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旅行ガイドブックとあるが、その場所についた地名の由来とマニアックな歴史(一部妄想?)。中には欧米白人の傲慢さも垣間見える。ダーウィンも然りかと。
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外出自粛期間中に読むべきだったかなぁ。
というのも、執筆者も「アームチェア・トラベル」、つまり現地に行かず、地図とグーグルアース、関連書籍そして(おそらく)ウィキペディアからの情報で、様々な散々な名称の場所を紹介してくれている。
巻末のリストも愉快だが、きっとまだまだあるはずだ。
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世界中の陰気な名をもつ土地を紹介するガイド本だが、一般的な旅行ガイドではなく、むしろ著者自身が「反旅行ガイドとしても読める」としている。そもそも著者は紹介しているいずれの場所も訪れておらず、今後も行くつもりはないとしてする。つまり、ネットや文献からの知識と著者の想像による集成であり、真っ当な紀行文を期待する読み手は不満をもつかもしれない。
項目としては、24の土地の紹介と、それに比べて長い三本のエッセイで構成される。紹介される土地ごとに欄外のデータとして日本からの所要時間、総費用、現地までの行き方が掲載され、あえて旅行本としての体裁を取ってつけているのはユーモラスだ。地域的には北米、オーストラリア、南極が多い。巻末には本書で取り上げられなかった奇妙な地名の数々もリストアップされ、虚無というよりは笑えるものも選ばれている。
各地の紹介としては、その多くは地名の由来を掘り下げて紹介するところが多い。なかでも欧米の先進国が植民地支配や天然資源の獲得のために先住民や自然を犠牲にした歴史が少なからずあり、地名とその来歴に不吉さが照合する。一方で、「黙示峰(南極)」「暗闇湖(カナダ)」を代表に、その土地の情報にはほとんど触れずに、その言葉から著者が連想した知識とイメージの披露のみにケースもある。タイトルに表れている不穏さは、先のような先住民や自然の犠牲に立つという著者の文明に対する懐疑的な眼差しもあいまって、看板としてだけでなく、本文全般に行き渡る基調となっている。
コンセプトには好奇心をそそられながらも、ネットで読みかじった情報のパッチワークどまりの企画倒れに終わっているのではないかという疑問もあったのだが、結果として興味をもって読むことができた。その大きな理由は、本書がもともと芸術家・作家であるらしい著者の豊富な知識量や見識によって成り、充実した読み物として仕上がっているためだろう。そしておそらく著者が本来表現したいものは本書に収録されているエッセイの側にある。本編と違ってちょっとした現実の紀行も交えた三つのエッセイにおいては、ときに哲学的な様相も呈しつつ、主に著者が「非―場所」と呼ぶ「集合的記憶を欠いた空間」(例として、モーテル、空港、ガスステーション、スーパーマーケットなど)をめぐる考察がなされる。そして、この「非―場所」こそが、数々の奇妙な地名の紹介とエッセイという、本書のふたつのコンテンツを貫くコンセプトのようだ。
以下、とくに印象に残ったいくつかの地名について短く触れる。
≪絶望山(オーストラリア)≫
オーストラリアの内海神話を信じた若き探検家エアの凄絶な旅。
「エアはアデレードに戻ったが、くたびれ、やせこけ、探検の意欲はすっかり失っていた」
≪世界の果て(ロンドン)≫
J・G・バラード『ハイランド』、マウスの都市実験『ユニヴァース25』
≪死の島(オーストラリア・タスマニア州)≫
「死体は死の島の湾に1キロほどにわたって並べられ、島中の墓に放り込まれたが、そのしるしは土の山だけだった」
≪残酷岬(��ーストラリア・タスマニア州)≫
ヨーロッパの入植者が1803年にやってくるまでタスマニア島には推定7000人のアボリジナルがいて、4万年も暮らしていた。1905年には、誰ひとり残っていなかった。
