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▼あらすじ
天使と悪魔、そして彼らに翻弄される人間の戦いを描いた大ヒットシリーズ『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)』。その大ファンにして担当編集者の佐原は、ある晩、見知らぬベッドで目を覚ました。
「ようこそ、我が花嫁」
――そう笑う男は、まぎれもなくデウマキに登場する佐原の推しキャラ、悪魔の大貴族・コルレオニスだった!!
この世の災厄を産む花嫁として作品世界に召喚されてしまった佐原は、その日から憧れの推しに夜ごと求められ…!?
***
ストーリーの完全度:非常に高い
トーン:せつない・あまあま・ダーク・シリアス(中)
エロ度:非常に高い
萌え度:非常に高い
総合評価:★5.0
2020年初読みのBL小説でしたが、まさか初っ端からこんな素晴らしい作品に出逢えるとは…!良い意味で予想を裏切られた作品でした。
“小説の世界に召喚されて、推しキャラと種付けSEX!?”という帯の文面の軽さ、そして攻めがまさかの二次元キャラ(?)というトンデモ設定。
帯・表紙・タイトル・あらすじ…どれを取ってもシリアス要素が感じられなかったので、完全に気を抜いてラノベを読むような感覚で読み始めたら予想を遥かに超えるスケールの大きさと卓越した文章力、そしてお話の完成度の高さに度肝を抜かれてしまいました。
エロ度はかなり高めですが、だからと言って決してエロメインのお話ではなく、ストーリーも設定も練りに練られているのでかなり読み応えがあります。脇キャラが個性派ぞろいなのも魅力的。
また、ストーリー構成も上手くて読者を飽きさせない作りになっていると思います。
特に面白いと思ったのが本編の途中途中で挟まれるコルレオニスとミセリアの在りし日のエピソード。このエピソード、作品の世界に登場する『機械仕掛けの神』(以下、デウマキ)という小説の一部を紹介するような形で語られるのですが、これだけでも十分面白くて、私もデウマキを読んでみたくなるほど…。それくらい、デウマキの設定もしっかり作り上げられています。
ただ、若かりし頃のコルレオニスと本編のコルレオニスって性格も喋り方も全然違うので、最初はちょっと吃驚しましたね。デウマキのコルレオニスが20代くらいなら、本編のコルレオニスは30代後半といったところでしょうか?
個人的には本編の落ち着き払ったコルレオニスが大変好みで、佐原に対してあまあまなのも彼自身が意外と甘えん坊なのも非常にツボだったのですが、過去に一番大切な人(ミセリア)を亡くしているからこそ、佐原へのその執着っぷりがちょっと病的にも見えるんですよね。正常に見えるんだけど、どこか壊れてるというか、静かに狂ってるというか。
そしてコルレオニスにとっての最愛はミセリアであって佐原ではないと思うと切なくて、佐原自身もそれを分かっているのがまた切ない。
ただ、面白い事に佐原にとっての最愛もまた違うんです。佐原にとっての最愛はデウマキに登場するコルレオニスであって、目の前のコルレオニスじゃない。コルレオニスがそれを指摘するシーンで思わずハッとさせられました。
“小説の世界に召喚されて、推しキャラと種付けSEX!?”なんて軽い感じの雰囲気じゃ全然ないし、肝心な結婚式も血みどろフィーバーだしで幸福な結婚とは一体…??って感じだったけど、それ故に最後の方の展開は衝撃続きでページをめくる手が止められないほど面白かったです。
結局、佐原はミセリアの生まれ変わりで間違いないのかな。個人的には佐原は佐原であってミセリアとは何の関係もないってオチの方がどちらかと言えば嬉しかったのですが、それはそれでコルレオニスがちょっと可哀想かな…?(^^;)
最終的にコルレオニスが佐原を名前で呼ぶようになってくれたのと、佐原が何者であろうと構わないと言ってくれたのは嬉しかったですね。コルレオニスのこの言葉を、読者である私も信じたいと思いました。
久々に重厚感のある作品を読めて大満足です。エロもストーリーもどっちもしっかり楽しみたい方にはうってつけの作品だと思います。特に執着攻めとダークファンタジーものがお好きな方には自信を持ってお勧め出来る作品です。
巻末に載っている香坂先生描き下ろしのおまけ漫画も面白いので必見です!続編が出たら絶対買います〜!