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生命の発生や成長のメカニズム,受精や細胞,遺伝子の働き,ふんわり知ったつもりになっていたことの誤りや厳密な事実を確認させてくれる.
専門用語ばかりなのにどこか読めてしまう不思議な本.
イマイチ,人間の生命とは,細胞とは,生物の進化とはというのをずばりと言えないのは自分の理解力と表現力のなさ二よるものもあるけど,境界がはっきりしない生命の複雑さによるところもあるんだろう
あと京大の山中教授も登場.こういう貢献をしたのか〜
こりゃすごいわ
人工培養した臓器や手足が怪我や病気の治療に使われる未来はまだまだ遠いと思うけど,それでも細胞の再プログラム,時間を遡った役割の再定義は可能で特定の臓器をそのまま入れ替える大掛かりなものでなければ既に実現できそうな実験結果がいくつもある.A5和牛の体細胞からロースの細胞を作って培養してそれを食す未来は本当にあり得るなと感じた.
ゲノム編集で生まれてくる人を簡単にデザインできてしまう時代がすぐそこまできている。倫理的、道徳的懸念が壁になっているだけで。
しかし生まれてくる人間にすら、人間が自然の上に立った、科学的介入をして、資本主義社会的、競争的優位を持たせようという考えは非常に愚かというか。あるがままを受け入れる、ということが出来ず。周囲との競争を意識させる、同調的行為を子孫に直接的に働きかける潔くない感じや胚から人体への発達という複雑形のプロセスに介入し未知のリスクをもたらすブラックスワン的な愚かさ
"生物という用語をそれぞれで個別の垂直遺伝したゲノムを持つという従来の見方による意味ではなく、もっと広い共同体ベースの、あるいは体系的な意味を持つ言葉として考える必要がありそうだ"
京大の哲学の先生も同じようなこと言ってた気がする。
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「全ての細胞は細胞から」
ここ四十億年の歴史は細胞分裂(遺伝子の複製)の歴史といえる。
遺伝子複製における一大イベントが有性生殖
物語を通して理解しようとすることで誤った認識を抱いてしまう
DNAを持つ生物は四進数言語でプログラミングされている
"ヒトゲノムの1/3は本質的にキノコのゲノムと同じ"
受精卵はその後の成長に欠かせない設計図を持っているという例えすら厳密には誤った認識らしい.(受精卵の周囲,人間だったら着床先である子宮壁などから影響を受ける)
宗教は現実的な疑問を答えの出しようにない観念論に落とし込み,真実への理解を妨げる.
科学による人間誕生の謎の解明まで,子供が授かることは神に委ねられた聖なることで,その過程であるセックスは淫らで忌むべき行為だった.
→この価値観,完全に人類に根付いているよな.特にセックス.
体外受精は科学研究に利用可能な胚を手に入れる手段でもあった.
20世期初頭からでこれだけ生命の誕生に関する研究が進んでいるとは思わなかった,「すばらしい新世界」が描かれたのもこういう背景があったからかということを知る
フランケンシュタインは創造主��能力を模倣、神へ挑戦した人が恐ろしい結果を招いた という文脈もあるのか
ミトコンドリアは23組みの染色体とは独立した遺伝子を持つ、母親から受け継ぐ細胞内の小器官。
これが引き起こす機能不全などはいわゆる遺伝病といえる
ゲノム編集、CRISPR
中国で生まれた双子のデザイナーベイビーはHIV耐性をつけるためのゲノム編集が施された。
これは倫理的バッシングを世界中から受けた
"生物の個体性とそのゲノムの間に本質的な関連はない。"
これは筆者の大きな主張の一つだろう
人ってなんだろう。ゲノムというコードで生成された細胞群と、それに影響を及ぼす、共生する細菌や発達環境と言った外部・社会・環境的要因の複合体?