≪失望島(ニュージーランド)≫
1907年、遭難船の28人中16人が辿り着いた島は、彼らの苦境の象徴となった。
≪飢餓港(チリ・パタゴニア)≫
1584年、4隻のスペインの船が到着した。彼らはここに偉大な「フェリペ王の街」をつくろうとしていた。
三年後、イギリスの航海者が訪れた際に生存していたのは15人の男性と3人の女性のみだった。かれらは人間というより骸骨のようだった。
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表紙から見て、忘れられた場所とかの写真集なのかと思ったら、著者ダミアン・ラッドが虚無と考える場所のエッセイ集だった。写真はその中の12のみ。文のあるのは24、巻末にリストだけ地区別にアメリカ76、カナダ20、イギリス・アイルランド6、オーストラリア・ニュージーランド12、その他ヨーロッパなど36。
ある日オーストラリアに「絶望山」をみつけ、検索すると憂鬱池、失望湾、悲惨島、飢餓川、自殺岬などの地名が出てきて、母国オーストラリアのすぎさりし歴史が掘り起こされてきたという。いままでも、これからもこの本の場所にはいかないだろう、とある。地名の裏には物語が存在し、特に本書の悲しい地名の場合、悲惨な出来事があり、その遠い昔の残響をたどろうとしたとある。
幻惑島:南極 表紙。かつて捕鯨工場だった。
1821年にコネティカット出身の21歳の男がオットセイを求めて航海中、内海につながる入江を発見。そこにはクジラがいた。そのころ西洋では鯨油は洗剤の原料など多くに利用され、特にマッコウクジラからとる「鯨蠟」はヨーロッパや北米の家や街燈に使われた。・・なんだ、昔は西洋でもクジラとってたじゃん・・ しかし1850年代なかばに灯油が考案され鯨蠟にとって代わりはじめ、1920年代になると処理も早くなり鯨油市場は飽和状態になり、1931年には最後の捕鯨会社も廃業し、この島の商業捕鯨は終わった。その後イギリス、アルゼンチン、チリなどが領有を主張したが、現在は南極条約体制によって治められている。
世界の終わり:アメリカ、カリフォルニア州
悲哀諸島:カナダ、ブリティッシュコロンビア州
どこにもいかない道:カナダ、ヌナブト準州
絶望山:オーストラリア、南オーストラリア州
無し:アメリカ、アリゾナ州
望薄島:カナダ、ノヴァスコシア州
孤独島:ロシア、カラ海
世界の果て:イギリス、ロンドン
死の島:オーストラリア、タスマニア州
破滅町:アメリカ、ネヴァダ州
黙示岬:南極
表現不能島:南島
孤独町:アメリカ、ニューヨーク州
ユートピア:アメリカ、オハイオ州
残虐島:カナダ、オンタリオ州
悲惨:ドイツ、ザクセン=アンハルト州
場所無し:イギリス、ダラム州
失望島:ニュージーランド、オークランド諸島
自殺森(青木が原):日本、山梨県
飢饉港:チリ、パタゴニア
暗闇湖:カナダ、オンタリオ州
死:フィンランド、アラヤルヴィ
2020.4.10第1刷 図書館
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ムック・すてきな読書から。実際に行った場所について書いた訳じゃないみたいだから、そこの写真も載ってなければ、情報も調べ書きされたもの。あそう、へ~、ってくらい。
ブックガイドからピックアップして読む、ってパターンの読書が中心なんだけど、何だかな~と思うことも多く、本書を読みながら、ちょっと考え込んでみたりした。それで思い当たったのが、フィクションとノンフの違い。ノンフの場合、事実が前提だから、よほどの場合を除き、大方の内容に触れても問題のない場合が多い。書評も踏み込んだところまで書かれることとなり、必然的に、興味をそそられる可能性も高くなる。反面、実際に読んだ際の新鮮味が失われるということでもあり、そのせいで、期待外れになり兼ねない。フィクションだとその逆。これで結構説明ついちゃうことにハタと気付いてしまった。で、結論。
ノンフのピックアップは控えめに。