投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
いやぁ、めっちゃ面白かった!毎朝7時23分のバス停に並ぶ5人の物語。
この5人は自分に自信がなく、毎日を鬱々と過ごしている。そんな5人の元に神様が現れる。『神様当番』の文字と共に。
①水原咲良(OL)
咲良は頭数合わせのために誘われた合コンで自分とは正反対に見えるキラキラした女性、喜多川葵と出会う。
会社では親友と思っていたユイが咲良に相談もせずに転職するという。親友だと思っていたのは咲良だけだったのか。ショックを受ける咲良だったが。
【神様のお願い】
わしのこと、楽しませて
この物語は5つの短編の中で私が一番好きな作品。
②松坂千帆(小学生)
千帆には弟がいる。頭が悪くてへろへろしている弟、スグル。
全然自慢できないスグルのことを最低の弟だと思っていたが、実はスグルは人の心がわかる優しい弟で・・・。
【神様のお願い】
わし、最高の弟が欲しいなあ
③新島直樹(高校生)
直樹は高校生になって念願だったスマホを持たせてもらい、これでリア充になれると思っていたが、現実には大勢の友達に囲まれるでもなく、彼女もいない。ツイッターで呟くのがやっと。
そのツイッターに毎回『いいね』をしてくれるアザミとの『いいね』だけのやりとりが唯一の楽しみだ。
神様の後押しもあって、アザミが行くつもりらしい映画に行くことになるが・・・。
【神様のお願い】
わし、リア充になりたい
④リチャード・ブランソン(大学非常勤講師)
リチャード・ブランソンは生真面目な英語講師だ。面白みのないリチャードの授業に学生たちは熱意もなく、ただ単位を取るためだけに出席している。
夢を持って日本に来たリチャードだが、契約の一年でイギリスに帰ろうとするが・・・。
【神様のお願い】
わし、美しい言葉でお話がしたいの
⑤福永武志(零細企業社長)
福永は社員8人の電気工事会社の社長だ。ワンマンでケチくさい福永の元から一方的に辞めて自分たちで会社を興した社員たち。残ったのは、福永と妻の八重子、それから喜多川葵の3人だ。
福永は現場に立ちながら大切なことを思い出していく。
【神様のお願い】
わし、えらくなりたいの
どの作品も自分が変わることで、物事の見方もまるで変わり、世界の見え方も全く違うものに見えてくるんだよと教えてくれる。そんな前向きにさせてくれる物語たち。
それぞれの章の主人公たちの脇役として何度か登場してくる花屋のひかりや喜多川葵の存在もすごくいい。
最初は神様のことを面倒だと思いながらも、神様に認めてもらいたくて頑張る姿が微笑ましい。
5つの感動と、前向きになれる心をもらえた。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
“神様、どうか私の願いを叶えてください”、その対象は異なれど、私たちは、そんな風に手を合わせて『神様』にお祈りすることがあると思います。あなたはそんな時、どんなことをお祈りするでしょうか?
人間が集団生活を営む生き物である以上、普段ともにする人たちとの間には、何かしら不満が溜まりがちです。誰かが満足している一方で、誰かが不満に思って我慢をしている、そして、そんなバランスが崩れた時にケンカとなり、その関係は崩れてしまいます。一方で、ケンカという決着を見るわけにはいかない関係性も存在します。代表的なのは会社での人間関係でしょう。いくら無理難題を押し付けられても我慢する他ない日々。ここから逃げ出したいと思っても、誰もが宝くじの一等を引きあてられるわけではありません。転職だって家庭環境や年齢によっては躊躇せざるを得ないでしょう。そんな中で不満だけが募っていく日々というのは、なんとも苦しいものです。しかし、”神様、なんとかしてください”と漠然とお祈りを続けても残念ながら誰も助けてくれないのも現実です。そして、人は現実にただ耐える日々を送ります。雲が流れて雨が止むのを待ちます。ある意味でそれも人生と言えるのかも知れません。でも、
もし、『神様』がいるのなら。
もし、『神様』が私たちの前に現れたなら。
そんなファンタジー世界を描いた作品がここにあります。しかし、この作品に登場する『神様』はあなたが思うような『神様』ではないかも知れません。せっかく現れてくださった『神様』に早く自分の元を去っていただかないと、と願うことになるかも知れません。でも、そんな『神様』は、やはり『神様』です。この作品を読んだあなたは、きっとそこに明日を生きるための何かヒントを得ることができると思います。そこに何かきっかけを得ることができると思います。
「ただいま神様当番」、少しでも幸せな未来が訪れることを願う全ての人たちのための、そう、あなたのための物語です。
