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投稿者:J.J. - この投稿者のレビュー一覧を見る
思い込みとプライドにしがみつき、目の前の事実と積み上げられたデータから眼をそらす。人は過ちを繰り返す。
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1900年代、すごい時代だなーと思った。すごく価値のある発見や発明で、大きく進歩もしたけど、とんでもない失敗もたくさん。現代からすると信じられないようなことばっかりだけど、もしかしたら100年後の人たちも現代について同じような感想を持つのかも。失敗を繰り返してやっとまともな世界に生きてる、ああよかったと思ってるのは今の人だけなのかも。何が正しくて何が正しくないか。散々歴史を積み重ねて学んできたはずなのに、何回も間違える。多くの人が正しいと思ったことでさえもそうじゃなかったりする。結局現在進行形で起こってることの答え合わせはできない。実際世の中のいろんなものを根拠なく信じてる。信じてよかったのかどうか、それは結果が出てからじゃないとわからない。むずかしいのは、結果がいつわかるのかもわからないし、結果だと思ったものが違ったりもするってこと。
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私はずっとレーシック手術の決断を迷っていた。といっても病院に行って情報収集をするまでではない。レーシックという夢のような手術をすれば、視力0.5の世界からピントのあう視力1.0の世界に変えてくれるらしい。しかしレーシックには看過できない問題がある。1つめは確率は少ないとはいえ、後遺症に苦しむ人がいること。重度の後遺症から、夜目がやや効かなくなったと言う人まで様々だ。もう1つは、眼科医はほとんどレーシックをしておらず、コンタクトすらもせず、メガネを突き通す人がそこそこ多いという点。夢のような技術ならば、眼科医どころか医者はみなレーシックをしているはずだ。医者は医学について学び、データを信用し、常に知識をアップデートさせる専門家だ。なぜ彼らはレーシックを受けないのだろう?
いくら有名な人がたくさん受けていても、たとえそのメリットを大きく語っていても、後戻りのできない外科手術を目に施すのは、慎重になるべきだ。
【ロボトミー手術】
50年前の常識はいまはホラーSFの題材になりえる。この本のテーマの一つはロボトミー手術だ。20世紀中頃まで、医師も、精神病患者を抱える家族もロボトミー手術を受け入れた。ウォルター・フリーマンによって脳の左右に2本のアイスピックを刺された。ただ脳をいたずらに傷つけ、多くの患者が脳出血で死んだ。ロボトミー手術は向精神薬が登場するまで、実に20年間にわたって行われ続けた。ロボトミー手術という単語は、いまでは恐ろしいことを揶揄するのに使われる。でも全く笑えることではない。この本には書いてある。ロボトミー手術の話から得られる教訓は、言うのは簡単だが、実行するのはとても難しい。手っ取り早い解決策には気をつけろというのがその教訓だ。
【天才科学者】
妻がピストル自殺をしたその夜、フリッツ・ハーバーは睡眠薬でよく眠っており、翌日何事もなかったかのように仕事にたったという。妻が自殺した時、母の助けを求めて泣き叫んだ14歳の息子は30年後に自殺している。ハーバーの息子にして、人の心をもって生まれてしまったことの苦しみは想像に難くない。
そのハーバーが生み出した毒薬は同胞をも大量に殺したが、彼がハーバーボッシュ法を生み出さなければ、硝酸アンモニウムがこれほど畑に撒かれず、私たちは21世紀に入っても飢餓の連続で、ましてや穀物をエネルギーの原料に使おうなどと考える人がいなかったかもしれない。少なくともおなかが空いた時に食べるものが冷蔵庫にあるのは、ハーバーのおかげかもしれないことを胸に刻む。
科学は失敗の連続であることをなんとなく知っているが、その時代に生きた人が何十年も信じた「正しい考え」は事実とデータによって誤っていたことが証明される。アドルフ・ヒトラーは1933年にドイツ国首相になってから、約12年間にわたって君臨している。ただの半年間ではない。干支一周分は中心にいた。民衆は熱狂し、ナチスを支持するのは正しい考えだと思っていた。
