紙の本
面白かったです
2021/11/19 11:30
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投稿者:iha - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学生たちの物語五編です。逆境にもめげず、子供達なりの答えを出し進んでゆくという、非常に前向きで道徳的な話でした。
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お気に入りは「逆ソクラテス」「非オプティマス」。逆~の『僕は、そうは、思わない』って台詞響きますね。自分が正しいと生徒を決めつける先生に腹が立ちましたが、その台詞でスカッとしました。非~のマウントを取る騎士人と取られる福生の関係が、実は逆だったと解った時の福生が、ラスト何と言ったかが気になる!
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「逆ソクラテス」
伊坂幸太郎史上、最高の読後感。デビュー20年目の真っ向勝負!
無上の短編5編(書き下ろし3編を含む)を収録。収録作は「逆ソクラテス」「スロウではない」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」「逆ワシントン」。
敵は先入観。世界をひっくり返せ!である。誰しも持つ先入観を小学生達が、あの手この手で覆してみせる。悪人も出てくるが、主人公達と恩師の掛け合いが軸なストーリーが多く、5編全体を通して穏やかな作品である。
「逆ソクラテス」は2度目なのだけど、小学生にとっては絶対的な存在である教師の先入観をひっくり返そうとする様は痛快。昔に比べて今はとか言われるだろうが、今に比べて昔はと言われる面もあり、いつの時代も逆ソクラテスは存在するだろう。人は考える葦でなければならない。
印象深いのは「スロウではない」である。伊坂幸太郎の作品でこのようなタイプはあんまり読んだことがない。志向としては含まれてないんだろうなと思っていた。その点で推しである。
書き下ろしに関しては、らしさを感じさせる。既視感ある展開であれ、それが心地よくなってくるように仕上げてきたらそれは作者の勝ちだと思っているのだけど、一本勝ちである。「逆ワシントン」で纏める辺りも、ファンからしたら皆好きな締めかなと。
因みに、磯憲と言う教師が度々登場する。伊坂幸太郎の小学生時代の担任の先生がモデルらしい。凄い良いこと言ってるのよ、磯憲。セリフは当然違うだろうけど、その先生は短編のモデルになったエピソードでは、モデルになるような話をしたに違いない。そう思うと今回の作品の生みの親はその先生であったりもする。
さて、デビュー20年おめでとうございます。また新作待ってます。読みたくなるのよね、これが。
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表題作の「逆ソクラテス」のところだけ、ネタバレしているので、これから読まれる方はお気をつけてください。
「少年や少女、子供を主人公にする話を書くのは難しい」と作者の伊坂幸太郎さんはおっしゃっています。
「こちらにその気がなくとも子供向けの本だと思われる可能性があります。懐古的な話や、教訓話、綺麗事に引き寄せられてしまうのは寂しいですし、かと言って、後味の悪い話にするのもあざとい気がします」ともおっしゃられています。
この五編の子どもたちを主人公にした短編小説は、見事にその条件をクリアしていると思いました。
例えば、私が一番、印象的だった「逆ソクラテス」。
6年の4月に転校してきた安斎が僕たちに「久留米先生の先入観を崩してやろうよ」と言い出し、自分の判断がいつも正しいと思っている久留米先生を先人のソクラテスの逆だと言い、久留米から目の敵にされている、草壁という同級生をクラスの皆で持ち上げる作戦をいくつか用意します。
作戦は大成功しますが、最後に胸がキュンとせつなくなる話でした。
他の4話もおなじみの伊坂さんの会話劇が楽しかったり、面白いキャラクターの父兄が登場したりして、後味の悪い話はなかったです。
何度か登場する、磯謙(イソケン)という小学校の先生は伊坂さんの小学校時代の先生の名前を借りているそうで、大事なことをいくつも教えてくれた方だそうです。
私事で恐縮ですが、私にも恩師と呼ばせていただきたい先生がいますが、今年の年賀状に、ブクログの登録したことを書いたら「覗いてみようか」と返事をいただいたのでもしかしたら読んでくださっているかも(たぶんいないでしょう)しれません。
私は子供の頃から転校が多くお世話になった先生の数も人一倍多いのですが、恩師と呼ばせていただけるのは、その先生だけなんです。他の先生もおそらく先生としていい先生はいらしたと思うのですが、個人的にまで特別お世話になったと思える先生はなかなかいないものです。
この本で一番、印象に残った言葉は「相手によって態度を変えることほど、格好悪いことはない」です。
そして、最後になりましたが、伊坂さんの人間を見る目はなんてあたたかいのだろうと、心打たれました。
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小学生の子どもたちが先入観と向き合う話。
タイトルの逆ソクラテスとは、ソクラテスが言った「無知の知」、つまり「自分は何も知らないということを自覚している」ということの逆、「自分は何でも知っている」という勘違いの事である。
