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とにかく語り口が(そしてその翻訳が)いい。
手をつけてはいけないと戒められていた向こう岸の森を焼き払ったため、オオカミの襲撃を受けるようになり……
今の価値観からすると、それで人間がほろびる話なのかなと思ってしまうけど、そんなに単純ではなかった。
人間とオオカミの激しい攻防戦。途中、途中で、オオカミとは直接関係のない挿話や昔話が語られ、短い話ながら人間たちの造形も深まっていく。
オオカミと共存できない悲しさを感じつつも、これは厳しい(厳しすぎる)自然のメタファーでもあるのだろうとか、古い価値観を表すものかもしれない、などと思っていたら、物語のあとの作者の言葉と、訳者あとがきにも仕掛けがあって、意表をつかれた。面白かったです。
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帝政ロシアの頃のある村で、村を広げようと手を着けてはいけないと伝えられていた森を焼き払ってしまう。死に森と言われるようになった森で、村人はオオカミに襲われる。村人とオオカミとの戦いが始まる。
亡命ロシア人作家が、いくつかの伝承を合わせて創作した、というように見せ、実は現代の作家の作品であるというカラクリが最後に明かされます。ロシアらしい冬の厳しさを伝えます。
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ロシアの民話と伝承を基に創作された、狼と人間の戦いの物語。
古老ボルトニコフが語り部として読者に「昔々…」と聞かせる体裁をとっている。
狼好きとしては「自業自得なのに…」と少し複雑な終わり方ではあるものの、圧倒的な存在感を放つ白い狼の美しさに畏怖の念を抱いた。
「おわりに」まで読んで、おや?と思った。
というのも、日本での発行は2019年。だが作者あとがきには1940年の記載。再注目されるなどして掘り起こされ、日本での発行に至った本なのだろうか…?
ネタ晴らしは訳者あとがきにあった。
最後まで飽きさせない本だった。