この本に出会えて良かったと心から思う。
直ちに影響が出ることはないが、直ちに改善することもまたない。
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アメリカの事例を中心に、結果として大きな問題を引き起こした7つの発明の経緯を追うことで、未来への教訓を導こうとする一冊。非常に面白かったが、描写される現実が時として非常に恐ろしい。特に優生学。
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Factfullnessと一緒で目を覚まさせてくれる一冊。
名誉や権威さまざまな素晴らしく思えるもので、判断しがちだけど、やっぱデータが全てと言うことらしい。
数字やグラフの読み方をもう一度勉強し直そう。
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アヘンとモルヒネとヘロインとオキシコンチンが同じものから出来ていたとは知らなかった。
優生学もロボトミー手術も今だから間違っていると思えるものの、当時だったら疑ってなかったんだろうなあ。
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データがすべて。
良いと信じられていたものが、実は良くないものだった話が七つ。
優生学とかDDTあたりはなんとなく知ってたかな。著者がアメリカ人だから、基本アメリカの話なんですよ。アメリカで一大ムーブが起きた事例がメイン。
ロボトミー手術とか、聞いたことはあるけど、日本でやってたりしたのかね。物語のなかのことだと思ってるかもしれない。それを大真面目にやってたというか、できていたことが怖いなぁって。
どれもこれもね百年も経ってないんだよ。たかだか百年前なのに、世界はこんな感じだったのかって。だから、百年後に今のコロナ関係の対応を見て、「たかだか百年前はこんなに遅れてたのか」って思われるんだろうなぁって。
だいたい、トンデモ論が展開されるとき、データが無視されてるんだなってことはわかりました。
ただ、今はネットやらなにやらで情報は手に入りやすい時代だから、そのあたりで多少はトンデモに踊らされないのかなって思ったけど、情報が多すぎるからこそ、トンデモがはやりやすいのかもしれない。
いろいろと胃に来る愚行が多くて読むのに疲れました。これ、今ふと思ったけど、窒素肥料そのものは別に悪くはなかったんでしょ? それを作ったひとのその後がやべぇって話で。メガビタミン療法は、こっちでは話題になってないんじゃね? よく知らんけど。
一個だけ気になったのが、最後の、自閉症の子供への治療法のとこ。細菌感染のはずないってのはわかるんだけど、その治療法を受けた子供たちに改善が見られなかった、というデータが提示されてないなって。あんだけデータがすべてっていっておきながら。どれくらいの子がその治療を受けて、結果どうだったのかってのをちょっと知りたかったな。
文章として読みやすいかといわれたら、うぅん、っていいます。訳もだし、たぶん原文もそんなに読みやすくなさそう。まあナショジオやから、そんなもんかな、という気も。
過ちを指摘され、それが正しいと理解できたらきちんと受け入れることが大事。
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「世界を悪い方に変えた発明」について7つを取り上げる。
ああ…分かる、というのもあり、んん?なにそれ?というのもあり。
著者がアメリカ人の先生ということもあってか欧米にフォーカスされてて日本人にはあまり馴染みがないものが多い印象。
私が選ぶならぶっちぎりで原水爆だけどな。
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私も一度これがいいと教育されたことは、否定されても続けてしまう。
本書では、トランス脂肪酸、ビタミンCの過剰摂取などの怖さを語っているが、街で売っているものは、そのような食材ばかりと考えると、知識があるとないとでは、大きく人生が変わると思ってしまう。
