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よく出来た寓話。
まさに帯に書かれている通り。→これは、過去でも未来でもない「今」だ。目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。
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架空の町を舞台に、「羽虫」と呼ばれ差別をされる移民が不可解な事件に巻き込まれていく。権力者に踊らされ暴走していく町を描いた、社会派ミステリー。
最初のうちは、母親が失踪した事件を追う少年の成長の物語かと思っていたら、そんな生やさしいファンタジーではなかった。
平和ボケした町では、投票率の低下から選挙が廃止になったことを皮切りに、市民のためと称した教育の改革、図書館の書籍の規制、新聞報道への介入など、一部の権力者の都合のいいようにすべてが統制されていく。そのかたわらで、移民である羽虫は人間扱いされず、元からの住民たちの不満のはけ口となる。
排他的で不正がはびこる腐敗した町が行き着く先には、もう戦争と破滅しかない。
大国のみならず、この日本も含め、世界が徐々に危険な方向へと進んでいる今だからこそ、作者の熱のこもった警鐘は真っ直ぐに胸に響いてくる。次々に明らかになる救いのない状況はひたすら重苦しく、じっくり読み込むほどにつらさが増す。
読み終えてから、もう一度序章を読み返す。なるほど、そういうことだったのかと、作者の巧みな構成にしみじみと余韻を味わった。
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語り手の視点が変わることで一つの事象の異なる形が見えてくる、いわゆる「藪の中」構成はさすが。
登場人物たちのそれぞれの「事情」「特徴」に個性があって感情移入が容易になるキャラクター造形もさすが。
ただですね、戦時における全体主義の話になると、これはもういろんな小説や映画で読んだことがあるありきたりな展開で非常に興ざめ。
ストーリーテラーでいずれ直木賞作家となる方だと思うのでこういうのもありなのかもしれないですが。
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近未来だか、架空なんだかのSFファンタジー?
期待とはだいぶ違ったし、難しいし、重かったけど、悪くはなかった。
差別は嫌だな。。。
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どこか遠い異国の昔話のような、足元に広がる先にある町のような、不思議な感覚になるお話。
ディストピアのような辛さが終始漂うんだけど、羽虫と蔑まれている人たちの芯の強さがある時は強く、ある時は弱く光を差している。
面白かったけど、疲れた。本を読むのにも気力体力がいると、歳をとると痛感する。トゥーレのお母さんの気持ちを思うとやるせない。
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この本がより多くの人に読まれることを望みます。
これをファンタジーだと割り切れる人が少なからずいることが空恐ろしいと思った。
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あれ?ファンタジー?ミステリーじゃないの?腑に落ちぬまま読み進み、その苦さに胸ぐらを掴まれる。風刺なんだ…と気づく。
こちらに投げかけてくるものは、今までの作品と同じ。大きなものに捻り潰される小さきものの姿。そのあいだで目を瞑ることは、蹂躙に加担することではないのか、という問い。それなのに、抗うことの無惨と無力まで畳みかけるように突きつけてくる。
そんな不穏さのなかでも、きらきらしたものがところどころにあって、それが私たちを生かしているんだな、と感じた。
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羽虫と呼ばれる流民を母に持つ少年トゥーレ,映画館の受付のマリ,葉巻屋の覗くコンテッサ,流れ着いた魔術師によって語られる始まりの町の崩壊の物語.全体的に説教臭いところが気になるといえば気になるが,この第3帝国的な忍びよる足音の不気味さを現在に当てはめて警鐘を鳴らしたいのかもしれない.でもそれはそれとして,それぞれの語り手が魅力的で,その人生の中で夢見た奇跡の思いが胸にしみた.
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何年も待った太田愛の新作。読み始めて思う。これって太田愛か?翻訳ものみたいだ。
第4章で分かった。太田愛だ!
「だが、戦争は結果にしか過ぎない。夥しい死は、無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または選択と思わずに同調した結果なのだ」などの言葉に
動かされる。
なるほど現代日本に生きる者への警鐘なのだ。
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読書備忘録570号。
★★★☆。
探偵3部作でドハマリした太田愛さんの最新作。
結論としては入り込めなかった。
異世界が舞台。「始まりの町」に住む<羽虫>と呼ばれ差別を受ける他所から来た人々の物語。
異世界であることでまず、感情移入できない。
<羽虫>は日本で言えば、各地に未だ残る例の差別を思い浮かべる。でもなかなか可哀そうと思えない。異世界が邪魔して。
始まりの町の父と羽虫の母を持つハーフの少年、トゥーレ。大型客船が寄港した日。町はお祭り騒ぎ。父は母にドレスを着せて祭りに繰り出す。そこで悲劇が。やはり羽虫は・・・。
映画館のフロント係の羽虫のマリ。誇り高き住民のはずの男たちは、夜な夜なマリのところに通う。ゲスそのもの。そして悲劇は起こる・・・。
羽虫の葉巻屋。吸殻を拾い、残った煙草を巻き直してわずかな収入を得る。そして目立たないように生きる。そして町の情報屋。町の伯爵の囲う羽虫の美女コンテッサは恐ろしいたくらみを企てる。それを知った葉巻屋は・・・。
始まりの町のあらゆることを見てきた魔術師。すべての物語はひとつに・・・。
だめだ、感情移入できない。笑
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2021/03/22 読了。
図書館から。
トゥーレ、カイ、アレンカ、コンテッサ、
ハットラ、パラソル、怪力、マリ、葉巻屋、魔術師…。
小さな奇跡を願うしかないと思うと切ない。
それでも、祈りは願いはままならず、
他者の自覚のない行動や言葉によって狭まれていく。
彼らの視点で物事を見ていくとバラバラの事件が
繋がって解れていき、真実が見えてくる。
最後が切なかった…。
ファンタジックな感じに進むけれど、
現実問題としても考えられるお話で、重い…。
ナリクにとって幸福な未来が待っているといいなぁ…。
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既読太田愛作品3冊目にして初めての凡作。
最後まで世界観がわからないまま読み終えてしまった。
軽トラックや電車、自動販売機がある世界で馬車が走り、時間の流れが下界とは違う塔があり、被差別移民や魔法使いがいるような世界。
不思議というよりチグハグ。
「天上の葦」で扱った、権力者の暴走を許すとどうなるかを今作でも語っているが、完成度は雲泥の差。
名前も覚えづらく、登場人物だいたい嫌なやつ。
胸糞なシーンもあり、ラストもどこかはっきりとしない。
これまで「幻夏」「天上の葦」を読んでいて、特に「天上の葦」は大好きな作品だっただけに今作は本当に残念。
次作はファンタジーでないことを願う。
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最初はこの作者の他の作品との作風の違いに戸惑い、最後はやっぱりこの人の作品だ、と思う着地。
架空の世界で始まる物語り。世界観を捉えることに終始する1章、が終わるとそこから先はどんどん加速していく。
2章以降で展開されてわかる、弱者が権力や国家に虐げられるお話。うん、この作者の作品だ。
終始やるせない思いが漂う作品なのに、登場人物の傷ついているから故持っている優しさとか思いやり、うちに秘めた強さ、が魅力的な作品
2021.4.29
57
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前作までのものとは全く違う世界の物語。私この人の文章が好きなんだろうなぁ。暗い、人間の底意地の悪さというか弱さを隠さず書いてるのに、手が止まらなかった。推理もののスピード感やドキドキ感はないけど、風景が美しい。
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2021夏の文芸書フェア
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