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偏りのないサイコロを振って1が出る確率は1/6である。このことは、特に数学が好きでなくても無意識に理解しているであろう。
しかし、これは具体的に何を意味しているであろうか。正確に6回に1回1が出ることを意味しないのは良く理解されている通りである。あくまでも無限に試行を続けたときに、その割合に近づいていくだけだ。
さらに思考実験をすると、ある特別な振り方をすると1がより多く出るようにできるかもしれない。つまり、物理的な条件が全て既知であれば、必ず1を出す振り方が存在するかもしれない。その場合、1/6という確率は間違っていることになる。
そのように考えていくと、確率というものは純粋に数学的な操作と、物理的な現実の説明との間に無数の解釈があり、真の意味についての考察は哲学的なものになっていく。
本書は、頻度的/傾向的、客観的/主観的など、様々な角度から異なる解釈を説明する。そして、最後には、情報理論や量子力学との関連も登場して、数学的演繹的な思考と、物理学的帰納的な思考の間を行き来する。
もちろん、現在のところ絶対的な真理は知られておらず、おそらくそれが解き明かされることはないであろう。確率を哲学する面白さは永遠に続いていきそうである。