紙の本
日々、日本のSFも進化を遂げている
2020/10/21 22:52
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
創元発の日本SFアンソロ第3弾。幻想SFを扱う創元らしい作品もあれば、日常の地続きにある不思議さを扱った作品も収録されたバランスの良いアンソロジーだった。前者の好例として、映像再現力の高い「蒼の上海」「メタモルフォシスの龍」のどちらもすごく良かった。
「蒼の上海」はSF界では新人の折輝真透さんが描いた海洋終末系SF。様々な海洋生物と水中の描写を細かく表現した、脳内映像美の高さで若干分かりづらい世界観をガンガン牽引する力量を感じる。
「メタモルフォシスの龍」は前号に引き続き、空木春宵さんのしっとりした作品。感情を具現化する発想が見事。「地獄を縫い取る」では感情を抜き取って体験型アトラクションに落とし込めるようになった世界で弄ばれる負の感情を描いて、本作では恋に破れた女性が徐々に蛇に変質していく世界を描いてる。愛にまつわる後ろ向きな感情をひたむきに描いていて、とにかく巧いなと感じる。設定に負けない展開力もある。
日常系SFの中では宮西建礼さんの「されど星は流れる」が秀逸で、収録作の中では一番好きな作品。コロナ禍で活動できなくなった天文部の高校生が家でできる部活を始めたところから、思いもかけない世界が広がっていく展開は、理系を志した人なら誰しも熱くなれると思う。タイトルに込められた思いも熱い。
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SFアンソロジー7作品短編集。
Genesisも3冊目となり、人の想いの数だけSFの世界があることを、あらためて知る構成。
SFは日常のそこかしこに息づき、私たちの人生に奥行きと彩りを添えてくれます。
『エレファントな宇宙』
アクションSF。ミリタリー好きな方に超オススメ。
宇宙から高次元生命体が飛来した。
その生命体とコンタクトした人間は、憑依され、未知数の破壊力を持つに至った。
最新鋭米陸軍部隊と特殊作戦に挑む3作目。
…前作を読んでいた方が、より楽しいかもしれない。
『メタモルフォシスの龍』
近似未来SF。
恋をしてはいけない世界で恋をしたひとたちの悲哀を描いた作品。
独特な文で綴られる物語は、1シーン毎に絵画を観るように美しく、そして切なく心に響きます。
やや重の話。…ハ虫類がニガテな方は気をつけてください。
『循環』
ノスタルジーSF。
主人公が、廃工場の棚で見つけた手のひら大の不思議な形の部品。調べても、いつ何処で作られたのか、何に使うものかも分からない。
それは、歴史を遡り過去に高次の存在から託された落し物だった…
就職からの軌跡を日本の経済成長期、大阪淀川付近を舞台にしっとりとした文章で綴った作品。
とても癒されました。
『されど星は流れる』
SFの原点。
高校生天文部員が、自宅待機で学校の観測機器が使えなくても、なんとか自分たちの流星を見つけたいと努力と工夫を重ねる物語。
星好きに悪い人はいない。
宇宙の遥かなる深淵へのロマンを思い出させてくれる、心を揺さぶる作品。
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理解しやすいSFが、減った気がする。設定が複雑過ぎて読むのが億劫になる中、この作品集は、サクサク読める。これ、とても大切。難しい事を易しく表現するのは、作家の技術です。偉い!楽しく読めた。
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数学は苦手だが松崎作品が読めて嬉しい。表題作のように、今の世の中はSF作家の腕の見せどころではないだろうか。
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SF。短編集。
どの作品もまずまずな感じ。
メンツ的にもハズレはないか。
異様な世界観が魅力の、空木春宵「メタモルフォシスの龍」。
爽やかな青春SF、宮西建礼「されど星は流れる」。
上記2作品が好き。
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楽しかった
宮澤伊織作品が読めてよかった。完全娯楽大作だなぁ。キャラクターが良いのかな。ほかは残念ながら流し読みに近かった。
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今回のアンソロジーは読みやすい作品が多かったように思える。あくまでも個人の感想であるが、世界観をぱっと理解できる短編揃いなのだろう。個人的に印象に残った作品は2つ。「メタモルフォシスの龍」(空木春宵)は個人的にはあまり好きではないジャンルなのだが、恋に破れると蛇化する女性と蛙化する男性、特に蛇化する女性の描写が生々しくも切ないのが良い。「されど星は流れる」は系外流星を流星同時観測の手法で探索する物語。科学を一生懸命やる話は私の好物である。遠くにある流星の母星と少し離れた観測者の男女の物語が接触しそうでしなさそうな、流星が地球をかすめていくような感じでよい。