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琉球編、ますます、熱さを増してまいりました。
慶次が主になって、ストーリーの中心から発せられている、この熱さってのが、読み手をへばらせるのではなく、ページをめくる毎に心へ活力をぶち込んでくれるタイプ。これを出せる漫画ってのは、そう多くない、と私は思っているが、皆さんはどう思うのだろうか。
慶次と想いが通じ合ったのも束の間、謎の男らによって連れ去られてしまう利沙さん。不謹慎かも知れんが、やはり、美人ってのは、こういうトラブルが起きやすいのだろう。まぁ、この手の事件が起きないと、ストーリーが盛り上がらないわなァ。
あと少しの所で奪還が叶わなかった慶次は、激しい怒りを胸に滾らせたまま、利沙が連れ去られたであろう場所へ赴く事に。戦いの場は、那覇へッッ
道中で、捨丸、岩兵衛らと再会を果たした慶次は、那覇へ乗り込んだ早々に傾いた行動に出る。彼を慕っている者からすれば、さほど驚く行動じゃないんだろうが、慶次の性格を碌に知っていない者からすると、ただただ、肝を冷やされてしまう。
今更、言う事でもないが、私ら読み手に、「前田慶次って凄ぇな」と思わせる点には、彼の純粋な戦闘力の高さだけではなく、天然の人たらしってのは、間違いなく、入っている。
初対面の漢が、慶次に惚れてしまう理由は色々とあるだろうけど、やはり、慶次と吞む酒の味が美味いってのは大きいだろう。私はカエルだけど、慶次の呑み方が、酒と友に敬意を示す呑み方って事くらいは感じられる。酒飲みのキャラは、漫画界には多いだろうけど、慶次のような呑み方が出来るには、一割くらいじゃないか? 近しい所で言うと、『ワカコ酒』のワカコさんだろう。
この琉球編が読み手を惹き付けるのは、慶次が利沙を救うために、文字通り、命を懸けているからだが、私的には、武って登場人物の存在も、小さくないな、と思っている。言うまでもなく、彼は小悪党の部類に入る。慶次に喧嘩を売ってきた存在とは違い、基本的に、自分が商人として成功する事しか考えていない。その為なら、汚い手でも何でも使う。しかし、根っからの悪ではないので、慶次の気高い生き方に、どうしても、心が揺さぶられてしまう。そんな器の小さい男特有の人間臭さが、やけに、読み手に共感を齎すんじゃないだろうか。
慶次が那覇の者と心を通わせている一方で、利沙さんも、かつて思いを交わし合った者である、琉球の国王・尚寧と再会を果たしていた。若いながらも、王としての威厳が出ている尚寧。国際情勢的に辛い立場に居るからこそ、彼は最も愛する人である利沙さんを妻にする事で、「敵」に立ち向かっていく勇気を得ようとしたんだろうな。青い、と言えば、青い。しかし、その青さに好感が持てるし、きっと、慶次は尚寧のそういうトコに好印象を抱くだろうな、と思える。慶次と尚寧が対面する時が、楽しみだ。
国を正しい方向に導き、民を守ろうとする王・尚寧の望みであれば、例え、男の道に外れようとも叶えてやりたい忠臣、それが、毛虎。これまでの武人とは一線を画す猛者たる毛虎を撃破し、慶次は利沙さんを取り戻す事が出来るんだろうか・・・いやぁ、楽しくなってきた��
この台詞を引用に選んだのは、慶次が、ただの戦える男じゃない、と判るものなので。
こうやって、初めて訪れる土地の良さを、自分の五感で感じ取り、主観の入った前情報や偏見を抜きにして、視るべきモノを視て、聴くべきモノを聴けるってのは、慶次の天性的な才能だろう。
政治家向きってのは、少し違うだろうけど、慶次が単純な猛者でないのは確かだ。
今度、どこかへ旅行へ行く時は、この慶次の台詞を胸に刻んでおこう。
「せっかく、琉球に来たんだ。ただ、うろうろ歩いて、風土を見、人に会えばいい。琉球の人間が、何を着、何を食い、どんな酒を呑み、どんな夢を見るか、そいつがわかればいい。出来れば、心の許せる友の一人も見つかれば、これに過ぎたるものはない。その上で、利沙殿のことも、より早く、見つけだせる、というものだ」(by前田慶次)
もう一つ、台詞を紹介。
先にも書いたが、常人であれば、怖さすら覚えてしまう慶次の凄さが如実に出てる、と感じたもなので。
ほんと、慶次と一緒にいたいのなら、意図的に、頭のネジを一本か二本ばか、吹っ飛ばしておかないと、心の安定が保てそうにない。
さすがに、この時ばかりは、武に同情してしまったほどだ。
確かに、仲間を裏切ったってのはよろしくないが、ここまで、戦慄させられちゃ可哀想だろう。
「お願いですから、それだけはやめてください。ごたごたの元です」
「なぜだ?」
「な、なぜって・・・前田様だって、南蛮人が日本の着物を着ていたら、妙な格好だ、とお思いになるでしょう! 気に障りませんか? そうなると、いらざる喧嘩を吹っかける者も出てくるでしょうし、喧嘩となれば役人も飛んできます!!」
「甚だ結構だな。琉球に着いて、すぐ傾くことが出来て、その上、喧嘩まで出来るなんて、上等すぎて罰が当たりそうだ」(by武、前田慶次)
そんで、もう一つ、グッと来た台詞を紹介。
これも上で書いたけど、ほんと、慶次の酒の呑み方は、カッコいいよなぁ。
見るからに、頑固親父な宗元さんの心が、呆気なく、ほぐされちまった。
慶次の心意気に対する宗元さんの返し、これもまた、男らしい。
慶次の、この人たらし力の十分の一、いや、百分の一でも良いから、持ちたかったものだ。
「見損なうなっ!! 俺は密偵じゃない。俺は、惚れた女を探して、この国までやって来た。そして・・・ただ、この国と、この国の人間を見に来ただけだ。今、この国を思う一人の武将に逢った。お蔭で、今夜はひどく、いい気分で酔える」
「どうして判った?」
「はっはは。本物の酒呑みには、相手の気持ちが、手にとるように判るんだよ、武。なんとなく、そうなるんだよなぁ・・・」
「ふっ・・・すまなかった。わしは武人にあるまじき、小細工をした。心から謝る。これから、本当に酔うが、つき合って貰えるだろうか?」
「「ぷっは~~~っ」」
「・・・ふう」
「ふふ」
「わあっはっはっはっ」
「はあっはっはっはっ」(by前田慶次、宗元)