紙の本
飲むだけが酒の楽しみ方ではない
2021/05/05 21:45
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投稿者:想井兼人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人それぞれに酒の楽しみ方はある。
ただ飲むだけも良い。
でも、それだけだろうか。
馴染みの酒場を持つ人がいるかも知れない。
そこに行くことが、すでに楽しみとなる。
それならば馴染みの酒場の歴史を知ることもまた楽しみになるはず。
その酒場がある街そのものを探求することも良い。
本書は京都を舞台としたそんな試行の1冊。
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「めし屋」という辻与一の随筆には、京都において酒を飲む場所は、めし屋以外にはどこもなかったと記載がある。この記載を出発点として江戸の茶屋から、カフエー、洋食文化を当時を生きた人々の日記等を参照しながら、京都の都市の変容をたどる。昭和三十年代の木屋町の誕生など歓楽街の発展も、住んでいる身としては読んでいて興味深かった。参考文献に戦後の職業別電話番号簿としては最初の昭和三十八年の『京都市職業別電話番号簿』、住宅地図としては最初の昭和31年発行の情報なども知れてよかった。
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この本を読んで得た知識が何かに役立つのか、全くわからないが興味深く、「会館」の果たしてきた役割とトリコワラされている現状に一つの文化がここで消えるのかなと思う。
日本酒バーと称される酒場では、灘の酒が好まれていた。東京の文人たちは、菊正宗をことさらに好んだらしいことは、親戚として嬉しいエピソード。
そして、「たつみ」には一度足を運んでみたい。
以下、備忘録。
お茶屋と料理屋は機能分化し、花街の「茶屋酒」と料理屋の酒席とは、谷崎の言葉を借りるならば、画然と区別されていた。
腰掛料理屋と呼ばれる店を「はしご」酒していた昭和初期は、灘の酒が好まれていた。
洋食屋から始まり、文化サロンと化していたカフエから、色町洋食、歓楽街の誕生と繋がる。
盛り場とは、中心商店街と歓楽街に分類され、歓楽街は娯楽街と飲み屋街に分類される。
風俗営業とは、男女の身体的な接触をともなう「ダンス」と「接待(客席で客の相手をする)」、「遊興(接待や歌舞音曲によって客に享楽的な雰囲気を楽しませる)」を含む業態。
しのぶ会館に始まる「クラブバーの進出は「会館式」の大規模なものが増えた。
会館の分布は、西木屋町と祇園東に示されるように、繁華街と花街、交通の結節点に共存する。
これは京都が戦火を逃れるたため、既存の空間を分割して利用するという発想。
会館は都市の無意識を映し出しいるようにもにみえなくもない。
静を経営している女性が正宗ホールの建物を買い取って、戦後静として営業再開した。
柳小路は、柳本さんの小路だった。