投稿元:
レビューを見る
【戦後の焼け跡で起きた連続殺人。清張賞受賞第一作】成り上がり政治家の関係者が次々と殺された。背景は汚職か怨恨か。刑事の矜持を胸に、中卒と帝大卒のバディが戦後大阪の闇に挑む。
投稿元:
レビューを見る
満州、戦後、かつてやる夫スレで作者の坂上先生が書かれていたお得意のジャンルであることを確認しながら読み始めた。
まず読んだ感想としては、圧巻されまくった。
エリート警官の守屋のお守りとしてバディを組んだ新城とのコンビ。
かみ合わない二人だが、次第に捜査を続けていく仲で息が合い、互いに抱える闇を知り、そして事件の真相を追いかけていく。
一つ一つの点が、気付けば線どころか、面になっていくストーリー展開に脱帽するしかない。
まさに、歴史ミステリー小説とはこういうものであることを教えられた気分になった。
投稿元:
レビューを見る
今年の夏
『パチンコ』、『罪の声』、『インビジブル』と読んだ。
自分が生きている時代も、地域も違うけれど、そんな場所が違っても深く考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
昭和29年の大阪で起きた連続殺人事件。戦後の混乱と貧しさから未だに抜け出せずにいる人々や世相を背景に、中卒叩き上げの若手と国警から派遣された帝大卒エリートがコンビを組んで事件の真相に迫ります。
2人のキャラがたち、歴史的背景の描写が素晴らしい。警察機構の仕組み、社会事情など読み応えのある内容でした。
投稿元:
レビューを見る
戦後の大阪を舞台にした警察もの。設定やストーリー性は良いが、犯人のインパクトが弱い。戦後の混乱した雰囲気が感じられた点がよかった。
投稿元:
レビューを見る
面白かった。船戸与一の満洲国演義を読んでアヘンの栽培は、知っていたが、そこから警察庁の混乱を重ねるところは、さすが。新城と守屋のコンビがいい。
投稿元:
レビューを見る
大阪市警視庁という現在から振り返ると見えてこない自治体警察を舞台にしている設定が新鮮でした。戦前の中央集権的権力への反省から生まれた市町村が主体となり運営される「民主警察」が存在した昭和22年から29年の7年間は戦前と敗戦と戦後ののりしろみたいな時代であり、その時間そのものが題名のインビジブルの意味なのだと思いました。時代の変わり目であるからこそ表に表出しない様々な秘密や情念や権益や悪が存在していたことに着目した小説です。物語の進行の裏地として進行する犯人のモノローグ、戦前の犯罪的利権を戦後に隠し持つ仕組み、大阪という街に根付く民間信仰、さらには中卒と東大卒という戦前にはありえないバディのそれぞれの親の物語と心の来歴、いくつものインビジブルを組み合わせて、著者は見えない時代を蘇らせました。その中で、自分にとって一番印象的なインビジブルは物語の中盤で現場叩き上げのリーダー格が捜査会議の自由闊達さについて「これはOPPや警邏車と違て目に見えへんもんやが、民主警察っちゅうもんがもたらした側面やないかとワシは思とる。ひとりひとりが己で考えて行動するっちゅうのが民主主義なんやったら、それが捜査員に行き渡っとる」とつぶやく場面。戦後民主主義とかタテマエで語られることが多いと思いますが、やはり戦争に負けたことで手に入れた大切なものだったのだ、と思いました。主人公のふたりだけでなく、暗い表紙に隠された熱い小説でした。
投稿元:
レビューを見る
読み始めて、どうしても言葉が所々兵庫なんよなぁと思ったら気になって、話もそんなに頭に入ってこなかったです。
投稿元:
レビューを見る
警視庁の若手刑事「新城」と警察官僚の「守谷」のタイプの合わない物同士が、戦後の大阪を舞台にした、殺人事件を扱うバディものとして、興味深く読めました。お互いの胸の内を明かしていくうちに、徐々に関係性が変わっていくのが、良かった。
過去と現在を織り交ぜた展開は分かりやすかったが、戦後の大阪の雰囲気は、あまり感じられず、当時の時代背景による、幸不幸のやるせなさもあったのだが、そこは人間自身の理念で行動しているのが明白である故に、私には、あまり共感しづらかった。
投稿元:
レビューを見る
過去と現在(と言っても設定自体が戦後すぐの話だが)を話が行ったり来たりと、ちょっと読みにくくて混乱するが、ストーリー自体は面白く読めた。
ミステリーとしての謎そのものはそんなに難しくはなく、びっくりするような結末でもなかったが、キャラクターの個性で読み進められる。
なんとなく、今野敏の隠蔽捜査シリーズのような雰囲気があり、それも楽しめた理由の一つかと思う。
投稿元:
レビューを見る
【272冊目】戦後10年余りしか存在しなかった国家警察と自治体警察の二重構造時代。その時代に大阪で発生した連続殺人事件の物語。面白かった!
