紙の本
かなりスリラーより
2021/02/23 04:12
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
続編が出たので、積読の山から出してきて読んでみた。
このラストが「衝撃的!」だそうなので・・・「この続きはーっ!」ってところで次のあてがないと寂しいもんね。
これまたスウェーデンミステリですが、読むのは初めて。警部ヨーナ・リンナシリーズの4作目だけど(3作目まではハヤカワで出ているが、現在は絶賛絶版中)、ここから読み始めても大丈夫ということなので。
とりあえず、表紙からただごとではなさそうなイメージ。
ストックホルム郊外、線路沿いで保護された男性は13年前に行方不明となっていた人物だった。 同時に行方不明になっている妹はまだ“砂男”に軟禁されているという。
当時、捜査にあたった国家警察のヨーナ・リンナ警部は、その後逮捕されたシリアルキラー・ユレックの犯行ではないかと感じていたが、証拠がなかったため行方不明として処理されたのだ。
兄が帰ってきたことで捜査は再開、妹を探し出すため、公安警察のサーガ・バウエルが閉鎖病棟に収容されているユレックから話を聞き出そうと潜入捜査を開始する・・・。
細かめの章立てでなかなかキャラの背景が見えず、序盤は話を把握するのにちょっと骨を折る。 でも把握できてからは加速、下巻は早かった。
ユレックの存在はハンニバル・レクターっぽいよなぁ、というのは裏表紙あらすじを見たときから思っていたが・・・悪魔のように何でもお見通しな感じが「北欧ミステリはヘニング・マンケルから」な自分にはちょっとしっくりこない。 このデモーニッシュ感、<刑事ファビアン・リスク>やフランスのスリラー作家フランク・ティリエなんかを思い出させる。
ミステリというよりはスリラーなのか? 人が死に過ぎる!
そう考えると『ミレニアム』三部作やピエール・ルメートルはミステリとスリラーをうまいこといいバランスで融合させているから全世界ベストセラーになったんだなぁ、と。
ヨーナ・リンナも主役としてはキャラが薄いが、ユレックの事件はヨーナにとっても重要だったという部分で厚みが出ていた。
そのおかげで「衝撃のラスト!」はすごく納得のいくものだった・・・1作目から読んでこその衝撃なんだろうなぁ、きっと。
移民に寛容と言われるスウェーデンだけど、問題はないわけじゃないという悲しさはあるけど、「意識していない自分が犯した罪」を突然突きつけられるのと、「自分の罪を常に意識して生き続ける」のとどちらがつらいのか、みたいな感覚は世界共通なのか。
これで安心して次の『つけ狙う者』に入れるけど・・・一作目から読んだほうがいいかしら。
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ある激しい雪の夜、一人の男がストックホルム郊外の鉄道線路沿いで保護された。それは、ベストセラー作家レイダルの13年前に行方不明になった息子ミカエルだった。彼は、自分と妹フェリシアを誘拐した人物を「砂男」と呼んだ――。当時、国家警察のヨーナ警部は捜査にあたったが、それがきっかけで彼の人生は一変していた。相棒サムエルとユレックという男を逮捕。判決後、ユレックは不吉な言葉を吐き、閉鎖病棟に収容される。そこへ妹の監禁場所を知るため、公安警察のサーガが潜入捜査を開始する。
やはり「交霊」から直結していたシリーズ第四作。まさかまさかの潜入捜査が始まった。
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連続してスウェーデン・ミステリに取り組む。
「このヨーナ・リンナ警部シリーズは、当初より8作完結のシリーズで設計され、現にスウェーデンでは、最後まで書き継がれている様子だが、邦訳はこの後『契約』『交霊』の三作でストップしている。版元が8作までやり切るなら読者としてもつきあう気になるのだが、途中で投げ出されているのではどうにもならないね。残念!」
とはヨーナ・リンナのシリーズ第一作『催眠』のレビューで自分が書いたもの。ファンはハヤカワ文庫の三作から6年間待たされ、今扶桑社ミステリで4作目を手に取ることができたものである。二作目、三作目を吹っ飛ばして、巷で評判の高いこの四作目に取りかかると、『催眠』も悪くなかったものの、催眠を使う医師とのダブル・キャストによりヨーナ・リンナという癖の強い刑事の特徴があまり出ていなかった。
本書も、サーガ・パウエルという潜入捜査官とのダブル・キャストとは言え、ヨーナにとって因縁の事件がクローズアップされるとあって、シリーズ佳境という言葉が似合いそうなクライマックス感がたっぷりなのだ。おまけにサーガも凄く良い。
それ以上に閉鎖病棟に収容されるユレック・ヴァルテルというシリアル・キラーが、かのハンニバル・レクターを想起させるサイコぶりで、小説世界を圧倒する。閉鎖病棟のシーンは一秒一秒(一頁一頁?)が息詰まる緊張感に満ちており、そこにややこしい変態新人医師が絡んでくることもあって、病棟全体が予測不能の時限爆弾の存在となる。
一方で宇宙開発時代のソ連、またその支配下にあったカザフスタン、まだ移民を受け入れる体制になかったスウェーデンであれ、そこに亡命してきた移民の姿など、闇の歴史にまで遡る物語の深度と言い、作品世界の重層構造そのものにも驚かされる。
意味深げなラストシーンも含めて、非常に人気のあるシリーズであることがわかる全体像となっている。是非、継続して翻訳を願いたいところだ。
覆面作家であった著者は、その後、二人の別ジャンル作家夫婦によるものであることが判明しており、その筆力は本書でも相当に証明されている。今回のパートナーである美女サーガは、二作目から登場するらしい。遡って読まねばなるまいな。
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かつて連続誘拐殺人事件の被害者として,亡くなったと思われていた青年ミカエルが発見された。ミカエルの話では,一緒に誘拐された妹フェリシアもまた,生きたまま囚われているらしい。一方,逮捕された犯人が収容された閉鎖病棟では,不穏な空気が漂っていた。
シリーズ1作目の「催眠」しか読んでないんですが,4作目だそうです。「催眠」ではヨーナ警部よりも催眠をかける医師エリックが主人公かしらという感じでしたが,「砂男」ではヨーナが前面に出てきて,ヨーナの過去が明らかになります。思ったよりハードな過去だった。。犯人であるところのユレックがとにかく怖すぎる。「あいつと一言でも話すと,操られて自殺するか誰か殺すかすることになるぞ」とか。どんなサイコパスですか。
ヨーナがユレックを警戒するのはよくわかるのですが,だからって誰か代わりに閉鎖病棟に送り込むぜっていう潜入捜査はひどい。。サーガは無事にユレックから情報を引き出せるのか?しかもフェリシアの命はあと数日の猶予しかないかもしれないのだ!
という感じで,下巻へ続く。
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シリーズもの4作目。初めて読む。上巻はあらすじのみ。
13年前行方不明になった男性が保護される。彼は双子で、妹と一緒にシリアルキラーに誘拐されたと思われる。その犯人は隔離病棟に収容されているが、妹の居場所を言いそうにない。当時捜査していたヨーナは、自分の妻子を案じ、事故死したように見せかけていた。再び彼は捜査に乗り出すが、潜入捜査として、女性捜査員サーガを送り込む。