投稿元:
レビューを見る
本書を読むことで、メディアで報じられなかった現場の状況・課題を知ることができた点は良かったと思います。特に、横浜に停泊していたクルーズ船でのクラスターに関する問題については、責任者のあいまいさ、現場に降りてくる情報が限定的、患者の出身国によっては通訳できる人がいない問題など、テレビやネットではあまり得られない情報が多く記載されていました。
これらの課題は、今後のインバウンド強化や(出来ないと思ってますが)東京五輪を踏まえると、早急に対策が必要なものだと思いました。
また、今回の新型コロナウイルスとの戦いを国防ととらえ、対策を講じるべきという意見は「なるほど、もっともだ」と納得。
ただし、不満な点も少なからずあります。
医療ファーストすぎる提言もありますが、それについては医療スペシャリスト側の提言ということで、理解できなくはないです。ただ、あまりにコスト度外視なものや、大阪における病院・保健所の統廃合により検査体制・患者受け入れ態勢が不十分になったなどの批判は完全に後出しじゃんけんで(もし、当時から新種ウイルス拡散に備えての批判だったなら、その限りではないです)読んでいて辟易しました。
そしてもっともうんざりした点は、個人的な政治イデオロギーを盛り込んだ内容。これは全く本書の趣旨から外れており、そのほとんどが感情的だったり「ではどうすれば良かったのか」という対案などがなく、だだの不満・愚痴にしか見えませんでした。
そうした不満な点はありつつも、これまでの振り返りとそれを踏まえた感染対策・治療体制の備えは絶対に必要だという点は、本書の執筆者たちを含む多くの人の間で共通して認識していることなのだと思いました。国会では学術会議問題が大々的に取り上げられていますが、優先順位を考えればコロナなどの新型感染症対策の方がはるかに重要だということは明らかなので、そちらの議論を優先的に行ってほしいものです。