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敗戦から9年、警察組織が大きく変わろうとしている時代の大阪で相次いで発見された麻袋を頭から被された死体。大阪警視庁の巡査と国家警察から派遣されたエリート警部補が相棒となって事件を捜査していく警察バディもの。
最初から最後までコテコテの大阪弁と土地勘のなさに悩まされたものの、それを補って余りある面白さ。ギクシャクしていた2人が最後には無二の相棒のようになっていく過程がいいし、彼らを取り巻く一癖も二癖もある同僚警官たちもなかなか魅力的。
大学で近代史を専攻した作者らしく、時折盛り込まれる歴史的知識がややもすると説明調になって話の流れを滞らせるものの、辛酸を嘗めた満蒙開拓団、弱者を利用し甘い汁を吸い財を成した巨悪、時代が大きく変わる中で翻弄される警察官たちの矜持、と歴史の暗部を描き出し読みごたえも抜群。
小説2作目にして直木賞候補というのも頷ける、切なさと熱量を感じる良作でした。
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昭和29年、戦後の混乱が残る大阪を舞台に、連続殺人事件を追う警察官の姿を描いた直木賞候補作。
大阪の無法地帯のような混沌とした様子や、現代とは組織も異なる警察の内情など、時代背景が目新しく興味深く読んだ。
満州開拓団の人たちの運命には胸が痛むが、たまたま前後して読んだ宇佐美まことの『羊は安らかに草を食み』のほうが満州での実情がよりリアルで圧巻だったため、こちらの印象はかすんでしまった。
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まずこの著者の年齢に驚く。
1990年産まれって31歳、その若さでこれだけのものを描ける筆力がすごい。
浅田次郎か宮本輝の小説を読んでるみたいだった。
戦争中の満州時代、戦後の混乱期、大阪での市井の人々の貧しい暮らし、警察内部の改変に伴う抗争。
満州に渡った男の親友も家族も失うことの原因になった男(澤=北野代議士)への復讐物語なんだけど、満州へ渡った伏屋と戦後の警察署の若手刑事、新城と東京から派遣されてきたエリート守屋警部補の(バディものとしても楽しめる)
バージョンと交互に展開していく構成も好み。
最後は刺さしてあげたかったけど、罪も重くなっちゃうものね。
結核で先は長くなかったようだけど。
読み応え充分だった。
キーワード
芥子の実畑、アヘン、えべっさん、六法全書
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読みづらい。
このレベルの小説ならいくらでもあると思う。大藪春彦賞を受賞するほどの作品とは思えない。
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55年体制前夜であり、昭和31年経済白書で「もはや戦後ではない」と言われる前の、まだ戦後の荒廃が辺りに漂う昭和29年の大阪を舞台にした連続猟奇殺人を追う「大阪市警視庁」の刑事たちの姿を縦軸に、GHQから強制された民主警察から戦前の内務・警察体制への警察機構転換や、満州でのアヘン栽培がもたらした波乱盤上の人生の流転を横軸に、見事に人生模様を描き切った傑作ミステリー小説。勿論歴史の勉強にもなった。GW休暇で一気読みさせてもらった。本当に面白かった。装丁の出来も完璧で一家に一冊欲しくなる。
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守谷がいい。
時代の殺伐感や匂いがあまりしない作品だった。
最初は視点の移り変わりが唐突で少し馴染まなかった。
2021.5.5
62
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本格派ミステリ。徹底した取材力と参考文献の読み込みがリアルな時代背景や人間描写に活かされていた。撒かれた伏線も見事に回収。大阪弁がテンポ良く勢いを感じた。
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驚愕のミステリー、というわけではないものの、良質な歴史ミステリーといえる。
戦後9年たった大阪が舞台。主人公新城が所属する地方警察・自治警と、国家警察「国警」。この交わらぬ両者の対立を主眼としつつ、味わい深いバディものでもある。若手と中堅、庶民とエリート、大阪と東京。戦後と戦前。2人には幾重も対比が重なる。
ただし、100点満点というわけではない。減点はミステリーの要素にある。警察は実にリアルに描写されているが、明かされる真相が、アレやアレとなると、既視感がある。そして、アノ事件を連想させる手口。
大阪は実に多様な都市だ。その戦後が泥臭く、リアルに描かれる。大阪弁も伸び伸びと展開され、読むのが楽しかった。勝手ながら、刑事部長の太秦は、俳優の奥田瑛二氏を重ねてみた。
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国警と自治警察の二人がタッグを組んで、麻袋を被せられて死んでいる殺人事件を説いていく。戦後の警察のあり方について詳しく述べてあり、犯人の描写が少ないかな?感情移入することはできず。
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面白かった。戦後の街の様子や、人々の生活、思想などが丁寧に描かれていた。ただ、容疑者の動機や人物像がもう少し突っ込んで描かれていたらよかったかな。3.7
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まだ,大阪府警でなかった警察の黎明期,大阪の3箇所で同じ手口の死体が発見される.章ごとに挟まる満州の断片と本編がつながっていくのだが,その捜査に一癖も二癖もある警察官たちが民主主義の名の下に頑張ったり頑張らなかったり,嫉妬や足の引っ張り合いなども含めて今の体制となんら変わらない様相が見えて,変わらぬ人間にあきれりしながら読む.国警の東大卒守屋警部補と中卒の刑事新城のコンビがだんだん胸筋を開いていくところが良かった.