『私の順番はいつ回ってくるのだろうと、テーブルの隅で考え』ているのは主人公の水原咲良。『久しぶりに誘われた合コンが、頭数合わせだと気づくのが遅すぎた』と後悔する咲良。『誰からも連絡先を聞かれ』ず、『私を誘ってくれた梨恵でさえ、解散後の挨拶もなく』男子と去ってしまったという結末。『…なんか、楽しいことないかなぁ』と『いつのまにか口癖になっている気がする』咲良は、通勤で毎朝七時二十三分のバスに乗ります。『この発車時刻に合わせて、いつも決まった顔ぶれの五人が集まる』というバス停『坂下』。『ちょっと地味な男子高校生と、暗い色のスーツを着たおじさんと、どこの国かわからないけど飴色の髪の外国人男性、それに小学生の女の子』がこの後並んでいく『今日もいつもとそう代わり映えのない朝がきた』と感じる咲良。『きっと代わり映えのない仕事をして、代わり映えなく一日が終わっていくんだ』とも考える咲良。『ふう、とため息をついて下を向くと』、『バス停の台にCDジャケットらしきものが立てかけてあ』りました。『思わずしゃがみこむ』と、それは『キュービックのニューアルバム、初回限定盤』という驚き。『ど���探しても完売してたやつ。もうあきらめていた貴重な一枚だ』と『心拍数が上がった』咲良。『あたりを見回す。誰もいない』、『見るだけ…。ちょっと、さわるだけ』と手を伸ばす咲良。『…ラッキー』、『そんな言葉が口をついて出る』咲良は『私に回ってきたツキのように思』い、『さっとCDをバッグの中に押し込』みました。一方で『会社は相変わらず退屈で不満しかなく』、『帰りの電車でも座れなかった』という一日を過ごし帰宅した咲良。でも『バッグの中に「お楽しみ」が入っている』と気を取り直します。しかし、CDを取り出し『初回限定盤に』ついていた『ミュージックビデオを堪能』するも『不意に、ちりっと胸の奥が痛んだ』という咲良。『明日、同じ場所に戻しておこうか。でも開封しちゃったし…』と思いながら風呂に入り眠った咲良。そして、また『いつもと変わらない朝』が訪れたはずが『腕の内側に何か黒いものが見えた気が』して『パジャマの七分袖を肘まで上げ』ると、そこには『腕からはみ出さんばかりの大きな文字』で、『神様当番』と書かれていました。『…なに、これ⁉︎ いやーっ!』と焦る咲良。その時でした。『お当番さん、みーつけた!』という声。『振り返ると、ニヤニヤした見知らぬお爺さんが床にちょこんと正座している』という衝撃。『キャーッ!』と『悲鳴を上げてとっさに枕を投げつけた』咲良。『ど、泥棒!』と叫ぶ咲良を指差す老人。『…そうだ。泥棒は私だ』と思う咲良に『わし、神様』と言うその老人は『お願いごと、きいて。わしのこと、楽しませて』、さらに『楽しませてくれないと、お当番が終わらないよぉ。お当番が終わらないと、消えないよぉ』と続けます。そして、その日から勾玉の形になって左手の中に収まった神様の当番をする咲良の毎日が始まりました。
五つの短編から構成されるこの作品。青山さんお得意の連作短編として緩やかに繋がりを見せながら五人の主人公が順に登場します。そんな物語の共通点が、『坂下』というバス停から毎朝乗り合わせる五人の主人公の元に訪れる『神様』です。『神様』という言葉から連想するイメージは人によって多種多様だと思いますがこの作品に登場する『神様』は、『神様』の概念がもっと厳格な国に行けば発禁本になるかもしれないというくらいに俗世間の人間っぽさに満ち溢れています。『お爺さんは小柄で痩せていて、額からてっぺんに向かってつるつるで、頭の両脇に白い毛がもわもわと生えていた』というのが最初の短編の主人公・咲良の印象。それは他の主人公でも変わりません。一方で、人間でないことの証明をするかのように『ぱっと小さくなって勾玉みたいな形になった。私の左手のひらに、勾玉がしゅうっと入り込んでいく』と左手の中に収まる『神様』。この『勾玉』という形の比喩の表現が五人五様に異なります。小学生の千帆には『おたまじゃくしみたいな形』に、高校生の直樹には『マップアプリのピンマーク』に、そして英語教師のリチャードには『クエスチョンマークのような形』とそれぞれ違って見えます。これらはいずれも各短編の主題とも結びついていくもの。同じものを違う表現で、というよりは、それぞれの主人公に合った、それぞれの心に見えるものの形に変化したということなのだと思います。とても細かいですが、こう��った表現の工夫の積み重ねが作品への没入感を格段にあげているようにも感じました。