主人公の若手刑事は、大阪市警視庁の地元採用。そのバディになる国家警察警備部職員は、国家採用の高文組(今でいうところのキャリア)。ありがちな組み合わせだけど、若い2人とも戦中に陰を抱える出来事を経験していて、それが本作最大の特徴である時代背景と見事にマッチ。凸凹コンビが最終的にお互いを認め合っていく、という王道ストーリーも爽やか。ただし、事件や時代背景そのものは結構陰鬱。特に大阪の地理を知っていると、登場する地名から漂ってくるニオイが、ストーリーに深みを与えていると思う。
犯人の動機につながるストーリーが各章冒頭に描かれているのだけど、満州・シベリアという異国の地で起こった凄惨な出来事が本筋の事件につながっていくという描き方は、日本版緋色の研究って感じで悪くない。
投稿元:
レビューを見る
大戦直後の大阪でおきた連続殺人事件。
満州、シベリアでの出来事が伏線となる。
戦後の大阪の猥雑な雰囲気がいい。
GHQの政策により一時期だけ存在した大阪市警視庁の若手刑事と国警から派遣されたエリート警官の取り合わせもいい味を出している。
投稿元:
レビューを見る
バディ物としては普通かな。
ミステリー・サスペンス要素も特別強い訳ではない。
ただ、戦後混乱期の大阪の雰囲気や警察組織の軋轢など、独特のエッセンスがあって、それがこの作品を面白くしている。
投稿元:
レビューを見る
戦禍の影を引きずる昭和29年の大阪。麻袋を頭に被せられた刺殺体が見つかり、大阪市警視庁の新城刑事と国家警察キャリアの守屋はコンビを組み捜査にあたる。一方で戦時中からの満州・シベリアへ繋がる痛々しい話も紡がれる。新城守屋のコンビが少しずつ相手を理解し、尊重しあっていくのが気持ちよくぐいぐい読み進んだ。ミステリとしては薄めだが、きちんとした歴史背景の中、伏線を最後に一枚の絵に展開したようでとてもよかった。ノンフィクションのようなこの作品が1990年生まれの著者により描かれたことに驚く。今後の作品も期待したい。
投稿元:
レビューを見る
戦前そして戦後すぐの満州と、昭和29年の大阪で起こった連続殺人事件を通して、当時の「闇」といえるある出来事を炙り出す社会派サスペンスです。
若いころに読んだ松本清張作品のような重厚さを備えており、自分は読んでいてどこか懐かしい印象を受けました。
その重厚さの中にあって、中卒叩き上げでかつて使命感に燃えていたものの警察組織の不条理に絶望していた主人公・新城と、大卒のカタブツ警察官僚・守屋のコンビの掛け合いは味があってなかなか面白かったです。
会話のテンポの良さは舞台が大阪っていうのが効いてますね。
殺人事件の背景が、新城の父親のとある行為から守屋の過去が明かされるくだりの部分に繋がっている部分もなかなか上手いなあと思いました。
組織の中でいかにして「個」を通すかという点も、警察小説ではままあるパターンながら、ちゃんと描かれています。
カタカナのタイトルがレトロな本編の雰囲気とあまり合っていない気がした点だけがちょっともったいなく感じましたが、それ以外は欠点らしい欠点も見受けられず、完成度はかなり高いです。これは評価を集めるんじゃないかな。
いい作品だと思います。