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書きたい感想がたくさんあるので、整理して良かったところといまひとつだったところに分けることにする。
[いまひとつなところ]
★これまでの作品のファンを完全に裏切る架空の国の話であること。登場人物の名前もなかなか頭に入らず、実は二回ほど序章で挫折した。
★虐げられる人間の話は辛い。苦しい。
[良かったところ]
★抜群の構成力。さすが。最初はトゥーレはお母さんを殺してしまったんだなぁ、嫌な話だなぁと思って読んでいたのに、真相が二転三転していく。思わず読まされてしまう。ラストに、これまであまり重要視してこなかった登場人物が全体を俯瞰するのも良い。
★作者がこれまでの作品でも書いてきた、世間の仕組にとりこまれていく人間の様が恐ろしいほど鮮明に書かれていた。集団心理?長いものには巻かれろ的な。特に怪力の死体に町の人間が襲いかかるシーンは色つきで想像できるほどにリアルで恐ろしい。
★社会の仕組に取り込まれない人たちの抵抗、生きざまもしっかり書かれていた。救いはなかったけれど。
★敢えてファンタジーな世界を設定したことで、実はこの物語で起きた理不尽なことは、リアルな世界でもいつでも起きることなんだと逆説的に主張しているんだろうかと思った。
すごい作品だとは思う。ボリュームもあるし。でも、好きか嫌いかと言われたら、好きとは言い切れない。作者なら、これまでの作品のようにリアルな世界にこれらの主張を織り混ぜて、エンタメ的に読ませることもできたのになと少し残念に感じた。
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今までの作品とは全く違いました。前情報もなく読んだので驚きもあり、少しがっかりもしました。伝えたい事はよく分かりやすく描いている、絵本のような小説でした。
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犯罪者、幻夏、天上の葦を読んでの今作
正直、よくわからん
ファンタジーものなのか、登場人物もよくわからん
途中でギブアップです。
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ファンタジーのように寓話めいた、しかし嫌というほど現実の社会を想起させられてしまう物語。
その町の人間であることを誇りに思い、指導者や権力者に従うことしか良しとしない「塔の地」の人々。「羽虫」と蔑まれ、公然と差別される余所者の母を持つ少年トゥーレ。蔑まれながらもどこかしら超然とした「羽虫」であるマリ。傍観者に徹しながらもすべてを知ろうとする葉巻屋。そしてすべての物語を知り、見届ける時を待つ魔術師。各人の視点から紡がれていく物語は、一見現実離れしているように思えながらも実に辛辣です。
差別に関してもそうだし、施政者に従うのみで自分で何も考えようともしない姿勢といい、そして無自覚に破滅に向かっていく道行きといい、これはどこの世界でも起こりうる事件であり、人災なのでしょう。物語の中には優しさも感じられるのですが、それでも残酷で閉塞感に満ちたこの世界観にはぞっとさせられました。
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現実としてあり得る世界とは思いますが、暗澹たる気持ちがずっと続いて共感は出来ませんでした。
鑓水シリーズの作風とは全く異なります。
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太田愛さんの「彼らは世界にはなればなれに立っている」を読みました。
「犯罪者」シリーズとはだいぶ違うというのは読書ともだちから聞いていたのだけど…思った以上に違って驚いた。完全に別ジャンル。
そしてなかなかに読みづらかった!(笑) 和訳された外国の物語を読んでいる感じだった。登場人物たちの名前が外国っぽかったからというのもあるとは思うけれど、それ抜きにしても、言い回しや雰囲気が海外のそれに思えた。
残りあと三分の一くらいになって、ようやく入り込めた。前半は長く感じたなー。後半は割と夢中で読んだ。
出てくる人たちは魅力あるんだけど、そのほとんどが嫌な目に遭ってしまうのでつらい。ストーリーも、何だかずっと不穏でずっと暗くてあまり救いもないので、読んでいて楽しい気分にはなれなかった。
ラストは少し光が見えるような気配もあったかな。
最初は淡々と、途中でミステリー要素が出てきたかと思ったら、そのあとファンタジーな展開になったから何だこれ?と少し戸惑ってしまった。
遠い異国、架空の世界のお話のように描かれているけれど、その実情は現実の世界でも起こっていること。知らないうちに世界は腐る。
すごく伝わったけれど、いかんせんとっつきにくかった。
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ファンタジー色がありながら、残酷な世界が描かれており、内容は全く異なるが進撃の巨人を読んだ時のような印象を持った。この表現はなんの寓話だろうと考えながら読了。
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*
帯に書かれた幾人もの推薦コメントに
どんな話だろう、と惹かれて手にしました。
まさに、いつかではなく、今もどこかで、
いや、直ぐそばで起こっている現在形の話。
ラストに至るまでの、何人もの人の想いや願いが、
最後363ページからラストにかけて、
強いメッセージとして集約されて感じました。
奪われ、虐げられ、差別され、それでも
願うこととは何か。
人との違いに優劣をつけて、他者を蔑むことで
自分を守り、そうやって手にした優位性に
なぜ安堵してしまうのか。
それ程までして自分を守ったのに、それでも
傷つくのはなぜなのか。
奇跡とは……。
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少しづつ独裁政権になっていく怖さを書いている。目を背けたい。しかし安易な方に流れると廃墟になる。無関心や我が身かわいさの卑近な行動が、未来を失くす。次世代へ伝えたい気概がこの本の芯だろう。
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2024.3.30 読了