『問題は、神様をどうやって楽しませたらいいのかということだ』と、五人の主人公たちはそれぞれに課せられたある意味での難題に真剣に向き合っていきます。それは左手の中に収まっている『神様』が、『ちょっと、無茶すぎませんか。勝手なことばかりしてっ!』というように、主人公の意思を無視して、勝手に手を挙げたり、スマホに意図せぬ言葉を打ち込んで送信したり、と早く『神様』を満足させないと『このままではまともな日常が送れない』と主人公たちを焦りの境地に陥らせるものだったからでした。しかし、主人公たちが考える『まともな日常』とは何なのでしょうか?五人の主人公たちは、それぞれに悩みを抱えていました。『楽しいことはみんな、私の目の前を素通りしていく』と考えるOLの咲良、『リアルにまるで希望が持てない』と考える高校生の直樹、そして『えらくなりたい』と考える社長の武志。全員に共通して言えるのは、自身の心の内には”こうしたい”、”こうなりたい”という漠然とした願いが確かに存在していたことです。しかし、彼らはその願いに向かって自分から足を踏み出そうとはせず、その願いの先にいる自分と、現在の自分を比較して、現在の自分が置かれている立場に不満ばかりが募る、そんな日々を送っていました。『私はただ話しかけられるのを待っていた。楽しいことを、運が回ってくることを、ずっとずっと動かずに待っていた』という彼ら。でもそんな彼らの姿を見て、”馬鹿だなあ”、”意気地なしだなあ”などとは、言えない自分がここにいることに気付きます。人間は常に幸せを願います。しかし、一方で人間は飽きっぽい生き物です。幸せが実現してもすぐそれに慣れてしまい、また不満を抱きます。常により良い生活への思いを募らせる生き物。それが、今の人間社会を作ってきたことは間違いないと思います。しかし、一方で、現状がそれほど酷いものでないと感じた場合には、次の一歩を踏み出すことの方を恐れがちです。しかし、その一歩とは必ずしもハードルが高いものではないのかもしれません。ちょっとした心の持ち方を変えるだけ、ちょっとしたモノの見方を変えるだけ、たったそれだけのことでも随分と人生が前向きになる、そのことを教えてくれたのがこの作品に登場した『神様』でした。『毎日顔合わせる人を全否定しても、自分がつまんなくなるだけ』、人の『表情をイヤミだととらえることは簡単だけど!でも、違う…きっと私がそういう色眼鏡で見ていただけ』、これらは他人がどうこうというよりも、どこまでいっても自分の心の持ちよう次第とも言えます。そう、私たちが幸せになるために必要なこと、それは
『私を楽しませるのは私』
ということ。良いことばかりではない人生を、どのように生きていくか、どのように上向きに変えていくか、それは全て自分次第ということ。あまりに当たり前のことと言えるかもしれません。でも、当たり前すぎてなかなか気づけないことでもあると思います。『神様当番』という一見、突拍子もない設定のこの作品。読み終えてなんだか気持ちがとっても楽になった、そんな自分を感じます。難しいことじゃなくていい”最初の一歩”、そう、そうなのかもしれ��い、そんな風に思いました。
つまらないと感じる日常、少しの勇気が持てない自分、そして満足できない人生。私たちは何かしら悶々とした不満を抱きつつも毎日を生きています。でも、楽しいと思う日常には、勇気を持てる自分には、そして満足できる人生とするには、”最初の一歩”がまず必要です。人は変化を期待する一方で変化をとても恐れます。現状がほどほどと感じているのであればなおさらです。そんな時、『誰にも頼まれてないけど。誰にも褒められるわけじゃないけど。一円にもならないけど。この世をおもしろがるのって、こんな小さいことからでも充分いいのかもしれない』という、少しの、ほんの少しの”最初の一歩”を踏み出すこと。それこそが、その先に待つ未来へと私たちを導くものなのかもしれません。
「ただいま神様当番」。優しく穏やかに語られる物語の中で、気づきの機会と、”最初の一歩”の大切さを教えてくれた、とても印象深い作品でした。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
☆3.5くらい。
新鮮さや刺激はないけど、どの話もホロっとくる。全話ともホロっとくるシーンがあった。それはある意味すごいのかも。
裏表紙の神様を見て、吉本新喜劇の辻本さん演じるおじいちゃんにしか思えなくなった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
青山さんの本は温かい気持ちになるから好き。
勝手に人の手を動かしてしまう困った神様だけど、それで本当にやりたかった事や気持ちに気付いていけるのが良かった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
「わし?わし、神様」「お願い事きいて」なんてストレートなキュートな言い方だろう。
そのセリフで私も神様にハマってしまった。
どのお話も明るく、優しい気持ちになれる。
坂下バス停の登場人物はみんな同じ感じなのかと思ったら、ラストのぷんぷくちゃんがすごい笑
新しいタイプの登場人物で、また一味変わった面白さがあってよかった!
