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中国初の50歳以上の人ばかりがかかる感染症。最初は皮膚病から始まり死に至る。治せるという医者は正義感の強い人で、治療法を伝える代わりに軍備を解け、平和を約束しろ、というが独裁者は承知しない。やがて感染した独裁者はしぶしぶ条件をのむが自分の蒔いた種、医者は自分の信者に殺害されてしまう!群衆はどこへ向かうのか!ってこれすごい風刺だ。スペイン風邪の流行や当時のチェコを取り巻く状況と重ねて書かれたということですが、なんだか今もぴったりすぎて、唸ってしまいます。
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重いテーマの割にそこかしこにユーモアが漂っているので、どこか楽観視しながら読み進めたら結末はとんでもなかった。疫病の話ではあるけれど、どちらかと言うとテーマとしては反戦の方に重きが置かれているように感じる。
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1937年の作品。独裁者である元帥が戦争準備を進めつつある国において、治療法のみつからない未知の感染症が蔓延している。チェン氏病と呼ばれるこの病に罹った患者は、初期に皮膚に白い斑点が現れ、やがて臭気を放ち、肉を腐らせて死んでいく。そして感染者は45歳から50歳以上の年齢の人間に限られている。隔離する以外に打つ手のない大学病院長(枢密顧問官)のもとに、治療法を知るという町医者ガレーン博士が現れる。ガレーンは大学病院で貧しい患者のみに治療を施して全快させ、治療薬の有効性を証明する。貧しい人間のみにしか治療を施さないガレーンは、薬の配合を教える交換条件の要求内容で人々を驚かせる。
戦争の熱狂に批判的な眼差しを向ける、全三幕の戯曲。幕ごとのタイトルは「枢密顧問官(大学病院の院長)」「クリューク男爵(軍需企業の経営者)」「元帥(独裁者)」と、物語の舞台となる独裁国家の重要人物から取られている。カバーの紹介文にはSF戯曲とあるが、パンデミックの発生と病状が描かれる以外、いわゆるSFらしさはない現実的な展開。帯にある「閣下、握手はできません…私は…<白い病>なんです」というセリフの使われ方は想像とは違い、感動的なシーンではなかった。筋を追うだけなら、かなり短時間で読める。
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前半は伝染病と世間の恐怖。
(これが、コロナ予言といわれる個所)
後半は、人と力の恐怖。
岩波にしては、訳が読みやすくうれしい。
この作者も未来を見てたのでは。。。
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かなり今に近いものを感じた。
求めるものが違うし、それを譲ることができない両者の葛藤を見た。
追い込まれた時に人間は何を優先するのか、
相手のことを知ろうとすれば何か変わったのかも
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昨今の状況にも繋がるものがあるということで、本屋で紹介されていたので購入。
戯曲形式の文体で進行する物語で、内容は軍国主義が蔓延る国に、突如として原因不明の病が発生するといったもの。
病の治療法を提供する代わりに、戦争を止めさせようとする医師。どうしても戦争がやりたい体制側。
ゆずれない主張を繰り返していくうちに、病は蔓延し、発症してしまう人の身体と精神を蝕む。
最後は狂った群衆により、全てが台無しになるのがなんともやるせない。
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50才前後になると皮膚に大理石のような白い斑点が出来死にいたる伝染病が流行しひとりの医師が治療薬開発に成功するが治療にあたりその条件が貧しい人と軍拡反対することだった。ユダヤ人だったカレルチャペルの愛するチェコがナチスドイツに併合される頃の作品。いろいろと考えさせられます
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初めて戯曲を最初から最後まで読んだけど、ほとんど台詞で構成されている分、なまじな小説よりは読みやすいなと感じた。
感染症の治療と引き換えに平和を求めるという構図。
2022年の日本人の感覚からすると「そんなの戦争してる場合じゃない」と思うけど、当時はそうでもなかったと思うと事の深刻さが少しは分かる気がする。
なんか自然と
「たいした奴だな。簡単に5人も死なせるなんて。こっちは1人助けるだけで精一杯だ。」
というブラックジャックの台詞を思い出した。
ラストはこうなるか・・!やられた!!という感じ。
「『白い病』のこのような結末は、群衆の興奮、本能、激情と、それらを利用することに手を染める人々への警告となっている。しまいには、権力そのものも、浅はかに権力に近づいた者たちもすべて滅びる。」
と作者も書いているようだけど、正にその通りだと思う。
たとえ戦争下に置かれていなくても、現代のメディアの影響力とか情報の拡散スピードとかを考えると凄く普遍的なテーマだと思う。
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社会階層、不条理、ジレンマ、群集心理、それらが複雑に混ざり合った先に、戦争と疾病があり、それぞれを利用する人間がいる。元帥には戦争それと対するように病にはガレーン医師が。コロナ渦の中、注目されている本作は、まるで今の状況を予言しているのではないかと思う人も多いだろう。設定まで似ている。。。チャペックが今の状況の中にいたらどんな作品を書くのだろうか?
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戦争前夜に流行した特異な感染症の特効薬を見つけた医師が、その公開と引き換えに世界平和を求めるが…
戦争に突き進む大衆の愚鈍さと
誰を治療し誰を治療しないかという倫理的問題
コロナ禍のような不安定な世情では
SF戯曲の持つ力が際立つ
悲劇的結末がリアル
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1937年刊行の戯曲です。
新型コロナパンデミックの今の一冊、ということで本屋さんで見つけて買いました。
小一時間もあれば読めます。
謎の疫病の治療薬を開発した一人の医師の、命を救いたいという想いや平和への願いと、戦争をしたい国家や民衆・・・。
ラストは衝撃的でした。
ファシズム批判の作品ですが、正義感・群集心理・倫理観・マスメディアについてなど…色々と考えさせられる作品でした。
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初版は1937年とある。作者が世界情勢に向けて語っていたのだと思うと胸が傷む。コロナ禍に次ぐウクライナの問題、これは現代のことではないの?と思ってしまう。2020年に翻訳していた訳者も、出版社の人たちも今頃驚いているに違いない。
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コロナ禍での読了
人との距離が分断という言葉で表現されたころの感想
作中では時代が大戦に向かう中(書かれている時代も)、これから起こる事もこんな展開もあるかも知れないと
過去のSF作品が未来の予言作品のような場合もあるので、ただの想像や夢物語ではなく、もしかしたら、という世界なのかもしれない。
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1930年代に出版された作品が2020年に再び出版された!
読み始めて直ぐにその理由がよく分かりました。
まさにコロナウイルスではないか!
『白い病』という謎のウイルスにかかると皮膚に斑点ができ始め、やがて死にゆくのだ。中国から始まったことを匂わせているところも、まさに!という感じでした。
治療法を見つけたがレーン博士に権力者たちは圧力をかけたり金に物をいわせたりするも、彼は戦争を今すぐやめる事を条件に出します。
最後に、とても皮肉めいた、すごいオチが待っています。
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1937年刊行
当時はナチスドイツを意識したであろう読者は、
2020年出版時にはCOVID‑19を想像したことだろう。
2022年は今はロシアの指導者に重ねて読んだ。
ガレーン博士は存在するのだろうか。
非常に読みやすかった。