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本書は、日銀の金融政策を現在から振り返って評価するとともに、政治との距離関係もわかりやすく大胆に書いている。「政治・金融の総合ストーリー」とも言える。
本書を読んで、経済と金融政策は実に奥深いものだと感じたが、そもそもヒトが経済をコントロール出来るものなのだろうかとも思った。
本書は「経済」の話とともに「人事」の機微を取り上げているために、小生のようなパンピーにも政治が見えやすい。とりわけ90年代2000年代のリアルタイムで見知っていた日銀の政策の狙いと失敗がわかりやすい解説で語られていることは実に興味深く読めた。
日銀の金融政策の歴史を、総裁ごとに検証すると、現在の黒田日銀の異様さがよくわかる。よく他の専門家が受け入れているものだと呆れてしまう。
後半の議論はちょっとわかりにくく感じた。もう少し「通訳・整理」してほしい。
しかし本書を読んで思ったのだが、「失敗を認めない組織」が「結果オーライで成功」する事はないのではないかとの懸念を持つ。日銀はかつての日本陸軍と同じ組織の宿痾の呪縛に囚われているようにも思えた。
本書は、なかなかわかりにくい日銀の金融政策の経過をやさしくコンパクトにまとめた良書である。