他の短編も否定語がタイトルに付けられていて、先入観をひっくり返すという統一感が窺える。
先入観はこの世に溢れている。決めつけてはいないつもりでも、無意識にそう判断してしまっていることもある。
しかし、全ての女性がピンクが好きという訳ではないし、いつも一緒の服を着ているからといってその人が貧乏だとは言い切れない。知名度のある大学を卒業したからといって勉強ができるかは分からないし、片親で育ったから不幸せとは限らない。真実は当の本人にしか分からないものである。
この小説には勇気ある子どもがたくさん出てきたが、私が小学生だった時はこんな勇気は持ち合わせていなかった。怖い先生に叱られないように怯えながら過ごし、気に入られるような行動を取っていたと思う。月日と共にそれらが積み重なって、自分が無い、みんなが良ければそれでいいという受け身型人間が完成した。(今こそ改善されてきてはいるが)
周りに流されず、周りと違うことを恐れず、自分の考えを持ち、堂々と生きていきたいと思った。
「アンスポーツマンライク」の終わり方がどんな人にも可能性を与えてくれているようで大好きだし、「逆ワシントン」の謙介のお母さんは強くて素敵だと思った。
決めつけとは言っても、「スロウではない」の占いのように、将来の自分は笑っている、という思い込みは希望になる。
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自粛長期戦、今この作品に出会えてよかった。
この作品が山積みされた本屋さん。そのすぐ近くにちんまりと置かれた伊坂先生からのメッセージ「読者の皆さまへ」。この作品に対する思い、「大変な現実」を前にした時に作家としてできること、について記載されていて、そのメッセージも手に取って、他の単行本も数冊手に取って、人との間隔を空けて、レジへ並んだ。そうそう、単行本は通勤には非常に骨が折れるのですが、とりあえず自粛期間中は通勤気にしなくていいし、まとめて単行本を買ったのです。
デビュー20周年となる今回の伊坂作品のテーマは、「先入観」と「逆転」。
短編にも関わらず、勧善懲悪的な爽快感と、きれいな伏線回収はやはりお見事。
また、短編集ではありますが、それぞれが少しずつ重なり合っている連作短編集です。
爽快感で満たされる。いつも一気読みだ。
伊坂作品の一気読みは、内容の面白さだけではなく、時間の経過という点でも言える。
一つの作品の中に、瞬間の積み重ねが、詰まってる。瞬間の中での仕草、会話一つ一つの描写がとても丁寧で、緻密。
ドラゴンボールに例えると、「ナメック星の爆発まであと5分!」と言っておきながら、そこから何話も続いていって、その5分が異様に長く、その中で何か奇跡が起きてほしい、あーもう5分経っちゃう、いやでもまだ終わってほしくない、むしろここで終わられたら困る、どうなるのどうなるの、そんな気持ちで結局ラストまでぐいぐい読まされる。ものすごいドキドキして、身体中の血液がごうごうと動き回り、それに伴って心臓も早鐘をうつ。その瞬間が終わるとゴールテープを切ったかのような爽快感と疾走感。そこで今まで呼吸が浅くなっていたことに気付かされる。
今回は全編、小学生が主人公です。
でもわたしが全編を通して好きなキャラクターは磯憲(先生)です。なのであとがきは感動ものでした。
小学生の時に素敵な先生と巡り合うというのは、本当に素晴らしい体験だと思う。羨ましい。
一番好きなお話は、「スロウではない」。ラストで思わず泣いてしまって。ちなみに、ラストが一番すっきりしたのは「非オプティマス」。
最近はメンタリストDaiGoさんの動画ばかり見ているのですが、その中で、今回伊坂先生が敵として取り上げている、先入観や圧力で人を侮辱してくる人たちが結構出てくるんですね。わたしもよく被害に遭うので、動画を観ながら対策を勉強しているのですが。まさか伊坂作品でこうして出会うとは思っておりませんでした。普段から人の顔色ばかり窺っている、という人には、とてつもない爽快感と、少しの勇気をもらえます。カバーに記載されている「伊坂幸太郎史上、最高の読後感」。期待を裏切らないよ。ちょっと欝々としてきたこの自粛の日々に、これほどまでに気持ちを高めてくれる作品に出会えて、本当に幸せ。
※こちらのレビューは、noteにも掲載しております。(https://note.com/tattychannel/n/n055275c27e10)
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うわーこれは良かった。
暴力的な描写は一切なく、とても良い。
こーゆー伊坂さん好きだなぁ。
短編集なのだけど、どれもとても良かった。
なんだか気持ちが前向きになるし、なるほど確かにと思えて気持ちが軽くなる。
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これまでで一番好きな作品になった。
「こんなに賢い小学生がいるのか」と突っ込みたくはなるが、子供らしさやコミカルな感じも活きていて楽しいし、わかりやすい。
「敵は、先入観」一貫してそのメッセージが強く込められており、それを子供が大人に伝えようとする話と、大人が子供に伝えようとする話がある。
達観していて活躍を見せる転校生たちや、久保先生、磯憲、謙介のお母さんのような存在が、物語を温かくしているし、身近にいてくれたらとても心強いと思う。
ドン・コルレオーネの件が特に気に入った。
磯憲が「アンスポ」でこれに言及したのは、将太と悠太の話を耳にしたことがあったからなのだろうか?