発明や科学は、正しいと信じているのだが、定着すると悪用されたり、他の分野で使われてしまう。才能は諸刃の剣とはよく言われるが、ドローンやAIも道が外れないように注意しなければと思う。
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世界最悪の発明を取り上げた書籍である。具体的には阿片、トランス脂肪酸、窒素肥料、優生学、ロボトミー手術、DDT禁止、メガビタミン療法である。
有害な発明の筆頭は依存性薬物である。個人を薬物中毒にして破壊し、社会を荒廃させる。依存性薬物は人類に取り返しのつかないほどの害をもたらしている。多くの人々に死をもたらし、その影響が現在にも残り続けている。依存性薬物の売人は武器商人以上に死の商人である。
一方で恐ろしいことに、最悪の発明の中にも人類に価値を提供しよう思いがあった。サブタイトル「正義が愚行に変わるとき」には、この意味が込められている。阿片にさえ鎮痛効果という医療目的があった。阿片の中毒性が害悪として認識されると、阿片の中毒性をなくし、鎮痛効果だけを残す研究が進められた。この研究からモルヒネもヘロインが登場したが、大量の中毒者と死者を生み出す結果になった。
米国では阿片の成分から作られた医療用麻薬、オピオイド系鎮痛剤が社会問題になっている。21世紀ゼロ年代の米国では10万人以上が過剰摂取により命を落としている。事故死の原因として交通事故を上回り、最大のものになっている。依存性薬物を正当化する論者は依存性薬物の効用を主張するが、効用があるから正当化するという論理が既に依存性薬物の罠にはまることになる。依存性薬物は依存性薬物である故に否定される。
本書は殺虫剤DDTの使用禁止やビタミンC摂取(メガビタミン療法)という最悪の発明と認識されていないものも最悪の発明に位置付けている。ここは賛否が分かれるだろう。本書のスタンスはデータに基づく判断であり、社会の空気に流されることを戒めている。そのような本書も依存性薬物を最悪の発明と位置付けていることは、依存性薬物の有害性認識は普遍性を有している。
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『正義が愚行に変わるとき』。考えさせられるサブタイトルだ。そりゃあ誰だって、もちろん自尊心や自己愛もあるだろうけど、誰かや何かのために頑張ってんだもんな。だからこそ、落とし穴に気を付けて、客観的事実に向き合わなあかんってことなんだろう。
トランス脂肪酸や優生学、ロボトミーあたりの有名どころは他で読んだ覚えもありつつ、アヘンやDDTの歴史は初耳で興味深い。数年前に取りざたされていたSTAP細胞も、転がり続ければこれらに並んだんだろうか。
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『代替医療の光と闇』の著者による7つの
科学的発明や医療の功罪。
麻薬、トランス脂肪酸、窒素固定と化学肥料、優生学、ロボトミー、DDTとその禁止、メガビタミン。
それぞれの発明がどのように生まれ、正負両方の影響を与えるに至ったか、近代科学史のドキュメント。それぞれのストーリーが面白いが、最終章は最終章は意識しておきたい。ここで言及された現代の知識が正しいとは限らないという一面も含めて。
ワクチン接種、電子タバコ、がん検診プログラム、遺伝子組み換え作物についての言及もあり。
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ギリシャ神話の中に、「パンドラの箱」というお話がある。
パンドラは神々が作り出した人間の女である。最高神ゼウスは、彼女に「決して開けてはならぬ」と1つの箱を渡す。だがパンドラは好奇心に負けて箱を開けてしまう。すると、病や貧困、不幸、悲しみ、死といったありとあらゆる禍いが飛び出してきた。驚いたパンドラは慌てて箱を閉じるが、時すでに遅し。箱の中は唯一、「希望」だけが残った。
本書の原題は"Pandora's Lab"である。
科学の発展は、時として素晴らしい成果を生むが、一方で、「開けてはならぬ」ふたを開くこともある。
本書では、発見当時、素晴らしいともてはやされたものの、時が経ってみると実は怖ろしい災厄をもたらしたと考えられる事例を取り上げる。