やっぱり太田愛さんの作品好きだなと改めて思いました。
本作は鑓水シリーズのようなわかりやすいエンタメ作品とは違うけれど頭の中にしっかりと映像が立ち上がってくる文章が相変わらず素晴らしくて物語に没入できました。
-子どもたちは常に、大人たちによってあらかじめ形作られた世界に生まれてくる-
自分はこれから生まれてくる子どもたちのためにどんな世界を残そうとしているのだろう
ファンタジーでありながら人間の弱さや愚かさを生々しく描いていて深く考えさせられる物語でした。
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内容が全然わからないまま読み始めて、中盤まで読んだけどやっぱりテーマが分からず、読み進めるのに難航した。
魔術師の章が一番好き。他の話は悲しすぎて。
最後の方の言葉
子供たちは常に、大人たちによってあらかじめ形作られた世界に生まれてくる。大人が見たいものだけを見て浪費した歳月の負債は、常に彼ら次の世代が支払うことになるのだ。
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★2.5 苦しくて再読はないかなという意味で
人は哀しい程未熟な存在であると思い知らされる。
社会的な生き物だから大衆に流されるのは容易いし、理性や良心も、状況の変化等少しの取っ掛かりや鬱憤の蓄積ですぐに崩れてしまう。性衝動は誰にでもあるもので、欲望に抗おうとしなくなれば、女こどものような弱い存在はすぐに食い物にされる。
今の生活に身を置く自分は、そんな事はしない、良くないことだ、と言い切れるけれど、例えば閉鎖的な集団社会の中で、災害時や戦時下で、私たちは私たちの理性を保ち続けることができるのでしょうか。
何を以て自分の良心を守り続けることができるのだろうか?
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太田さんの作品が好きでこちらも借りてみたら、まさかのファンタジー?!
とんでもないです。ファンタジーの形をとった風刺作品、いや、警告のメッセージかもしれません。
差別、戦争、政治の腐敗。今を生きる私たちにも遠い国の出来事ではないのかもしれない。
太田さんのすごさがわかる作品でした。
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読んでいて苦しくなる一冊でした。
・備忘録
戦争は結果にしか過ぎない。
夥しい死は、無数の人々の選択の結果、あるいは選択を放棄した結果、または選択と思わずに同調した結果なのだ。
子供たちは常に、大人たちによってあらかじめ形作られた世界に生まれてくる。大人が見たいものだけを見て浪費した歳月の負債は、常に彼らの次の世代が支払うことになるのだ。
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苦しい...
太田愛作品ということで、飛びついた一冊でしたが、読了までに1週間を要しました。
4章からなる本書は、章ごとに語り手が変わっていきます。
物語の舞台は架空の町「塔の地の始まりの町」。
「羽虫」と呼ばれる他の町から移って来た人々と、町で生まれ育った誇り高き人々の物語。
時間軸の中に描かれるのは移民、差別、排除、独裁、犯罪、戦争...
過去と未来、架空の町の架空の物語。
しかし、読み終えた読者にはどことなく感じる部分はあるように思います。
単なるファンタジーでも、単なるミステリーでもありませんが、読みながら「タタール人の砂漠」を思い出しました。
私には読むのが苦しかった故の☆2つ。
きっと評価は大きく分かれる作品だと思います。
帯に添えられた言葉がまさに本書を表現しています。
これは、過去でも未来でもない「今」だ。目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。鴻巣友季子
この物語は「どこかの国」の話ではないのかもしれない...。町山智浩
本書を読み解ける力がまだまだ私には不足しているようです。
この物語は遠い世界のものではない。注目の作家が描く、現代の黙示録。
「この町はとっくにひっくり返っている。みんなが気づいていないだけでな」
〈はじまりの町〉の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、「羽虫」と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやってきた日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレ一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。
消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。
ドラマ「相棒」の人気脚本家が突きつける、現代日本人への予言の書。
内容(「BOOK」データベースより)
“始まりの町”の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、“羽虫”と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやって来た日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレの一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。「相棒」の人気脚本家がいま私たちに突きつける、現代の黙示録!
著者について
●太田 愛:香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予��的に描き、大きな話題となった。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
太田/愛
香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者クリミナル』(上・下)で小説家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)