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街なかに住んでいて、野の鳥に興味が広がりはじめた小学生などの“初心者”向けと思われる編集内容がうれしい。(その証拠に、最初に紹介される鳥は「キジバト」「ドバト」だ。)
分類の方法も、「科」による定石の並べ方を離れ、まず「街中の鳥」「森や野原の鳥」「水辺の鳥」と3つにシンプルに区分している。
さらに鳥の見た目の大きさから「スズメくらい」「ムクドリくらい」「ドバトくらい」「カラスくらい」と4つにパターン化されているから、はじめて出会う鳥だとしても、「だいたいの感じ」でパラパラッとめくって探せるのもうれしい。
それとこの本は2020年5月の発行。野鳥の生息状況って意外と変化するもので、例えば水辺の鳥のオオバンは最近は大阪でも冬によく見るありふれた鳥だけど「以前はそんなにいなかった」と逆のことも聞いた。そしたら「かつて本州ではあまり多く見られなかったが、この数十年の間に個体数が激増」と書いてあったので、そういう状況の変化が書かれているのもうれしい。
さらに、鳥の特徴や生態の説明とあわせて、コラム欄をつくって小ネタが載っているのもうれしい。
例えばムクドリでは「都市の街路樹にねぐらをつくり、フン害や鳴き声などの騒音が『都市鳥問題』になることもある」とか、オオタカが近年都市部でも見られるようになった理由の推理など、人間の生活面からみた記載も多い。
そして野鳥愛好家にとって“敵”のガビチョウやソウシチョウも、見た目が派手でさえずりも美しくて見つけやすい一方で、特定外来生物として在来種に悪い影響を与える鳥であることを、両面からきちんと説明している。
もちろん特殊な紙が用いられ、風雨にさらされる屋外での使用もOK。
この本を片手に持ってフィールドに出たら、紙質のほか色の使い方やレイアウトが、野鳥観察に慣れてない人でも手軽に使える本として工夫されているのがよくわかると思う。初心者に優しい、かゆいところに手が届くかのような本を制作してくれた著者や編集スタッフの仕事ぶりに、☆5つを贈りたい。