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ある朝、目を覚ますと腕に大きく「神様当番」という文字が!突如目の前に現れた「神様」のお願いを叶えないと、その文字は消えないようで…?「お当番さん、わしを楽しませて」幸せになる順番を待つのに疲れたOL、理解不能な弟にうんざりしている小学生の女の子、SNSでつながった女子にリア充と思われたい男子高校生、学生の乱れた日本語に悩まされる外国人教師、部下が気に入らないワンマン社長。小さな不満をやり過ごしていた彼らに起こった、わがままな神様の奇跡は、むちゃぶりなお願いから始まって―。ムフフと笑ってほろりと泣けて、最後は前向きな気持ちになれる。5つのあたたかい物語。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
同じバス停を利用する他人同士が「それぞれに本心ではそうしたいと思っている潜在的な心の問題」を神様の力を借りて、自らが向き合い乗り越えていくお話。どの話にも心当たりがあって親近感がわいた。
そしてバス停の5人が打ち解けていくさまにほっこりする。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
この人の連作短編集はどれも登場人物がさりげなく被っていたりして、にやりとしてしまいます。これまで読んだのも面白かったですが、これが一番かな。なんかガネーシャをちょっと思い出してしまいました。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
神様
可愛い笑
とっても
メルヘンで
可愛らしいお話し
なんだけど
一つ一つの
出来事は
現代に生きる者達に
突き刺さるメッセージ
それでも
前向きなストーリーに
ほっこりと
癒されて励まされる
心が疲弊している時
心がギスギスしている時
だからこそ
手に取って欲しい
読み終わったら
いつの間にか
口元が緩んでしまっている…
そんな一冊です
青山さんの本
もう一冊積読中なので
楽しみ
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
神様にお願い事するのは、こちらばかりで神様のお願い事を聞くなんて、最初はちょっと面白いなって思ったけど、最終的に当番になった人のなりたかった自分になれる、気づける。
当番になった人たちの心情もすごく分かることが多かったけど、読み終わったらなんだか元気に、前向きになれた。そんな素敵な本でした。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
2冊目の青山美智子さん。表紙の写真はミニチュア写真家の田中達也さん。田中達也さんの作品、かわいいし面白いし大好きです。道路が赤いジャージ?と思ったら、ちゃんと意味がありました。
ある朝目を覚ますと、左の手首から肘にかけて大きく太い文字で「神様当番」と書かれていた。「お当番さん、みーつけた!」「お願いごと、きいて?」突然目の前に現れた神様と名乗るおじいさんのお願いを叶えないと、その文字は消えないらしい…。
「坂下」というバス停から毎朝7時23分のバスに乗り込む5人をそれぞれ主人公とした連作短編集です。
この本を読んである言葉を思い出しました。
心が変われば行動が変わる
行動が変われば習慣が変わる
習慣が変われば人格が変わる
人格が変われば運命が変わる
運命が変われば人生が変わる
ウィリアム・ジェームズという哲学者の言葉ともヒンズー教の教えとも言われています。
誰でもみんな自分の人生の現状に多少なりとも不満はありますよね。でも、ちょっと意識を変えるだけできっと人生は楽しくなるはず。そんな前向きな気持ちにさせてくれる物語でした。
「この世をおもしろがれる力のほうがうんと大事だと思う」(56頁)
「怖いものなんてない人より、本当は怖いのに立ち向かってく人のほうが、何倍も強いよ。それを勇気って言うんだと思う」(97頁)
「つまり人と人は、どこか違わないとだめなのよ。全員が同じじゃ何ひとつ変化も成長もない」(219頁)
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
すっかり青山美智子さんの世界にハマってしまって、彼女の作品を読み続けている。
同じバス停を利用する知らない人達の日常に起こるちょっと変わった出来事、神様当番。
彼女の作品はオムニバス形式で、それぞれの話は違うけれど、どこかで繋がっている。誰しもどこかで誰かと繋がっているんだと感じさせる。
