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オーケストラ 知りたかったことのすべて みんなのレビュー
- クリスチャン・メルラン (著), 藤本優子 (訳)
- 税込価格:6,600円(60pt)
- 出版社:みすず書房
- 発売日:2020/02/19
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紙の本
ソ連・ロシアにはなぜ管楽器の名演奏家を輩出しないのか?
2020/07/16 15:55
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで管弦楽団、オーケストラについて、「内幕」暴露的な著作は多かった。楽団員の目から見たオーケストラという共同体の人間関係、各演奏者について、エピソードを含め、内部関係者しか知り得ない光景を垣間見ることができ、音楽関係の著作の確立したジャンルになっているといってよいだろう。中でも、外から見るとあたかも独裁者のようにオーケストラを睥睨している(と思われる)巨匠と呼ばれる指揮者との関係は、その力関係・人間臭さなどがわかって最も面白く読めるテーマであった。
本書もそのような著作のひとつではあるが、博覧強記の仏人著者が世界のオーケストラや楽団員や指揮者のあらゆる情報を蒐集し満載した600頁の大著の「事典」である。中でも第二部「構造化された共同体」では、日頃あまり気にならない、打楽器やピアノまで含めて各楽器についてエピソードと各オーケストラの名ソリストを紹介するところは、いかに著者がオーケストラを知り尽くしているかを示すものである。例えば、演奏中ほぼ弾きつづけているヴァイオリン奏者と演奏機会の少ないハープなどの楽器の演奏者の給料は同じなのか、とかティンパニの役割とは、といった疑問を取り上げているところがそうである。また、なぜ指揮者が変わるとオーケストラの音も変わるのか、といった古典的な問題にも答えている。
ただ、著作者が仏人であるためか、仏オーケストラとそのメンバーの記述が中心となることは仕方がないところか。最後に出てくるセミョン・ビシュコフとパリ管の関係などはその好例である。といっても英米独オーケストラも同様の水準であつかうとなると、とても一冊には収まらないだろうが。日本のオーケストラについは、日本人による著作を期待するしかない。
また、一番興味深い指揮者とのエピソードも、フルトヴェングラー、カラヤン、バーンスタインといった往年の巨匠については言い尽くされた感があるのだろうか、また、21世紀になったからか、扱いは少なく、現代活躍中の指揮者が中心である。
仏系オーケストラが中心なので、旧ソ連・ロシアのオーケストラの扱いは少なくなるが、どういうわけか管楽器の名演奏家が全く登場しない。筆者のリサーチ不足か、それとも著者の眼鏡にかなう名演奏家がいないのか?
ヴァイオリン・チェロといった弦楽器、また、ピアノには数多くのヴィオルトゥオーゾ演奏家がいるのにそもそも評価に値する演奏家がいないのか?このことと関係するのか、ソ連・ロシア作曲家の管楽器のための協奏曲・室内楽を聞いたことがない。フルート、クラリネットなどの管楽器のヴィオルトゥオーソがいないため、管楽器ソロ、また、アンサンブルの作品がひじょうに少ないということなのか。例えば、ショスタコーヴィチの作品を調べたところ、クラリネットとフルートのための作品がわずかに1曲、しかも編曲作品である。また、プロコフィエフにはフルート・ソナタがあるが、ヴァイオリンのために編曲された作品が有名。東西冷戦下時代には、西側音楽、例えばウェーベルン、ブーレーズ、リゲティ、メシアンなどの現代作曲家前衛の作品の流入が禁止されていたことも一因のようだ。20世紀後半になってソ連の現代作曲家、例えばデニソフやグヴァイドゥーリナは、管楽器のための作品も書いていたが、これらは西側の管楽器の名演奏家のための作品であった。
フランス・コンセルヴァトワールの管楽器卒業試験課題曲には有名作曲家が書いた作品も多い。演奏技巧と音楽性が要求される名品も多く、これがフランスで多くの管楽器ヴィオルトゥオーゾを輩出していることにつながっているだろう。
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