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好きというのじゃないけど、気になるんだよねえ、この人。あっち行ったりこっち行ったりが忙しいが、筋は1本通ってる。着地もわるくないよ。
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『ブルックリンの少女』が話題になった、ギヨーム・ミュッソの新刊。
『ダブルブッキング』という古典的なアクシデントを発端にしたストーリーが、まさかこういう方向に転がって行くとは、まるで予想外だった。
しかし、作中に登場する重要なモチーフである、『絵』。かなうならば実際に見てみたかった。画家が架空の人物なのが惜しい。傑作は読者の頭の中にしか存在しない……。
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心身共に疲れ切った元刑事の女性と、人間嫌いの劇作家が、手違いで同じ一軒家に暮らすことに…
ラブコメにもなりそうな設定ですが家に住んでいた「天才芸術家の死と謎」が絡み、謎を通して二人それぞれが抱える問題へと対峙していく…
パズルというより何層も違う絵が重なっているような印象でした。
「お試しミュッソ」感覚で気軽に読み始めたら最後に見えた画に心揺さぶられてしまった。
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サラッとおもしろいミステリー。
しかしタイトルのわりに、アパルトマンでの生活描写は少ないなあ…そこ読みたかったのに。そしてフランス女は強烈だなあw
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「死者の国」「ネプチューンの影」に続き、フレンチミステリーがまたも大当たり。
いや、すごいです。読むのがやめられなかった。
ラストの加速というか急カーブが。
意外な結末故に、これはミステリじゃないのかもとさえ一瞬思った。
フレンチミステリー、来てます。
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次々に新作が発表される翻訳ミステリ。純然たるミステリ・ファンではない。というより、根を詰める読書の合間の息抜きとしてミステリを読む。つまらないものは読みたくないのが人情。そんなとき頼りになるのが書評サイト。その中に七人の書評家がその月の推し本を紹介するコーナーがある。そこで票を集めたのがこれ。初めて読む作家だったが、一気に読んでしまった。リーダビリティの高さは保証する。
すぐにカッとなる元女性刑事と人嫌いの劇作家が繰り出す丁々発止のやりとりが、一時期ハリウッドで流行ったスクリューボール・コメディを思い出させる。出会いがこれだけ険悪だと、最後はハッピーエンドに終わるんだろうな、と誰でも想像がつく。問題はこれがミステリだということ。謎解きの第一は宝さがし。死んだ天才画家の遺作をみつけだせ、というもの。しかし、その謎は途中で解け、新たなミッションが。死んだはずの子は生きているのか。
そもそもの発端は、画家の遺産を管理する画廊オーナーが、パリにある画家の旧宅を貸し出したことにある。ネットの不具合で、元刑事のマデリンとアメリカ人の劇作家ガスパールにダブル・ブッキングが生じたのだ。どちらも一目でその家が気に入り、互いに譲らぬ二人。マデリンは画廊オーナーのもとを訪れ解決を求めるが、担当者は不在で目途が立たない。逆にオーナーから画家の遺作を探してもらえないかと提案される。
ショーン・ローレンツはビルの壁や地下鉄にスプレーで絵を描くペインターだったが、ある日目にした美女に一目惚れ。至る所にその姿を描くという挙に出る。それが話題を呼び、画廊オーナーの勧めもあって活動の場を美術界へと転ずる。やがてペネロープと結婚し、天才画家の名をほしいままにするが、ニューヨークで開かれる個展のために訪米中、母子が拉致され、妻の目の前で息子が殺されるという悲運に見舞われる。
