽くそうともその魅力は決して言い表せない。その事実こそが、武田百合子の書き手としての大きさを物語っている。二日酔いを、天井から飛びかかってくる黒い小猿に例えられる人が、ほかにいるだろうか。もの読む者にとってはこの上ない僥倖、もの書く者にとっては一種の絶望、それが武田百合子という書き手の存在なのだ。
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いろんな人がいろんな言葉で分析し論じようとしているけど、どれも言い当てられていないし、やっぱり百合子さんの文章そのものの方が圧倒的に面白いのだった。
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多くの読者を魅了して止まない富士日記。その魅力を作家の書評。解説、帯文や書下ろしエッセイにより語る。写真多数と富士日記索引も収録。
「富士日記」は日記文学の最高峰だろう。ありふれた日常、富士山麓の別荘暮らし、毎日の買い物と食事の献立それに変わりゆく季節。ただそれだけ、読まれることを想定しなかった修辞のない淡白な記述、なのに面白い、不思議な魅力がある。
その魅力を多くの作家さん方が解説している。出典や時期は全くバラバラなので同じような指摘が多い。考えることはみんな似ている。特に愛犬ポコの場面(富士日記既読者なら分かるかと)。
富士日記ファンは本当にたくさんいるようだ。聖書のように枕元に置いて章に関係なく読む人もいるという。
自分も「富士日記」再読してみたくなった。
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小川洋子、苅部直、平松洋子、村松友視各氏による書き下ろしエッセイと、各紙誌に掲載された書評を収録。写真多数、文庫新版に対応する人物索引を付す。
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第1章 その後の『富士日記』(今年の夏;二年目の夏 ほか)
第2章 『富士日記』に寄せて(宇宙のはじまりの渦を覗く;生と死を見つめる眼 ほか)
第3章 『富士日記』を読む(解説・帯文;書評)
第4章 富士山荘をめぐる二篇(花火を見るまで;蝿ころし)
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◯武田泰淳は妻の天賦の才に気づいていたと確信した。第四章の泰淳のエッセイ「花火を見るまで」の大部分は、百合子さんの富士日記ほぼそのままだった。引用と言っても差し支えないくらいに。文学者である泰淳が一介の妻の日記をほぼそのままの形で載せたことは、妻である百合子さんを非凡な観察眼と文章力の持ち主として泰淳が追認していた証拠だと思う。
◯巻末にある「富士日記」索引、これ便利だなぁ(使う場面がそんなにあるかは別として)。ただ、この索引作るときの地道な作業、大変だったろうな。
◯角田光代の著書は読んだことないけど、彼女の書いた武田百合子評は、群を抜いて的確だった。
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様々な著名人が武田百合子さんについて語っていますが、武田百合子をどう語るかを試されているような気がする。
作家として編集者として百合子さんと関わった人々の話はやはり濃い。
武田泰淳による「第四章 富士山荘をめぐる二篇」の「花火を見るまで」に描かれている外川さんが本当に誠実で、夫婦が惚れ込むのもわかる気がする。
犬のポコ、猫の玉の写真も愛らしくて、素晴らしい一冊です。
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最後の索引は、ポコと玉も入れといて欲しかった。やっぱり『早く土の中で腐っておしまい』たまよね。うんうん、と思いました。