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もしあなたやあなたの家族が認知症になったら、どんな風に受け止めれば良いのか。この本は、そんな疑問や不安をもった人に答えてくれる「認知症」についてのライトな入門書である。
認知症のお兄さんを亡くし、そのことをきっかけに認知症と関わりを持つようになったノンフィクション作家の著者が、認知症になった当事者や、医療・介護関係者にインタビューをして得た知見をまとめている。
一般の方がどれだけ「認知症」について知っているかはわからないが、著者が言うように「認知症になったら2・3年で何もわからなくなり、やがて寝たきりになって死んでいく」や「家族に迷惑をかけ、やがて糞便を垂れ流すようになり死ぬ」という『有吉佐和子さんの「恍惚の人」的な認知症感』だけを信じているなら、そんなことは無いのでこの本を読んで少しでも知ってもらえたら良いと思う。
認知症の人はその程度も状態も皆違う。
認知症と診断されて22年経っても、自らの内面を冷静に分析し、外国でその内容を講演できる人もいる。
会った人の顔が覚えられない人もいれば、顔は覚えているが鍵や財布を忘れる人もいる。半年前のことをしっかり覚えているのに、空間認識に障害があり着替えに困る人もいる。道に迷うこともあるがタブレットを駆使したり人に尋ねながら目的地にたどり着き、講演活動をする人もいる。精緻な水彩画の展覧会を開く人もいる。言ってみれば脳の個性なので、十人十色である。
それに重度の認知症になっても、やっぱり物忘れをするのが自分でも嫌だし怖いと思っている、ということも知ってほしい。
これから家族の介護をしようとしている方、認知症について何も知らない人、初めて介護の仕事に就こうしている方々には、ボリュームといい内容といい、ちょうど良い入門書である。
リハビリ職として医療介護の現場に9年ほど従事した私個人の感想としては、知識としては少し物足りなく感じた。
ただ、後見人制度の実際や、認知症保険について知れたのは良かった。お金が動く制度やシステムは、よくよく調べてから使わないと、えらい目に合うので注意したい。