画家はそれ以来絵筆をとることなく、身も心もぼろぼろになり、遂には路上で果てる。死の直前、画廊のオーナーに遺作があることを告げたのだが、それがどこにあるかは言わず、謎めいたメッセージだけを残していた。マデリンが依頼されたのは、その遺作を見つけることだった。彼女には世間をにぎわした事件を見事解決に導いた過去があったからだ。
愛する者と別れることの苦しみを、仏教では「愛別離苦」という。息子を失う悲しみ故に死ぬのはショーンだけではない。マデリンは愛した男との間に子ができず、男は妻のもとに去る。彼女が深く傷ついたのは、再会した男の傍に少年がいて、二人に子どもができたらつける筈だった名前で呼ばれていたことだ。自死を試みるも失敗し、精神科の厄介になり、今も回復できていない。マデリンは立ち直るため、自分の子を持つことを欲していた。
ガスパールには父を自殺に追い込んだ負い目があった。両親の離婚後、彼は母に引き取られた。父とは週に一度面会が許されていたが、父子は母の眼を盗んで何度も会っていた。自分の失言でそれを母にとがめられ、裁判所から接見禁止を言い渡され、父は自殺した。彼が人嫌いやアルコール中毒になった遠因はそこにあるのかもしれない。彼は息子を失ったことで死に至ったショーンに父を重ねてしまう。
表面上は激しくぶつかり合うが、二人には深く傷ついていて、精神的には死にかけているという共通点がある。これは、そんな二人が画家の遺作を探し、そこに隠されていた「ジュリアンは生きている」というメッセージを解読し、画家の息子の生死の確認を果たすことを通じて、自分たち自身が今いる「死」の状態から「再生」を果たす「死と再生」の物語でもあるのだ。
事実、文明の利器を嫌悪し、スマホもネットもいじらないガスパール。長髪に髭を伸ばし放題にし、ランバージャック・ジャケットに身を固めた男は、謎解きに入ると同時に別人に変わる。あれほど飲んでいた酒を断ち、髪を切り、髭を剃り、画家がアトリエに残したジャケットに着替え、スマホを買い、ネット検索まで始めるようになる。まあ、こうしないと、二人の主人公が代わる代わる視点を交代し、同時進行で事件を解いてゆく、この小説の構成が成立しないということもある。が、それにしてもこれを「再生」といわず何という。
この話は、明暗が対比的に扱われている。マデリンとガスパールが生きている現代は、喧嘩や言い争いは絶えないものの喜劇的な要素に満ちている。反対に、過去の事件に纏わるすべてが暗く惨たらしく悲劇的だ。小児虐待、育児放棄に対する報復、身を捨てて尽くした相手の手にした幸福に対する激しい憎悪。簡単には殺さず、精神的に痛めつける嗜虐的な犯人像、とどこまで行っても救いがない。
舞台をパリにとった前半はスクリューボール・コメディ・タッチ。過去のニューヨークの事件を追う後半は人間の心理の残酷さや複雑さを追求する、サイコ・スリラー・サスペンスのタッチ。すべては、次々と現れる意外な手がかりに導かれるように、作家の操る筆に身をゆだね、あれよあれよと結末に行き着く喜びを味わうことに尽きる。明―暗―明と過去の暗いトンネルを抜けて明るい現在に立ち戻ったときの解放感が心地よい。陰惨な過去があるからこそ再生を果たした今の明るさが引き立つ。騙されたと思って読んでほしい。
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主人公の一人、刑事のマデリンの描写が好きではなかった。同じ作者のブルックリンの少女はおもしろかったのに。
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これはミステリーなんだろうか? 犯罪があって、その真相を突き止める経緯を描く小説が、すべてミステリーと言うならばそうなのだろう。本書はミステリーとして商品化されているのだと思うが、特段ジャンル付けしなくても、もしかしたら純文学、一般小説としても読めるのではないだろうか。
