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いろいろあってやっと読了。
圧倒的。文体もテンポも浮かぶ色彩も沸き立つ感情も、そのすべてが心のずっとずっと奥底から引っ張り出されるような感覚。
よくも悪しくも引きずります。
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二十歳の作者のデビュー小説ということで、読み終わった率直な感想をいうと、そうとは思えないような、作品の世界観や作者自身の主張が濃密に感じられました。
19歳の浪人生「うーちゃん」が、主に、母親に対する気持ちを、「みっくん(おそらく弟だと思う)」に、独特な方言めいた口調で語りかける形式で終始、展開される文体は、本来なら、ものすごくシリアスで、痛々しい話になりそうなところを、少し、ユーモラスで、つつましやかな感じにしてくれるのが、まず、興味深いなと思いました。
また、「うーちゃん」の個性が、とても細かく、繊細に描かれているのが素晴らしく、現代っ子らしいケータイのSNSに依存しながらも、実は、横浜から熊野に、神様に会いに行って、母親の死と引き換えに、新たに身籠って母を生むという、この発想がすごい。
現代っぽいのに、古式めいた感覚を取り入れていて、家族という血縁ゆえの悩み、苦しみ、ちょっとした喜びに加え、性の目覚め、自己を見つめ直して、色々、考えながら成長していく感じが、瑞々しく描かれていると思います。ひとつの考えに固執しているようで、そうでないところとか。
それから、最後の「うーちゃん」の母への叫びが圧巻で、印象的だったのですが、ラストの終わり方の、ややあっさりしたような、でも、なんともいえない感じが、また印象的でした。
最後の展開への繋ぎや、途中、冗長に感じて、気になった部分もありましたが、村田沙耶香さんが評価したのも、すごく分かる気がしました。次回作も、是非、読んでみたいと思います。
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母親と皮膚がつながってるように感じていた娘が胸のうちを絞り出すような内容だった。こういう、ぐちゃぐちゃになった家族の話を読むと、改めて自分の足元を見つめられるようになれて良い。表紙をめくっても赤、しおりも赤で、本作に繰り返し出てくる経血や生まれてくる時に誰しもが浴びる血潮、かかの自傷による血などなどのイメージと一致する。みっくんという弟に独特の口調で独白する形で物語が進んだが、女流文学(古い言葉かもしれないが)感があった。この作者が今後はどんな話を書き続けるのか分からない。
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言葉そのものが伝える力はすごい、と思った。自分の言葉をもつ、ということは、いろんなことやものから身を守れるかもしれない、とも。誰かに聴いてほしい、と訴えるような、歌をうたっているような。そんなふうに読んだ。
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最初の一文、「そいはするんとうーちゃんの白いゆびのあいだを抜けてゆきました。」からして頭に入るのに少し時間がかかりました。
独特の雰囲気のある言葉づかいで、作者の世界を築いています。
この感性にはついていけませんでした。
でも、次作がどうなるかは楽しみです。
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方言のような独特の言葉遣い、その言い回しが物語を覆い,少し現実からずれた雰囲気を作っている.愛されずに育ち今も愛に飢えた母親かかをかわいそうに思ううーちゃん.家出して,青岸渡寺に向かいながらもそれでもSSには繋がって,そして,うーちゃんは願う,かかを産んで育ててあげたいと.そんな親子関係が悲しい.
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「かか弁」という家庭内でのみ通じる方言のような独特の言い回し、音読したくなる音楽性のある文体で生々しい愛憎や嫉妬を語る。
文体や表現に驚きはするものの、こういう母親とこじれた関係の若い女性が主人公の物語を読むには、わたしは年をとったんだなという気もした。
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“おそらく誰にもあるでしょう。つけられた傷を何度も自分でなぞることで傷つけてしまい、自分ではもうどうにものがれ難い溝をつくってしまうということが、そいしてその溝に針を落としてひきずりだされる一つの音楽を繰り返し聴いては自分のために泣いているということが。”
はあ、待ってくださいよ。
傷をレコードの溝にたとえ、そこに針を落として自分の不幸を流して酔いしれるという表現。天才なのでしょうか。はい、間違いなく天才ですよね。
ただただ作者の感性と表現に嫉妬を覚えてしまう。若干二十歳にしてこれは恐ろしすぎる。
内容は主にひとり語りで、「うーちゃん」なる主人公が自分をとりまく環境について語っていくのだが、その主軸となるのが「かか」つまり母親の存在だ。
主人公は母を愛している。でも、愛するがあまり、自分が産み落ちてしまったことが母にとって最大の不幸であり、「母が処女であったころ」に戻ってほしいと強く願ってやまない。そんな母を、自分が妊娠して大切に育みたいとすら思う。
川上未映子の『乳と卵』を彷彿させるというか、やはり女性にとって母親というのは「母」であり「女」であり「子ども」という特殊な存在だというのを改めて再認識させられる。
まるで自分の一部のようで、守られていると思ったら守るべきものだったりして、強いと思っていたら壊れそうに弱くて、気持ち悪くて愛おしい。
