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パリ政治学院出身。パリ・スクール・オブ・ビジネス国際関係学教授のフレデリック・アンセルの著。
表紙裏
本書はイスラエル地勢宅の専門家として知られる著者がテーマをあらゆる側面からとりあげた
・イスラエル国創設の起源となる思想の流れと歴史的事実
・人口問題・・幻想から現実まで
・資源に関する複雑な問題・・水、エネルギー、頭脳、貿易
・目まぐるしく変わるイスラエル・パレスチナ交渉の歴史
<シオニズムからイスラエル国へ>
シオニズムとは、ユダヤ教を宗教としての次元から、-紀元70年のユダヤ戦争でエルサレムが陥落し、約束の地でユダヤ人の主権が失われて以降の唯一の手段としてー 政治の次元に転換しようとするもの。ここで重要なのは、宗教としてのユダヤ教を、民族としてのユダヤ人のもとに置くことだ。この「新しいユダヤ人」の二つの特権は、土地を耕し、そこで自衛することである。
○聖書の時代ー表現にみる領土
・エルツ・イスラエル(イスラエルの地)「パレスチナに対するユダヤ人側の呼称」はユダヤ民族のゆりかごの地である。この地でユダヤ人の精神的、宗教的、民族的アイデンティティが形成された。
『文書でみるエルツ・イスラエルの異なる意味のとり方」の表をヘロドトス「歴史」より作成した。
カナンの国境、シナイからユーフラティス川まで、ネボ山での約束(モーゼ)、12部族の領土、ダビデ王とソロモンの王国 の考える領土が表になっている。
○最小限の共通項
トーラー(モーセ五書。旧約聖書の最初の5つの書)で、神が明快に約束した地と、モーセの後継者ヨシュアが約束の地カナンを征服(紀元前13世紀)したあと、ヘブライ人が実際に取得した土地に関して、両者をつきあわせると、つねに出てくるのがエルサレムであり、ユダヤの血、サマリア(現在のヨルダン川西岸地区の南と北)、ガラリヤ、ネゲヴの北、そしてヨルダン渓谷である。
結局のところ、シナイ半島~一般通念とは逆に、そしてまた、シナイ山でモーゼが授けたはずの基本の神話があるにもかかわらず~は、エルツ・イスラエルの掟に組み込まれたことは一度も無く、ヘブライ人にとっては聖地への通過点でしかなかった。
<イスラエルに戻ったユダヤ人の出生地>
旧ソ連1000千人、ルーマニア260千人、ブルガリア・旧チェコスロバキア130千人、モロッコ260千人、イラク130千人、イラン50千人、アメリカ130千人 など。
2020.9.10第1刷。