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1949年作品。当時既に下火になりつつあったスペース・オペラの最後期を飾る、直球王道ど真ん中、なんともド派手で煌びやか、とにかく楽しい、面白い、わかりやすいスペース・オペラ。エドモンド・ハミルトン自身も楽しんで書いたんじゃないですかね。
何分にもスペース・オペラですので、小難しい理屈は不要です。
主人公ゴードンの短絡っぷりがもぅ一周してきて清々しいぐらいで(笑)、「冒険がしたい」だけの理由で銀河帝国皇子というどう考えても難易度の高いキャラ設定に飛びつくわ、美女に出会うと速攻で一目惚れするわ、敵戦艦に捕まえられて後先考えずにその船の中枢部を破壊するわ、実際にこんなヤツが自分の周囲にいたら絶対に近づきたくないタイプ。そんなバカ丸出しのキャラに見えるのですが、何故か政治的センスだけは抜群で、危機に陥るたびに口八丁手八丁で周囲の者たちを味方に付け、最終的には銀河帝国皇子として同盟諸国を見事にまとめあげ、皇統にのみ伝わる伝説の超弩級最終兵器<ディスラプター>を稼働させて暗黒星雲同盟を撃破する・・・という、笑っちゃうほどのご都合主義に満ち満ちた夢物語です。
ご都合主義はスペース・オペラの常道ですので、それはこの作品にとって瑕疵にはなりません。むしろ、鴨的にとても興味深かったのは、王道スペース・オペラの華々しい体裁を取りつつも、そこかしこに見え隠れする冷静な精神です。主人公ゴードンは一見おバカキャラですが、意外と思慮深い一面があり、いずれ本当のザース・アーンに身体を返すことに備えて20万年先の社会を自分個人の考えで変化させないように努力する意思が感じ取れます。敵役のショール・カンがまた魅力的なキャラクターで、暗黒星雲同盟の結束を維持するために敢えて独裁者の如く振る舞い、強い言葉で檄を飛ばし続けますが、それがスタンドプレイに過ぎないことを十分自覚しており、裏では極めてビジネスライクに勝ちを取りに行くという、実に現代的な価値観の持ち主です。黄金時代のスペース・オペラとは一線を画する、地に足のついた視点を感じますね。ハミルトンらしいです。
と言いつつも、やはり何分にもスペース・オペラですので、大時代的で非現実的な舞台設定と筋運びを虚心坦懐に楽しむのもまた良し!
なんと言っても、宇宙戦艦を真空管で動かしやがりますし(爆)、最後の最後に登場する伝説の超弩級最終兵器<ディスラプター>が「配線を順番に繋げて照準合わせてスイッチ押すだけ」だし(これはマジで脱力ヽ( ´ー`)ノ)、そりゃもぅ突っ込みどころ満載ですよえぇ。
考えてみると、「冴えない現代男性が異世界に転生して、ツンデレ美女と恋に落ちつつ、無双して世界を救う」って、今時流行りの典型的な「異世界転生もの」ですよね。実は今時の若者にも受ける作品なのか!?時代の流行って、本当に繰り返すんですねー。