賃貸仲介人のネットサイトの誤りにより、ダブルブッキングされてしまった二人の男女が、その建物の元の住人で所有者である画家の抱えていた秘密を、それぞれに、やがては共同で探り出そうという物語である。男は、アメリカ人劇作家。女は英国人元刑事。男は、世間との隔絶を好みずっと独りで生きてきた偏屈な性格で、この時代にスマホすら持っていない。女は刑事を辞め不妊治療の荒療治をしつつ匿名での体外受精を試みようと言うプランの渦中にある。
二人はそれぞれ全く別の道を歩いてきたそれぞれに独自の世界観から、死んだ画家の絵に取り憑かれその人生に興味を持つうちに、残された三枚の未発表の作品の存在に眼を止める。これは絵を探す物語なのかと思いきや、画家の一人息子が極めてエキセントリックな形で誘拐惨殺され、その場に立ち会わされた元妻という過去の事件の存在に驚愕する。男の子は様々な痕跡から死んだとされるが、その遺体は発見されていない。
画家の事件を追いかけて、二人はそれぞれの探索を重ね、時に照合し合う。極めて異例の探偵小説が始まる。それぞれの人生がなぜ画家に関わることになってゆくのか? 死んだ画家と誘拐されたその息子、元妻らが、彼らにどのような宿命を課してゆくのか、それが本作の読みどころである。もちろん、事件の真相という謎解き、そして思っていたこととは遥かに異なる真相。それでも心に負担となる病的な暴力や、曲げられてしまった犯罪者の心の歪みは、読者の心にも痛みを覚えさせるほど過酷である。そして何よりも過酷さを負担として味わうことになる二人の運命は思いがけぬ結末を迎える。
何よりもこの小説の素晴らしいところは物語性である。画家、その作品、過去の事件、それを追う現在の男と女。どれをとっても一級の語り口、超の付くオリジナリティなのである。親と子、個人史が産む個別としか言いようのない宿命論、男と女、生命を綴る生物としての人間。思わぬ思索に導かれる読書世界もである。
こういう作品を綴る作家は、何と1974年生まれだという。四十代半ばという若手作家ではないか。このような重厚な作品に出くわすと、世界の文学性に日本のほとんどの小説はともすると置いてゆかれるのではないかと思うくらい不安になる。
真に読書を愛する方、小説をストーリーではなく、その本質で読みたい方、軽い作品はもう懲り懲りという方に、質と娯楽性と人間哲学とそれぞれに担保してくれる本書を、是非お薦めしたい。
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劇作家の男性がパリのアパートを一時的に借りる予定にしていたら、手違いで元刑事の女性も同じアパートを同時期に借りていた。死んだ有名な画家が住んでいたアパート。画商から頼まれて画家の遺したはずの三枚の絵を探す。
とってもスリリングだった。一見ラブロマンス風だったけれど、ミステリー色が強い。画家の死の謎、画家の息子の死の謎、その他の人の死の謎を解くプラス絵の行方を追う。真相も二転三転してワクワクする。
翻訳ミステリー大賞シンジケートで、書評七福神の11月のベストに7人中5人がベストに挙げたのは頷ける。
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別な目的でひとときを過ごすため、パリのアパルトマンを予約してやってきた二人が鉢合わせ。
そこは天才画家の残した家だった…
元刑事のマデリンはイギリス人で、ある目的の途上、心身を癒すために。
アメリカ人の人気劇作家のガスパールは、仕事の締め切りで缶詰めになるために、やってきた。
ところが、手違いでダブルブッキング。
家が気に入った二人は互いに譲らず、喧嘩しながらシェアすることになります。
そこは1年前に急死した画家ショーン・ローレンツの家で、調度も作品もまだそのまま。
しかも、どこかに未発見の遺作があるという謎を解くように、オーナーから持ち掛けられる。
画家の作風や人生、建物の雰囲気も魅力的で、いかにもパリ。
スペインのマドリードへ、ニューヨークへと移動しながら事態は急転し、登場人物それぞれが少しずつ違う事情を見せ始める。
互いに心に傷を持ち、性格も価値観も違うマデリンとガスパールだったが?