いわば、よくある「世界を変えた〇〇個の発明」といったもののネガにあたるアイディアで、「世界を<悪い方向に>変えた発明」ともいえるものである。
著者が取り上げているのは7つ。
・アヘン
・マーガリン
・化学肥料
・優生学
・ロボトミー
・『沈黙の春』
・抗酸化物質(ビタミンC)
当初の目論見から外れていったものとしてわかりやすいのはアヘンとマーガリンだろう。
アヘンは病気の治療薬として大変珍重された。錬金術師のパラケルススは「讃える」という意味のラテン語から、これを「ローダナム」と名付けた。ヴィクトリア朝時代には、赤ん坊を眠らせるのにまで使用された。米国でもリンカーン大統領の妻をはじめ、多くの中毒者がいた。最も害を被ったのは、アヘン戦争で敗北した中国だろう。
マーガリンはバターの安価な代用品として発明された。その上、バターよりも健康によいともてはやされてきた。が、近年、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が問題視されるようになっており、欧米では厳しい規制が敷かれる国も出てきている。
科学者の姿勢を問うているのは、化学肥料、『沈黙の春』、抗酸化物質だろうか。
化学肥料の元になったのは、ハーバー・ボッシュ法と呼ばれる窒素固定法である。空中の窒素からアンモニアを作り出し、肥料を大量生産できるようにしたのである。これは大量の食糧も生んだが、一方で環境汚染も生じた。さらにアンモニアは爆薬の生産にもつながり、戦争の被害を大きくした面もある。また、アンモニアとは直接は関係ないが、ハーバー・ボッシュ法の発明者の1人であるフリッツ・ハーバーは化学兵器開発でも大きな役割を果たしている。このあたりになると発明がもたらした災厄というよりは科学者自身の姿勢の問題となりそうである。
『沈黙の春』に関して著者が問題視しているのは、DDTの行き過ぎた排除である。カーソンの筆があまりに詩的で素晴らしかったがために、世論が過剰に盛り上がり、DDTは全面的に禁止されることになった。だがDDTの危険性は危惧されるほど高いものではなく、一方でマラリアや発疹チフスを予防する効果は非常に高かった。そもそも、彼女の主張はデータに基づいていたのか、というのが著者の問題提起である。
サプリメントやビタミンで健康になると主張したのはノーベル賞受賞者のライナ��・ポーリング。彼の元々の研究テーマの量子力学や化学とはかけ離れた分野だった。この件についても、著者はデータの不備を指摘している。
本書中で個人的に最も怖ろしさを感じたのは、優生学とロボトミーである。
優生学はいわば人を選別し、「不適合者」を排除して、「優れた」ものを残そうとするものだが、当時の優生学の諮問機関に錚々たる人物が名を連ねているというのが怖ろしい。各界の有力者も資金面からこれを支援している。
精神的に問題を抱える人々の脳の一部を切除したり穴を開けたりして、症状の改善を図るというロボトミーも怖ろしい発想である。素人考えでもうまくいきそうに思えないが、当時は執刀医だけでなく、多くの人々が支持していたという。これには、病院の環境がひどかったことや、当時の治療がそもそも「ショック」療法を主としており、ロボトミーはその延長線上ととらえられたこともあるようだが。
これらの事例から学ぶべきこととして、著者は最終章で、「データがすべて」「時代の空気に流されるな」「手っ取り早い解決策には気をつけろ」といった注意点をまとめている。
輝かしい歴史の陰に暗部あり。だが、暗部にこそ、忘れてはならない教訓が宿る。
なかなか考えさせられる1冊。
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震えるほど面白い本だった
これは全大学全学部の教養的推薦図書にしてもらいたい
人間社会がいかに脆いのか、よくわかる。
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読んでてつらいので、ひとやすみ中(2021/7/21)
ショック・ドクトリンを読んでたらロボトミーの話が出てきて、そこまでは読んでたので(というかそこで心が折れた、、何重にもヤバすぎるん、、)、状況と背景がリアルにイメージでき、いま読んでる本の理解の助けになった
(2023/11/1)