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相続税申告書のチェックポイントが項目別に解説された書籍。筆者は、相続専門の税理士法人チェスターで相続税申告書の審査担当をする公認会計士・税理士。本文中、公認会計士ならではの視点でチェックポイントが記載されており類書を見ない構成だ。意欲的な書籍で、相続税申告を扱う税理士にはお勧めだ。
P187
ここで、分かりやすい文章を書くための、誰でもできる工夫例を幾つか挙げておきたい。
①一文を短くする。
読みやすい文章の王道は、何といっても一文を短くすることである。
最初に書くときは長い文章でも構わないので、その後、推敲をして一文を短くするよう心掛けてみたらどうか。
②主語や述語の順序を統一する。
一文における言葉の並べ方を、「誰が、いつ、誰に対して、何をした。」という順番に並べるように意識してみる。
これだけで、読み手は安心して文章を読むことができるようになる。
③接続詞の使い方を統一する。
接続詞の使い方については、その使い方を統一しておくというのも大変有益である。
例えば、「したがって」という接続詞を、一つのテーマのまとめのところで使っている場合、他のところでは、「したがって」を用いるのは避けて、別の接続詞を使ってみる。
そうすることで、この「したがって」 という接続詞が出てきたら、このレベルのテーマの最終の結論を示そうとしているのだということを読み手に意識させることができるのである。
同趣旨の接続詞であれば、常に大小関係を決めておいて、このレベルだったらこれを使うというように、接続詞に序列を付けて使うようにしてみるとよい。
P214
審査担当者コラム
相続税調査における調査官の本懐
国税不服審判所に赴任している税務職員の方や資産税系統出身のOB税理士の方にお話しを伺うと、「土地評価といっても税理士関与の申告であれば基本的には間違えないし、土地評価に難癖をつけているようでは調査官としては負けだよね」 といった趣旨のこぼれ話をお聞きすることがあります。
(略)
それは、上記の「税理士関与の申告であれば基本的には間違えない」という思考が調査官の初期設定であるほか、相続税申告ソフトを利用して作成されているものであれば、基本的には計算誤りもないことから、あまり土地評価に時間を費やしても実のある事績にはつながらないという認識があるからだと考えられます。
しかし、土地評価に関心が薄い調査官であっても、名義預金や贈与といった「当初申告において相続税又は贈与税の課税財産の範囲に入っていないもの」については大きな関心を寄せますし、むしろ、それ以外には関心がないことが「見え見え」の調査官もいるくらいです。
こういった調査官は、「当初申告に計上のない財産をどれだけ取り込めるかが相続税を担当する調査官の腕の見せ所である」 と考える傾向にあり、税理士が誤った土地評価をしているか否かに手を付けるしかできないことは、「自分は当初申告に計上のない財産を見つけられませんでした(見つける能力がありませんでした)」と自白しているに等しく、大げさに言えば屈辱的なことなのだそうです。
相続税の申告に携わる税理士にとってもっとも難しいことは「計上する財産の網羅性が確保されているか否かの心証が得られること」であり、財産調査の丁寧さに相続税申告の品質が顕れるものですが、見方を変えれば、調査官にとっては「当初申告に計上のない財産をどれだけ取り込めるか」 がもっとも高度で、かつ、それを突き詰めた時のやりがいも大きいのだろうと推察されます。
そうすると、相続税申告に携わる税理士としては、この 「相続財産の計上の網羅性」に関連する論点については重点的に関与し、それ以外の論点については、相対的に時間をかけずに処理するといった意識が望まれるところであり、そうすることによって、税務調査において指摘される確率を極小化することにつながると考えられます。