カツオノエボシ
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胚発生
ゲノムが意味を持つには
子宮内膜からの位置情報、周囲の細胞からの情報に依存。
微生物共生者は体重のうち1~2キロ分。
細胞再プログラム 山中伸弥
脳のオルガノイド=ミニ脳 筆者の肩の肉から作成
マトリゲル
タンパク質のゲルでニューロン培養 笹井芳樹
細胞が分化した状態から 幹細胞へ戻ることは可能
ヒトの作り方
ヒトの肝芽をマウスに移植し成長 武部貴則
マウスの人工配偶子は見たところ正常なマウスを生み出している。
ヒトの製造が不可能な理由はない。
ユニベビー
ひとりの体細胞から卵子と精子を作り、子供を作る。
受精児に染色体が組み替えられるのでクローンではない。
多重親。3人以上の遺伝子を混ぜる。
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研究機関で肩付近の細胞を基に小型脳組織を培養したサイエンスライターの著者が、シャーレで育つ別の自分を見て感じたバイオ技術全般への思いを語る一冊。
培養脳のアイデンティティについてが哲学的に語られるものと書名からは考えていましたが、この経験で感化された著者がSFや実際の技術を紹介し感想を述べる内容でした。
そのために主題よりも脱線が多いのですが、人の語りで今のバイオ技術について広く浅く知るには良いかもしれません。
オリジナルのコピーであるクローンとは違い、品質の良い人体を設定して培養・生産できる時代はいずれやってくるでしょう。
生物学の研究には夢があり全面的に賛同しますが、生き物の体と遺伝子がブラックボックスの段階では改変に慎重になったほうが良い気がします。
長い歴史と生物学的理由があって今の生物種に落ち着いているはずなので、しばらくは机上と実験室での探索に留めるべきと考えました。
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ブタの心臓をヒトに移植したニュースを聞いて、タイムリーな本を読んでるわ、と思った。
この本がかかれた時点では、まだだったけれど、現実になったのだなぁと。
今までの研究の流れが分かりやすく書かれており、読みやすかった。
絵空事だった世界がどんどん現実になり、これからも今では考えられないようなことが実現されていくんだろうなと思った。
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「科学道100冊2021」の1冊。
原題は"How to Grow a Human---Adventures in Who We Are and How We Are Made"。「ヒトの育て方---私たちが何者であり、どのように作られるのか」といったところだろうか。
超最先端のバイオテクノロジーは、将来的に人間のありかたを変えるのか?
ゲノム編集、クローニング、脳、生殖医療といったトピックから、技術の発展と社会との関わりを追う。
発端は、著者自身の腕の細胞から作製された脳オルガノイドである。「ミニ脳」とも呼ばれているが、ニューロンの塊で、ネットワークを作り、互いに信号を送り合ってもいる。信号を送り合っているとするならば、何らかの「意識」があると考えてもよいのか。「意識」があるとすれば、それは「誰」なのか?
著者から作製されたが、もちろん、著者自身ではない。ではそれは一体「何者」なのだろう?
最先端の生命科学には、実はそうした倫理的な問題が潜在的に数多く存在する。
やろうとすればできるが、しかしそれは倫理的にやってもよいことなのか。
その議論が十分でないままに、グレーゾーンを抱えながら、技術が発展しつつある。
そんな状況を紹介する本である。
いささかSFめいており、ホラーのようでもあるが、現実である。
元をたどれば、身体の一部である細胞を培養することが可能になったときにそれは始まっていたのかもしれない。
体外に取り出された細胞の培養に成功すれば、ときにそれは持ち主が亡くなった後も増え続ける。そしてiPS細胞のように、さまざまなものに分化する幹細胞にすることができれば、そこから身体の各部や、個体そのものを作ることもできる。それは一体「誰」なのか。
生殖にも技術は入り込む。体外受精は始まった当初は懐疑的に見る向きも少なくなかった(「試験管ベビー」)が、今ではそれほど珍しくはない。
技術を使うとき、そこには何らかの介入がある。受精能力が高い「質」のよい卵子や精子を選ぶことは、目的からして当然のことだろうが、けれども「質」とは何だろうか?疾患のない胚を選択することが許されるなら、疾患になる可能性がある胚を除くことは許されるのか? 疾患になるかもしれないが、ならないかもしれない。線引きは誰がどうするのか、そして疾患になるからといって「抹殺」することは本当に「正しい」のか。
さらには、好ましい形質を選ぶ(=デザイナーベビー)ことが可能ならば、やはりそれを選ぼうと思う者は出てくるだろう。
社会は本当に、それに向き合う準備ができているのだろうか。