警察史としても面白かった.
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昭和29年の大阪で代議士秘書の刺殺体が発見された。ほぼ同時に鉄道橋上では代議士と関係のある団体の代表者の轢死体が発見。2つの遺体には共通点があり、代議士絡みという事もあって大規模な捜査本部が設置。大阪市警視庁の若手刑事新城は警察官僚の守谷と組む事になるがこの守谷が旧体制の態度を引き摺ったいけ好かない奴で…。終戦直後の混乱期の熱気がぐいぐい浸透してくる中で新城と守谷の関係が変化していく展開が負けずに熱い。お手本の様な警察小説。拭い切れない戦争の闇がリアルに迫ってくるし、足で稼いだ証拠がきちんと土台になって真相に一気に繋がる展開が最後まで読み応えあった。あと戦後大阪の警察体制等色々為になったし、戦前の満州が絡んで来るので辻さんの「深夜の博覧会」のある箇所が補強されたよ。
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終戦直後の大阪がメイン舞台。
混乱に紛れてなんでもあり感が伝わってドキドキしてくる。
戦時中の満洲がひんぱんに描かれていますので、誰かと繋がるのだなとわかってしまいます。ミステリというより、どう決着させるかが楽しむポイントでした。
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戦後9年の警察が舞台。警察組織の統合に絡めて、麻薬の密売や政治家の汚職など、今に通じる犯罪は既にこの頃には始まっていたのか、など日本の戦後史の勉強にもなる小説。
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「インビジブル」=目に見えない、つまり見えざる者ということだろうか。そこにいるのに、視覚としては認識しているのに見えていない。いてもいなくても同じ、というような。
昭和29年の大阪を舞台にした警察物。警察小説は好きで結構読んできたが、この作品では知らないことが多くて興味深い内容だった。
国家地方警察(略して国警)と自治体警察(略して自治警)との合体の議論が行われている最中に起きた事件。代議士・北野の秘書、政治団体のリーダーが頭に麻袋を被せられて殺される。
個人的な怨恨なのか、それとも『政治テロル』なのか分からない中で、国警警備部から守屋警部補が派遣される。守屋と組むことになったのは大阪市警視庁東警察署の若手刑事・新城。
互いに違う立ち位置、捜査手法で挑むので時にぶつかり合うことや戸惑うこともありつつ、次第に良きバディとなっていく。
ミステリーとしてはそう複雑ではない。各話の冒頭に挟まれる満州のシーンの語り手が誰なのかを考えながら読めば大体の構図は見えてくる。
しかしそれよりも戦中・終戦直後の日本や日本を取り巻く環境にこれほど麻薬あるいは覚醒剤が関係していたとは改めて驚く。知識としては知っていても実際に物語として読むと深く突き刺さる。
しかしこの当時は当然のものとしてあった。薬局でも買えるほど手軽なものであり、それを作る者、原料を栽培する者など、その恩恵に預かる者もたくさんいた。これが何か人に悪い影響を与えるものだと分かっていても、それしか稼ぐ手段がなければそれに縋るしかない。そしてそんな人たちを見えざる者として使い捨てしていた者が多数いた。
若手刑事・新城はたくさんの矛盾やジレンマに遭遇する。『民主警察』と謳いながら全く民主的でない浮浪者たちの排除、法を遵守させるべき警察官たちのモラルの低さ、殺人捜査すら忖度や圧力で歪めさせようとする上層部にその上層部同士の政治的闘争。
一方で国警の守屋は不器用過ぎるほど真っ当だ。自身の父親の不正が許せず自ら告発、自殺に追いやったという彼は海千山千の相手でも警察権力で以って口を開かせようとし拗らせる。
逆に新城は上手く世間話の中で緒を掴む巧妙さも身につけていて、若手ながらなかなか頼もしい。
だがその新城もまた父親との確執があり、その父親が知らぬうちに覚醒剤中毒者になっていたという事実を突きつけられる。
この事件を象徴する『麻袋』。満州では現地の人々や労働者たちを容赦なく虐待し時に命まで奪っても『麻袋』で見えないものにしてしまった。
終戦直後の日本でも職にあぶれた人々や戦災孤児たちは見えざる者として居場所を追われ排除された。そしてかつて国策として麻薬を栽培していた人々も…。
事件自体は重苦しかったが、新城と守屋のコンビは良かった。また暑苦しくいかつい東警察署の面々も衝突はあれど事件捜査となれば頼もしい。
様々な時代の狭間…麻薬が違法になり警察が一体化し…の中でもがきつつも進む人、打ち捨てられる人、様々なドラマがあった。
それにしても北野はサイコパス。だがこういう人物ほど世に憚る。