豊かな物語性のある背景で、しかも、どう転ぶか全くわからない面白さ。
流転する人生で恨みが発生する怖さ、そして最大の悲劇が、実は‥
幸福を感じさせる結末に。
ミステリの枠に収まらないような、満足な読み応えでした。
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途中まではなかなか入り込めなくて途中脱落するかも…と思いながら辛抱して読みました。
後半、謎が解かれていくあたりからようやく面白味が増してきてラストまではノンストップで読み切ってしまいました。
謎解きに入るまでが長い…
よくあるミステリーのようにその場で事件が起きて解決していくわけではなく、すでに完結した出来事に対してアクションをおこすので、ストーリーに起承のインパクトが足りないな〜というのが個人的な感想です。
癖の強いフランス人男性と我の強いイギリス人女性のテンションの高い喧嘩を聞いてるのに疲れました笑
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ジェットコースター級に読者を引き回してくれた「ブルックリンの少女」の作者だけあって、相変わらずの筆力。ニューヨークとパリが舞台になるところは共通だけど、今回の主人公2人は全くの「巻き込まれ」タイプ。でも動機付けもしっかりしてたし、多少の2時間ドラマ的ご都合主義も気にならず。最後の着地も、ある意味映像的でした。
ブルックリンと比較すると、気になるセリフとかパリにまつわるエピソードが少なめなのは残念。
子供がキーになるのは前作と同じ。
この著者の作品は読み続けたいな。
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バチバチのミステリーかと思って読み進めたけど、最後とても温まる。ミステリーの内容、種明かしよりも、親子、家族観に重きが置かれてた印象。月と六ペンスみたいなのを想像してたので少しイメージと違ったけど、おもしろかった。
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サスペンスミステリー。
日本とは常識が違うので、なかなか読み進められなかったが展開も早く読後感もよかった。
父性母性の話と絡めて、読みごたえのある作品だった。
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40代半ばの人間嫌いな戯曲作家ガスパールと、30代半ばの精神不安定な元刑事マデリンは、クリスマスをパリで過ごすためにそれぞれ、とあるアパルトマンを借りた。そこはパリ六区にある閑静なちょっとおしゃれな一軒家。かつてそこはある人気画家の家だった。すぐに気に入る二人。
しかし、二人はその一軒家で鉢合わせとなってしまった。不動産屋の手続きミスである。
最悪の出会い!それに価値観も全く相容れない二人。
だが、その家の持ち主だった人気画家には暗く悲惨な過去があり、またその画家には世に知られない最後の作品があるという。最悪の出会いながら、二人はそれらの謎に自ずと首を突っ込んでいくことに…。
まあなかなか筋が良くできていて面白かったです。
途中、少し冗長過ぎるのではと思えてだれたところもあったのですが、後半はぶっちぎりのハラハラドキドキ展開で、ラストもこのストーリーとしてはこれが最高だろうという結末だったので、満足はできましたよ。
後半のぶっちぎりの展開の中でも間を持たせた緩急自在な記述は、きっと読者にフラストレーションを溜めるに溜める手法なんですよね。ちょっとイライラしました。(笑)このあたりの引っ張る術は長けているようですね。
ちょっと偶然性の要素が強い部分とか、そんな展開強引だろという部分もあるにはありましたが…。(笑)
ボーイミーツガールとか、宝探しとか、サイコキラーとか、パリ・マドリード・ニューヨークが舞台だとか、アップダウンストーリーとか、ドラマの構成として楽しめる要素がてんこ盛りだったので、将来はサスペンス映画化でも狙っているのかな?(笑)
サイコ的なおどろおどろしいところはちょっと苦手でしたが。
物語に出てくるちょっとした小物類や飲食類、実際の人物、それに有名人の発した金言?などは、ほおっと唸らせるようなものもあって、この物語に彩りを添えていますね。訳のせいなのか、ワインネタの下りに???という箇所もあるにはあったんですけどね…。ほんまにフランス人か?(笑)
ガスパールとマデリンの人物設計は面白かったです。
二人とも暗い過去があって、でも、現実や将来への展望や価値観は大きく異なっていて、それでも喧嘩を繰り返しながらも前に突き進んでいくところなどはまさに映画向きですね。
最後の方の二人の間の騙しのところが本書の最大の謎の解き明かしだったと思いますが、なるほどという思いも感じたり、フォーリンラヴな男の情けなさが微笑ましくもあったんですが、ちょっと無理筋っぽい流れでもあったので、ミステリーとしてはちょっと複雑な感覚がありましたね。
しかし、それもこれもすべてが二人の再生でもあった大団円に繋がると考えたら物語としてはうまい具合に二人の個性が絡み合っていたんだなと思いました。
物語の力強さで魅せるミステリー作品です。今後の映像化にも期待!!