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小学生が主人公の5つの短編集。
どの短編も良い意味で伊坂さんに騙される。
ドン・コルレオーネのくだりが特に好き。
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伊坂さん、デビュー20年なんですね。おめでとうございます。
短編集ということで、最後には全てがつながるのかな?と少し期待していたのですが、残念ながら全てはつながりませんでした。(おそらくそうだったはず…)
→追記
「逆ソクラテス」の冒頭、新しいテレビはもしかして…?
しかし、一つ一つのお話は、「あぁ、伊坂幸太郎だな」と、安心して読めるものでした。
それでも、「おや、ここははっきりと掘り下げられないのね」ということが所々にあり、以前の伊坂作品なら深く語られたであろう部分が読者の想像に委ねられていて、その変化がおもしろかったです。
あとがきでお話されているように、懐古的な話でも教訓話でも綺麗事に終始するわけでもなく、後味を悪くするわけでもないお話ばかりでした。「夢想家とリアリスト、どちらもがっかりしない物語」でした。
どうせ生きるのであれば、よりよく生きていきたい。
自分にがっかりすることなく生きていきたい。
ずるをするのではなく、しかし、うまく折り合いをつけて生きていく。
後悔があるのなら、やり直したい。
そして、やり直す人に優しくありたい。
そんな読後感です。
幼い頃の思い出は、なんでか少しほろ苦い。そんな切なさも感じます。
「逆ソクラテス」
先入観なく見てほしいと願っていたのは、誰でもない安斎自身だったはず。どこかで草壁のプレーを見ていてほしい。
「スロウではない」
やり直そうとする人にはチャンスを。
磯憲に出会えたかれんは幸運だった。
「非オプティマス」
評判が自分を助けてくれる。
福生の洋服は、父親が買ってくれたもの。
「アンスポーツマンライク」
あの時と変わらない仲間と、あの時から変われた自分と。
アンスポだったら、フリースローが与えられ、リスタートの権利ももらえる。
「逆ワシントン」
これでいいんだ、良かったんだ。
お母さんは、「スロウ」のどちらかの少女ではないかな。
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逆ソクラテスは昔アンソロジーで読んだことあったけど何度読んでもいいなーって思う作品。伊坂さんがはじめて子供を主人公に描いた作品。面白かった!
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読みながら、自分が子どもの時に無意識に身に付けてきた価値観とか経験値とか、ものの見方とか、そんなものがあること自体を考えた。
異なるストーリーに出てくる登場人物たちも、いつどこでどう接点を持つか分からない、すでにすれ違っていたかもしれない、最終的には短編集ではなくなったように感じた。
けして生温くはない社会についての指南書なのでしょうか。
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表題作と、福生くんが出てくるやつが好きかも。
でもリレー走る話も良かったな…… 。
全部の話繋がるのを期待しちゃったけどそんなことはなかったね。
ワシントンの桜のくだりのお母さんも良かった。
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伊坂流ジャスティス全開の話が5篇。単なる勧善懲悪や
スカッする終わり方だけでなく、随所にdon't believe the hype と警告しつつ収めていく大好きになる作品です。
「敵は、先入観だよ」
「敵を憎むな。判断が鈍る」
「もし、平気で他人に迷惑をかける人がいたら、心の中でそっと思っておくといい。可哀想に、って」
アンスポーツマンライクの最後の件とそれに繋がっていく逆ワシントンの最後の件がとにかく感動的でした。
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アンスポーツマンライクは★5
子ども、それに関わる大人。ものの見方が一辺倒でない。読んでいて清々しい。
子ども時代の「今」が辛くても、乗り越えた暁には「幸せ」は訪れると思う。
中高生に読んで欲しいな。