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こういう歳の取り方いいなぁと思える話だった。
夫婦間でも死ぬまで秘密にしていることもあるだろうな。
■一章
小坂真砂雄からの手紙、かんちゃんの死、そして康平が読書を初めた理由が描かれている。
康平の妻、蘭子が康平の未読の本に小坂からの手紙を挟んでいた。
なぜか?
■二章
康平は灯台巡りを初める。
次男の賢策が合流し、次男は大学院に行きたいという。それを聞いて康平は中華そばまきのを復活させようと考える。
「交尾の後には、動物は悲し」という言葉を思い出す。緊張した、そして熱烈に待望した瞬間が過ぎた後には、端的にわれわれの把握を超えた偉大なものを失ってしまったと感じるのだ。
■三章
蘭子は康平が知らない時代がありそうだと娘の言葉からわかった。
夫婦よりも子供たちのほうがよく見ていることは多いのかもしれないな。
蘭子は出雲にいた時代があったらしい。
康平は中華そばまきのを再開する準備をする。
■四章
長男とゆっくり話したことがないと思い名古屋へ灯台見学のついでに赴く。
長男も蘭子が出雲にいたことを知っていた。
康平は灯台の旅の途中、転倒して怪我をしてしまう。
一つ一つの出来事を思い出し、たくさんの幸せがあったことを噛みしめる。
■五章
かんちゃんの息子 新之介がある日まきのの近くに嫁と幼子二人と立っていた。かんちゃんそっくりな容姿にすぐに気付いた康平は話を聞くことにする。
トシオもいたがトシオが状況を説明、ある意味説得してくれた。
一度福岡に帰った新之介だが、すぐに東京に戻ってきた。康平と灯台巡りをするという。
トシオの言葉で変わったのだ。
康平と新之介は青森の灯台に行った。そこで康平は新之介に例の絵葉書を見せると新之介はどこか調べ当てた。そこは出雲の灯台だった。蘭子は何を隠していたのか?
■六章
蘭子の伯母の杏子に会うために出雲に向かう。
そこで小坂真砂雄との関係を聞く。小坂が貧しかったときの、過ちを見逃していたのだ。杏子もこの日まで誰にも言わずに黙っていた。
旦那の康平にも話さず、ずっと約束を守ったのだ。
■七章
ついに小坂真砂雄と会うことになる。そして真実を知る
蘭子が行間に込めた思いが双方にだけ伝わる暗号のようでとても暖かいメッセージとなって届いていた。
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夫婦2人で営んでいた中華そば屋の店主が、急に妻に先立たれ、引きこもりになってしまった後、
数年前に妻宛に来たハガキから灯台巡りの旅を思い立ち、
ハガキにまつわる謎を解き明かしてゆき、
店の再開を果たしてゆく
(中華そばを作るのは、飲食店を営むのは、こんなに大変なのだと思い知る)
あらすじではこんな感じだが、宮本節でどんどん読み進んでしまう。
登場人物の多くが同年代というところと、
物語の核となる日御碕灯台には、
登ってはいないけど、近くまで行ったことがあるので親近感
灯台巡りでなくてもよいから旅に出たくなる本
ひとことで言うと、大したことは何も起こらないのに面白いのよ。
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夫婦といえども、お互いのことを全て知りえているわけではない。未知の部分があるからこそ、夫婦関係を続けていく醍醐味があるのかも知れない。
自分の妻の知られざる過去を知った康平さんは、妻が生きていたときより、彼女に近づくことができたように思う。謎解きの旅は、ラストがどうなるか気になりひきこまれた。
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妻に先立たれた中華そば屋の店主である康平は、あるきっかけから灯台巡りの旅を始める。
その娘曰く、「お母さんがどんな人だったのか私には、なんにも見えてなかったのね。客席と厨房とをコマネズミみたいに行ったり来たりしている中華そば屋のおばさんにしか見えなかったわ」と。
「見えていない」そのとおり。
普段近くにいる人でも、その全てがわかるはずがない。それが人の、夫婦の、醍醐味って言えるのかな。
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宮本輝は、まだ青い頃に読んだ「青が散る」以来だろうか
この本は2020年9月発行の本
灯台好きで読んでみたくなった本
主人公牧野康平(62)は2年前に妻蘭子が亡くなって以来中華そばまきのを閉めてひっそり暮らしている。ある日長い間読みかけだった本の間から30年前に妻宛に届いた謎のはがきを見つける。なぜこんなところにこれが?このことをきっかけに蘭子の謎を追い、灯台巡りをはじめて生活が変わっていく。。。
心温まる家族のミステリーと灯台巡りのお話
主人公の内なる思いと、近親者の気持ち、様々な興味深い情報がマーブル状になって文字になって心地よく優しく入ってくる
私も妻に先立たれるようなことになったら
こんなにも独り言を言うようになるののだろうか
お話の真ん中あたりにある幸せになる方法は必見だ
本の中の灯台巡りが自身の経験と重なり心地いい
伊勢志摩の安乗埼灯台つい話しかける うんうんしたした
島根県日御碕灯台への道や灯台からの景色が目の前に浮かぶ
お話も灯台巡りも心地よく
本の半分からは寝る間も惜しんで一気に読了
久々いい本に出会いました
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「この世には幸福が満ちている。気付くか素通りするかは、あなた次第だよ」素敵な言葉です。そして、私たちはどれだけ”幸福”を素通りしてきたのだろうかと、指折る。
本書では、主人公・康平は灯台巡りの旅に出る。62歳。定年後に、全国を巡り、そして読書三昧。誰もが一度は夢見た生活だったのに、やっぱり、仕事(やり残したこと)に復帰するのですね。この世代の方は、働き者です。あと、10年すれば、この風潮は変わるのでしょうか。
船舶のGPSによって、灯台も、あと数年で役目を終えると語る。しかも、船舶も自動運転が進んでいると聞く。願わくば、その役割を終えても、闇の海に灯をともし続けて欲しいと願うのは我儘でしょうか。暗闇の中、目的地を安らぎを照らす灯を。