“不幸に耐えるには、周囲の数人で自分がいっとう不幸だという思い違いのなかに浸るしかないんに、その悲劇をぶんどられてしまってはなすすべがないんです。”
この一節もひどく心に響いた。
自ら悲劇のヒロインになることで与えられる特別な免罪符。それを人は過去に見出すのではないだろうか。「わたしいじめられていたからさ」「わたし片親だからさ」「わたし不幸でしょう」そんな聞いてもないのに吐露される思いには寂しさと恍惚なる思いが入り混じってるのではないだろうか。
これには少しギクリとする。わたしは中高親の転勤で渡米をしていたが、それをあたかも「不幸」な話として周囲に吹聴していたからだ。ねぇ、思春期に異国の地でひとりぼっちで過ごした人間が捻くれないわけないじゃない、なんて。
とても愚かでした。
目を瞑りたくなるような現実を突きつけられるような赤裸々に綴られた言葉ひとつひとつが胸に痛切に響いて読みながら何度も本を閉じたいと思ったし、読後感は最悪。でもこれがリアル。それを描ける筆者の未来の作品が楽しみでならない。
これが私小説でも何でもないフィクションなら、本当にわたしは作者の才能に嫉妬してしまうよ。
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言葉、文体が読みにくかったけど
不思議とすぐ慣れたし、
読みにくさで気がついたら集中していたので
すごいとおもった
うーちゃんとかかの関係性については
すごく染み込んできたけど、
SNSの部分がどうしても話から浮いてるように感じて、ばさっとなくしたらどうだろうと思ってしまった。
どうしてかかを産みたくなったのか
もう少し詳しく書いて欲しかったかな、、
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ひらがなや変な人称が読みにくいけどだんだんその濃さに引き込まれる。
小さい頃の原体験が蘇るようだった。
私があの頃感じた気持ちを言語化してくれたような爽快感があった。
SNSに対する感度が一緒だった。現実よりもぬくい。居心地の良い1つの社会。見栄や不幸自慢で自分を繕う。
熊野の向かう描写が帰省するときの淋しさの景色
「どんなに知的で自立した女の人であっても、たった一言のあほらしい猥談のになかに取り込まれてしまうんがどれほどまでに悔しいか」
「女に生まれついたこのくやしさが、かなしみが、おまいにはわからんのよ。」
「うまれるということは、1人の処女を傷つけるということなのでした。かかを後戻りできんくさしたのは、..」
「自分がはっきょうしたのか手っ取り早く知りたかったら、満員電車にすわってみれ。お隣がぽっかりあいていたとしたら、それがおまいのくるったしるしです。」
最後
(うーちゃんたちを産んだ子宮はもうどこにもない。)
母からの卒業宣言。母の引退。地獄の終焉であると思った。
同じ境遇にいるが、男であるみっくんについて、うーちゃんと変わる点をもっと掘り下げて見てみたい、気になる人物。
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「ジェンダー」が主題なのかな。文藝賞受賞作。冒頭のシーンは新人と思えない描写。主人公は19歳の浪人生の「うーちゃん」。物語は彼女の「かか弁」という独自の文体で語られる。壊れていく「かか」と「うーちゃん」。母娘(おやこ)とは、女性とは、男の自分にはわかんない部分がある。
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ととの不倫をずっと引きずって、精神的におかしくなっていくかかのことと、それを抱えきれずにいるうーちゃん。
病気の手術を控えたかかを残して、うーちゃんは1人で熊野に行く道中によみがえるかかとのこと。
うーちゃんにとってかかは神様だったけれど
壊れていくかかを支えていくうちに
哀れで惨めなかかが大好きで、その分憎かった。
どうせならかかを産みたかった。
かかを妊娠して、かかを産んでうーちゃんがとびっきりの愛情を注いで、かかを育ててあげたかった。
独特の言葉遣いが、読みづらい。
だけど、二十歳でこんなのが書けちゃうなんて、すごいなあ。
力強くて瑞々しい文章、次回作に期待しちゃう。
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もう直木賞レベル!
というか直木賞=よくわからん賞、というのが自分の中での感覚。
方言、造語が続くので読みにくいがよく言えば味がある。
延々とストーリー無視して書きなぐったような文章は最近の直木賞と同ジャンルと言って差し支え無し(当社比)。
色々なところでリアルな女子大生の内面が浮き彫りになり、また女性の生々しさが読んでいて吐き気を覚える。まさにリアル。
SNS中毒の現代人らしい表現があり、当時2chanねらーだった自分からすると今のSNSは「最低レベル」に酷いなぁと感じる。なんでSNSが流行るかわからん。やればやるほど嫌になるのにw
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第56回文藝賞受賞作で、宇佐見りんさんのデビュー作。「かか弁」という方言のような独特の文体で語られるのが特徴(最初とっつきにくいが段々慣れてくる)。19歳の浪人生うーちゃんは母親の「かか」が大好きだが、かかが離婚を機に暴れるようになり、2人の関係性が崩れていく。うーちゃんの逃げ場はSNSだけになるのだが…SNSに投稿される言葉が生々しくて非常にリアル。「現代の怪談を構成する要素のひとつに圏外があります」のところがまさに現代スマホ人を指している表現で響いた。
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壊れてしまった母(かか)を救うため、19歳の浪人生うーちゃんはある祈りを抱え熊野へ旅に出る。20歳の野性味あふれる感性で描き出す、痛切な愛と自立の物語。第56回文藝賞受賞作。(e-honより)