投稿元:
レビューを見る
三島由紀夫晩年の文学論を中心に、
幻想小説をあしらったアンソロジー。
ちくま文庫『文豪怪談傑作選 三島由紀夫集~雛の宿』
https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4480423648
と重複するコンテンツが多いので、
既読の人には物足りないだろうが、
対談・書評・書簡篇「澁澤龍彦とともに」のために
買う価値はある……かもしれない。
構成は以下のとおり。
Ⅰ 幻想と怪奇に魅せられて(小説篇)
「仲間」「朝顔」「卵」「緑色の夜」「鵲」
「花山院」「黒島の王の物語の一場面」「伝説」
「檜扇」
Ⅱ 王朝夢幻、鏡花の縁(戯曲篇)
「屍人と宝」「あやめ」「狐会菊有明」
Ⅲ 澁澤龍彦とともに(対談・書評・書簡篇)
「鏡花の魅力」「タルホの世界」
「澁澤龍彦氏のこと」「現代偏奇館」「デカダンスの聖書」
「澁澤龍彦訳『マルキ・ド・サド選集』序」
「人間理性と悪」「恐しいほど明晰な伝記」
「サド侯爵夫人について」「澁澤龍彦宛書簡集」
Ⅳ 怪奇幻想文学入門(評論篇)
「本のことなど」「雨月物語について」
「柳田國男『遠野物語』」
「無題」(1964年,塔晶夫=中井英夫『虚無への供物』広告文)
「稲垣足穂頌」「解説『日本の文学4 尾崎紅葉・泉鏡花』」
「解説『日本の文学34 内田百閒・牧野信一・稲垣足穂』」
「二種類のお手本」「小説とは何か」
Ⅰで印象深いのは、すれ違いから13年越しのめぐり会いへ――
というロマンティックな恋の話「伝説」(1948年)。
甘く優しい雰囲気にビックリしつつ(笑)
初出『マドモアゼル』とは小学館の女性誌かと思ったが、
発行期間は1960~1968年だそうだから、
違うのだろう(どなたかご教示ください)。
「檜扇」(1943~1944年)は北欧の街の片隅で
殿村が出会った領主フォン・ゴッフェルシュタアル男爵のエピソード。
日本人外交官である花守伯爵の美しい妻に懸想した男爵は……。
殿村が男爵と出会うまでの、
不慣れな街を心細くウロウロする様子に
日影丈吉「猫の泉」を連想した。
Ⅲの書簡集は、三島が澁澤に宛てたハガキ・封書
(澁澤龍子氏が保管していたもの)。
《昭和35年5月16日》
> 今度の事件の結果、
> もし貴下が前科者におなりになれば、
> 小生は前科者の友人を持つわけで、
> これ以上の光栄はありません。
これは2008年の生誕80年回顧展(神奈川近代文学館)
『ここちよいサロン』で実見
https://www.museum.or.jp/event/48306
「事件」とは「悪徳の栄え事件」=サド裁判のこと。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E5%BE%B3%E3%81%AE%E6%A0%84%E3%81%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6
既読のパートにも新しい発見があったので、
今後の読書の寄る辺としたい。
ところで、お手元にこの本をお持ちの方は
中川学さんの美しい表紙をとくとご覧あれ。
シブサワもおるでよ(笑)。
投稿元:
レビューを見る
やっと、三島由紀夫ってゆーイメージと、その作品は結構違って面白いかも、と思えてきた。
なんだろう、完成している。
投稿元:
レビューを見る
幻想文学こそが三島由紀夫の文学的ルーツであり、ルーツ的作家についての評論は非常に心躍る文章でした。
何か自分の知っているようで知らなかった、未知へグッと足をひとつ踏み入れたようなそんな心地のするアンソロジーでした。これからの読書体験に必ず役立つはず!
投稿元:
レビューを見る
「小説とは何か」読者に関する記述が的確すぎてグサグサと痛いっ。小説家への批評も痛いっ。
三島自身についてもそう。
小説世界(ヴァーチャル)とリアル世界との緊張感ある危うい均衡の力で執筆活動をしていたこと、豊饒の海脱稿後自分はどうなるのだろうかという予言的な心配等、言葉を尽くして語っていた。もう死ぬしかなかったのだと、自分はこれを読んで初めて納得した。
ところで、小説「卵」が気に入った。
毎朝卵を呑む五人の学生が、卵に逮捕され「卵は食用に供しうるという危険思想に導かれた暴力」の罪で訴えられる。
法学部出身三島のへりくつ千万がおかしい。
投稿元:
レビューを見る
『仲間』を初めて読んだが、こんな三島由紀夫もあったのですね。
ずっと気になっていた、国粋主義者となっていく晩年の三島と例の裁判以外は基本ノンポリの権化みたいな生き方をしていた澁澤龍彦が親交をもっていた理由が、三島の手紙や、評論で泉鏡花らにおくられる惜しみない賛美を読んで、少しわかったような気がした。
投稿元:
レビューを見る
結構なページ数があるが、そのほとんどが「これここに載せる必要あったか?」と思うものばかりだった。澁澤龍彦へ送った手紙に関しては「澁澤龍彦へ宛てたファンレター」でしかなく、「私は一体何を読まされているんだ?」という気持ちになった。
はじめの短編集もつまらないわけではなかったが私にはあまり刺さらなかった。
最後の「小説とは何か」のところはよかった。なんだったらここだけで十分だった。
おそらく、私は三島由紀夫の思想や語りは好きだが三島の考える御話は好きではないのだろうなと感じた。