紙の本
「型」にアイデアはめ
2021/12/09 11:05
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投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
上方を拠点にこれまで作った新作落語は263本。古典の復活や改作も含めると手がけた演目は倍以上になるという。落語作家の小佐田定雄が、創作の経緯や多彩な演者とのエピソードをまとめた本書。落語家は自ら新作を作ることが多く、漫才なども手がける演芸作家ではない「専業」の落語作家は珍しい。パイオニアとして地歩を築き、活躍を続ける小佐田は「この本をきっかけに新しい落語を書く人が現れたらうれしい」と後進に期待する。高校生の時、笑福亭仁鶴のラジオ番組をきっかけに落語会に行き、桂枝雀のファンになった、とのこと。1977年、自作の新作落語を披露する会を始めた枝雀に「エールを送るつもり」で台本を書いて送ると、すぐに本人から電話がかかってきて上演が決まった。その「幽霊(ゆうれん)の辻」は、今も東西の多くの落語家に演じられている。
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2021年2月8日に天満天神繁昌亭で小佐田定雄先生の落語会が催されると聞き、あの桂雀三郎師匠の「G&G」が生で聴けると知ってさっそくチケット購入!その予習の為に本書を拝読いたしました。恥ずかしながら「G&G」が小佐田先生の作とは存じ上げず、数年前の彦八まつりで雀三郎師匠を捕まえて「『G&G』の中で「宇宙戦艦ヤマト」の替え歌を歌ってくださってありがとうございます。ヤマトのファンとしてお礼申し上げた方んです!」とお伝えして、師匠をきょとんとさせてしまったのも、いい思い出です。
さて、小佐田先生といえば、言わずと知れた上方落語を陰で支える落語作家の大先生。しかし私は「落語作家」という人たちは創作落語・新作落語を作るのが仕事、お思っていたのですが、今回この本を読んで、東京の落語を上方に移し替えることもなさっているということを、初めて知りました。「タイトルだけが残っている話を復活させる」というかい枝師匠の落語会のことは、ツイッターで流れてくる情報で存じ上げておりました。
そういうわけで、「あの話も小佐田先生の作やったんや!」という驚きがいくつか。そして、大河ドラマ『いだてん』ファンの人にはうれしいというか、垂涎のエピソードも載っていますので、興味ある方は探してみてください。
実はわたくし「自分でも落語を書いてみたい」という野望を持っているので、たいへん学ぶところが多い本でもありました。上方落語の聞き方がまた一つアップグレードしたような、ますます落語が好きなになる、そんなご本でございました。
小佐田先生の会、楽しみでございまする~。
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新作らくごを演ずる噺家は自分で落語をつくることが多いが、この本の著者は噺家ではなく落語作家を職業としている。
昔から落語の作り方については興味があったのでとても興味深く読みました。
新作らくごの創作にまつわる話なんてすっごく面白い。
著者は昔からショートショートの星新一やSF小説が好きだったとのことでとても共感。
新作らくごってどんな風に書けばよいのか知らなかったけどこの本を読んだおかげで少し雰囲気がわかった。
落語作家を目指すつもりはないけど、いつか落語はなしを書いてみたいなと思います。
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枝雀、米朝のブレインとして数々の新作落語を創作してきた奇才 小佐田定雄が自作落語を語るシリーズ4冊目。上方の落語家や落語イベントを紹介しつつ、自作落語のあらすじ、創作秘話、エピソードなどを綴る。すっかり古典落語だと思い込んでいた噺が実は小佐田定雄の作品だと知って驚くことしばしば。
東京だと新作落語は落語家自身が創るのが一般的で、落語作家という職業は成立していないように見えるが、どうも自分が作ったネタには妙な想い入れが残るのか、スッキリした噺にならないことが多い(圓丈とか)。人が作った噺であれば、演者が思い切って直せるので、洗練され、円熟しやすいようだ。