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主人公のルカさんの生き様は
私の三十代の生活そのものでした。
川口で育った私には鋳物屋さんは身近な存在でした。
と言っても、バブル以前から鋳物屋さんはどんどん消えていくのを目の当たりにしたのも事実です。
そんな状況で奮闘する主人公の気持ち、行動が手に取るようにわかって最初から最後まで楽しめました。
前回の東京オリンピックの聖火台は川口の鋳物で作られましたが、今のオリンピックの体制に疑問を持つ私としては、そこにはあまり気持ちがのれず。
ただものづくりの現場がリアルに感じられる、躍動感あふれる作品です♪
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小さな町工場をどうやって生き残らせるか、
女性常務の奮闘が描かれている。
ぶぅぶぅ文句垂れるだけでなく、
前見て進んでいく姿は素敵。
自分の仕事が好きなのも羨ましい限り。
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家の中にもたくさんある鋳物。
なのに、どれが鋳物かなんて、考えたこともない。
ということもあって、どんな世界かと思い、読んでみた。
作家さんも今回が初めましての人だ。
お仕事小説を得意とする人のようだ。
主人公は女性の鋳物師、清澄流花(ルカ)。
墨田区の吾嬬町にある実家の鋳造所を継いだ「三世」だ。
営業をするだけでなく、自身で流し入れもする。
成熟産業で、もはや新しい展開がしにくいと思われている中で、新しい工法を開発したり、作業の仕方を改革したりと、とにかく前向き、ひたむきに努力する。
そんな彼女の成長がまぶしい物語。
が、この話は、そのメインストーリーと絡み合うようにサブストーリーが展開する。
それはルカの祖父母の物語。
勇三は家族に捨てられ、ルカの曽祖父である仙吉の木型製作所に流れ着く。
戦争がはじまり、勇三は仙吉や娘の志乃のとどめるのを振り切り、特攻に志願する。
訓練中の怪我で生還するものの、自分の居所をなくし、復員後は放浪生活を送る。
焼け跡の上野駅で出会った男が太宰治だった―というのは、ちょうど『中野のお父さんは謎を解くか』を読んでいたので、妙な符合にびっくりする。
最終的に清澄木型製作所に戻ってきて、鋳造所に商売替えしていくことになる。
そこから高度成長期を迎え、懸命に働き、東京オリンピックの聖火台のコンペに参加するほどになる。
自分だってこの時代を知らないけれど、なんと勢いのある時代なんだろう。
翻って、孫のルカも、2020年の東京オリンピックで今度は聖火のトーチのコンペに挑むわけだが。
どちらかというと、こちらのサイドストーリーの方がかなり印象的。
鋳物といえば、関東なら埼玉の川口市。
「キューポラのある町」とかいう映画もあった(見たことないけど)。
そこではなく、東京の町中にこんな鋳物工場があったというところが面白い。
小さな事業所が、「小さくても強い会社」となる。
夢のある話だ。