ある日突然小さな神様が現れて自分の腕に住み着いてしまったらどうだろう? 神様が自分の本当の気持ちに気づかせてくれているのかもしれない。
他の作品同様、読み終わった後優しい気持ちになる。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
なかなか本を読む気分になれずすごく時間がかかって細切れに読んでいた。 毎朝同じバス停に並ぶ5人の神様当番のお話。 日々の生活の中だったり生きてくための仕事においてだったりの悩みはなかなか当事者自ら解決の糸口を見つけられないものだと思うが、神様当番になってそこから紆余曲折あって素直にそして爽やかな気持ちになれる素敵なお話だった。 私のお気に入りは、五番の福永武志。彼の辿り着いた気持ちが読んでいて嬉しかった。この気持ちを見習いたい。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
青山美智子さん、控えめに言って最高です・・・
『お探し物は図書室まで』『木曜日にはココアを』と同様、連作短編集。同じバス停を利用する5人がそれぞれの章で主人公となる。
幸せの順番がいつか来るのを待つOL・咲良。
自由気ままな弟にうんざりしている小学生女子・千帆。
リア充に憧れる高校生男子・直樹。
慣れない異国の生活と学生たちとの関わり方に悩むイギリス人大学非常勤講師・リチャード。
部下も何もかも気に入らないワンマン頑固オヤジ社長・
武志。
主人公それぞれが、各章で、バス停に落ちているものに気づく。ひとりの時に。「おとしもの」となぐり書きの付箋がついていて、他に、誰も見ていない。
欲しくても手に入らなかったチケットだったり、急な雨で必要になった傘だったり。
こっそり、あるいはとりあえず持ち帰ると・・・翌朝【神様当番】の文字が、手首から肘にかけて、どーんと書かれていることに気づく。いくらこすっても落ちることは無い。そしてそこに、神様登場。「お当番さん、見ーつけた!」「わし、神様」小柄で痩せたお爺さんのような姿で、えんじ色のジャージを着ている。額からてっぺんに向かってつるつるで、でも、頭の両脇には白いふわふわの毛がたくさんある。(可愛い♪)
「わしのこと、楽しませて」
「わし、最高の弟が欲しい」
「わし、リア充になりたい」
「わし、美しい言葉でお話がしたいの」
「わしのこと、えらくして」
神様からのお願い事をかなえることができたら、文字は消える。それぞれがお手軽な方法で、あるいは何を求められているかがわからなくて・・そうしているうちに、神様が彼らの左手を勝手に動かす。学校で挙手をしたり、勝手にメールを作成・送信したり、予定外の質問を投げかけたり。
今回も、神様は、決して簡単に答えを教えてくれることはない。自分自身が考え、本当の気持ちに気づき、真実に目を向ける機会を与えてくれる。
登場人物たちもは、同じバスを毎朝利用しているが、最初はまったく関わりを持とうとしていない。しかし、お互いの知らないところで順番に神様当番を経て、お互い少しずつ影響し合って、つながっていく様がうれしくて・・・そして、最初に出てきた彼女がこっちに!!というような発見ができるのも楽しかった。
嫌なこともあるし嫌な人もいる。自分のことを好きになることだって、なかなか難しい。だけど、相手のことを知れば知るほど、自分のことも知れば知るほど、愛しくなったりする。
直樹の「不完全な僕たちこそ、きっと完全体なんだ。」この台詞が最高に良かった。
私達が我が子を見るとき、神様が私達を見るとき。
きっとこんなまなざしなんだって思う。
みんなが誰かの最愛の人。
失敗も欠点もまるごと自分を愛して、安心してのびのび生きればいい。
私はやっぱり青山さんの本が好き。
青山さん、ありがとうございます。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
「人生って、単に楽しいからやるって、それが一番の決め手だよ。意味があるとか、お金になるとかはその次でさ。自分自身に何かの取柄や才能があるかどうかもあんまり関係なくて、この世をおもしろがれる力のほうがうんと大事だと思う。」
アラサーになって、なにか習い事を始めたいと思ったときに身につけるとお金になるとか、自分の得意なことから選ぼうとしたりしていた自分にグサリとささった言葉。
あ、楽しいそうだからやっていいんだ。
心がほっこり軽くなる短編集。
有川浩さんの「阪急電車」が好きな人にはおすすめな本です。