岬の先端に聳える灯台巡りを、ぜひ、旅してみたくなります。きっと、一つひとつの灯台にはそこを訪れた人の数だけ思い出が積み重なっている。康平も子供が巣立ったら、もう一度、灯台巡りを再開するのでしょうか。いつまでも、終わらない物語を紡いでいるような気になりました。
いったい、灯台ってどのくらいあるのだろう。
ちょっと苦手だけど、森 鴎外の『渋江抽斎』も読んでみよう。
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祖父の代から営んでいる中華そば屋「まきの」の店主・康平は、2年前突然妻・蘭子に先立たれて以来、店を閉め、引きこもり同然の日々を過ごしていた。ある日、本の間から30年前ある大学生から妻宛に送られてきた葉書が出てきた。そこに描かれていたのはどこかの海岸線と灯台と思われる線画だった。蘭子は何故、その葉書を本に挟んでいたのか?灯台に惹かれた康平は、一人、灯台を巡る旅に出る……。
トシオ、カンちゃん、三人の子供、新之助、杏子さん、小坂真砂雄。
人と人との繋がり、人生の機微、親子の情、ささやかな日常にこそ感じられる幸せなどを描いた、いい人ばかりが登場する心温まる話しでした。
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コロナ禍に買った初版本をずっと寝かせていた。宮本輝作品は全て読んでいて、これを読んでしまうと次に読むものがなくなる。いつか読もうと本棚に。
昨日、読む本がなくなり「そろそろか」と手に取った。
案の定すぐにストーリーに引き込まれた。宮本氏の小説には何らかの専門性のある何かが描かれている。それは葉巻だったり、本の装丁だったり様々だ。今回はそれが中華蕎麦。そして灯台。
彼の文章が好きだ。噛み締めるように読もうと思うが、結局あっという間に1日で読んでしまった。
「わずか生後3日で死んだ子さえも、目には見えない何かを残していく。生まれて3日で死のうが、百歳で死のうが、そこには差がなくて、一瞬にすぎない。永遠の中の一瞬ではなく、一瞬の中に永遠があると見れば、3日で死んだ子も何かを残して生涯を終えたことになるのだ。」宇宙感。
「威風堂々と行きたいな。焦ったって、怖がったって、逃げたって、悩みが解決するわけじゃないんだから。コツコツと、ひとつひとつ、焦らず怯えず、難問を解決していく。俺はそういう人間になるために、いまから努力するよ。」
亡き妻が残したハガキの謎を追うために灯台を巡る。そして中学時代の妻の秘密を解き明かす。地方紙に連載された小説の書籍化だそうだ。
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亡き妻蘭子の優しさと強さを感じる作品。
康平は亡き妻が残した葉書に影響されて様々な場所に行き人と交わるが、その一つ一つが康平に生きる希望を与えていた。このタイミングで康平と葉書を巡り合わせたのは、康平を元気づけるための天国の妻の計らいなのではないかと思わされた。
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さすが宮本輝さんだ。文章が上手い。自然にがれで進んでいく。新ちゃんの出来過ぎは話としてはちょっと出来過ぎだったが。最後には心が温まる。
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たぶん、15年くらい経って読んだら違う感想を抱くのだろな。てか、15年経ったときに凡人が老後の心配もなくこんなにじゃかじゃか旅ができるのだろうか。
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妻の残した美しいメッセージに導かれ灯台巡りの旅に出る主人公
その旅の過程での、古くからの友人や子供たち、新たな友人とのやり取りが素敵
随所に出てくる個人的名言が気に入った
交尾後の虚しさとは何か、人生における幸せとは何か、働くとは何か…
主人公が本好きという点が個人的には何よりも良い
最後は不覚にもウルっとして電車の中で泣きそうになった
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初宮本輝でした。
読みやすく美しい日本語で、物語やその時々の情景、また主人公が感じているものをストレスなく読み取ることができます。
全編通して決して駆け足にならず、丁寧な本、という印象が強く残りました。
大きな事件が起こるわけではありませんが、人が生きている中で起こる、または起こる可能性のある日々の出来事がリアルで、登場人物たちの『生』を感じます。
美しく丁寧な日本語と物語、人の感情をじっくり楽しめる作品でした。
……無性にラーメンが食べたくなるのだけが、困りものです……( ˘ω˘ )
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長年連れ添った夫婦と言っても、お互いの知り得ない秘密や過去の出来事があったりする。
夫婦じゃなくても、友達や自分の親だったり、お世話になった先生、近所のおじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃん。
何かのきっかけでそういう部分に触れて、その人の印象が変わったり、認識を改める事になると思う。
主人公の康平は、若い頃に奥さん宛てに届いた年賀状を、読んでいた本から発見する。
そこから康平の灯台巡りの旅が始まる。
普段何気なく付き合っている人の中にも、様々な人生を経て今があるんだろうと思いが巡る。
個人的には、自分もお店を経営している事もあって、康平が「まきの」という中華屋の店主である事に親近感を持てた。
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何気ない日常生活だけを描いている訳ではない。そうかと言って日常生活に有り得ないような事件を書いてるわけでもない。
これらの中間線上にある話だ。
これを読んで、私も一人車で灯台巡りしたくなった。