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何とも複雑に込み入った人間関係、、、
面白いという感想よりは、まず作品を一言で言い表すなら、まさにそれに尽きると思います。
主人公のリリスは十年間、修道院に預けられており、漸く屋敷に戻れるというその帰り道、拉致されてしまいます。
彼女を拉致したのは、リリスの父ジャワードとかねてから敵対関係にあったガイア領主アレクサンダーの双子の弟たちでした。
アレクサンダーはリリスを丁重に遇するものの、彼女の父が彼の領内に作った堰を取り壊させるために、結果として彼女との便宜結婚を選択します。
ですが、物語はそんな簡単なものではありません。
便宜結婚から二人が真実の愛を見つけるまでと同時並行して、様々な人間模様が描き出されます。
それがリリスとアレクの父親同士の恩讐であり、また、更にアレクの元婚約者バーバラ、その兄ジョンの狡猾な企みであったりします。
実はリリスの父がガイア卿(この場合、アレク自身と彼の父)に深い恨みを抱いている背景には、まだ主人公たちが幼い頃に芽生えた父親同士の対立に元があるのです。
読んでいる中に、二重三重に張り巡らされた人間関係のあまりの複雑さに、溜息が出そうになりました。
また、かなりの暴力的シーンがあり、読んでいてあまり良い気持ちではありませんでした。
最後には、バーバラの兄ジョンが狂人であると判り、亡くなりますし。
単に主人公たちだけの恋愛譚を描いているよりは、奥行きがあり読み応えもあるとは思いますが、
何故か素直に「良かった」と言い切れない複雑さが残ります、、、
前半まではテンポ良く話が進み、私も愉しく読み進めました。後半からの展開は読む人によって評価が分かれるところかもしれません。