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ラストが
2023/08/08 23:39
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでる最中は、可もなく不可もなく。ところが、ラストの1ページ、えー。我孫子から鹿島まで小学生女児、のサッカー選手志望者とその叔父(作家)が数日かけて歩く小説。芥川賞候補と聞き読みました。けど自分は合わなかったですが、良いと感じる方は沢山おられるかと。
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投稿者:漂白 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こういうの流行りなのかな。よくわかりませんでした。
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スケッチをするように丹念で静かな描写がいつの間にか心地よく
登場人物の輪郭が少しづつはっきりしてきます
それだけに残酷な終焉が作品にあっていないような読後感です
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この旅がずっと続けばいいのに、と思っていた。
サッカーのことはよくわからないけど、鳥のこともよく知らないけれど、ずっとずっと彼らと一緒に旅をしていたかった。目的のないままの私では彼らの旅の同行者にはなれないだろうか。でも、それでも私は彼らと一緒に歩きたいのだ。
大声で真言を唱えた後、リフティングをする亜美を、友だちのいない小説家の叔父さんがところどころで景色を書く姿を、少し離れたところで見ていたい。
彼らとの旅の中で、私は何の練習をするだろうか。途中で加わったみどりのように、何かを手に入れるために何かを捨てる練習をしようか。それとも叔父さんの真似をして言葉を連ねる練習をしようか。
そして、きっと最後に両手を広げて上を見て、次の旅のための準備をするんだ。
いや、本当に言いたいのはそういうことじゃない。
ずっと、悲しい予感から目をそらしていた。小学六年生の少女と、その叔父さんとのとある目的を持ったロードノベルは、淡々とそして鮮やかな色でもって描かれる。素直でまっすぐなサッカー少女のその小さくて大きな成長を目を細めながら眺めていた。でも、その、隙間から見え隠れする知りたくない未来から目をそらし続けてもいた。知りたくなかった。読みたくなかった。心の奥深いところから悲鳴が聞こえる。
形にならない約束が、来ることのない未来が、そしてかなうことのない夢が、私の中で、何かを生んだ。
私は今、どこに立っているのだろう。どこへ向かって歩いているのだろう。
彼女の、ちいさな物語を読んでしまった今、私は私の中で生まれた何かを探す旅に出るのだろう。
言葉にならなないこの思いを、自分の中で形にするための、練習の旅に。
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亜美と叔父さん、みどりさんの会話は面白かったけれど、叔父さんの書く文や道中の話は少し退屈に感じてしまった。知らない漢字や言葉が多すぎて逐一調べる気にもならず、なんとなく想像しながら読んだ。途中からはただ目を滑らせるだけになってしまっていたと思う。
たまにあれ?という描写があって、その悲しすぎる理由は最後に明かされる。
その背景を知ると、1度目と2度目では読み方に違いが現れ、2度目では叔父さんの複雑な心境を想像し胸が痛くなる。
後悔を全くしないなんて無理だろう。でも、後悔を少しでも減らす努力はしたい。訊きたいことは訊く、伝えたいことは伝える。それでも、そうすることで辛さが薄れるわけではないと思うけれど。
「自分の大切なものに自分の人生を合わせて生きる。そうすれば世の中の全てが好きなものに関係してくる。」
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芥川賞とってほしい作品でした。
作中に出てくる「大切なことを見つけて、それに自分を合わせて生きる!」って、いい言葉ですねー。
ぜひぜひ、読んでみてください
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「旅する練習」は、サッカー少女とその叔父が利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出るという話だ。コロナで予定がなくなるなどタイムリーな出来事が小説中に登場する。この小説の魅力は構成にある。
乗代雄介の小説は、書物の題名や引用、エピソードが読み込まれるのが特徴だ。その特徴は『旅する練習』でも健在で、柳田國男や小島信夫それに加えてサッカー選手のジーコの引用やエピソードが挿入される。さらにはおジャ魔女どれみや真言宗も重要なモチーフとなっている。
『旅する練習』は、叔父が語り手として亜美との「練習の旅」を描くという構造になっている。「練習の旅」の時点で描いた名所の描写に、後から当時の様子を細かく描いたという体裁だ。『旅する練習』はこの構造にちょっとした仕掛けがある。
語りの工夫によって、『旅する練習』は最初に読んだ時と2度目に読んだ時とでは印象が異なる小説に変貌する。僕は1度目に読んだときは衝撃を受けて、読み返したときは語りに隠された真実に心を揺さぶられた。
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亜美ちゃんが素直でポジティブで、とっても素敵な女の子!みどりさんは自分に自信が持てなくて、自分のための決断ができない大学生。
対照的な二人だけど、旅の途中で仲良くなって、色々なことを語り合う。
旅の様子を叔父さん目線で描かれて進むこのお話は、途中で不吉な未来を予感させるような言葉が出てきて、まさか…と思いながら、途中からはそうであってほしくない、と祈りながら、後半は一気に読み進めた。
予感は的中してしまい、うーん…と唸ってしまう。
この結末を知ってから、もう一度読んだら、世界がさらに美しく見えるだろう。
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芥川賞候補作だったこの作品は純文学らしさが強く、割と読者を選ぶかな。
自分は分かりやすいエンタメ性のある、大衆的な作品ばかり読んできたのだなぁと知ることになりました。
個人的にはサッカーのルールも知らなければ、歴史に造詣が深い訳でもなく。おジャ魔女どれみも微妙に世代ではないのでピンと来ず(作者と同世代ですが)。
この作品の要素として大きいのが風景描写ですが、これが正直キツかった。野鳥も全く分からないし、歴史などに関する聖地巡礼的な要素もからっきし。
風景描写に関しては教養がないと楽しめないですし、そもそも純文学を読み慣れていないとキツい。置いてきぼり感がありました。
教養と純文学を読む習慣、この2つの要素を持っている人なら、文章の美しさや情景を楽しめるのだろうなと思いました。出てくる言葉も読めない漢字や知らない言葉が多く…恥ずかしい。
ただ、本筋は亜美ちゃんというキャラクターの魅力があり、何とか読めました。
でも終盤から徐々に風向きが変わってきて、ラストは…。
作者は安易にこの結末にしたのかと読み終わった直後は思いました。
が、ネットのレビューで「著者はこの結末からストーリーの構想を逆算して練っていったのでは」と書いている人がいて、そう考えると腑に落ちました。
むしろこの結末が、主人公がこの旅の記録を残す動機の最たるものだったんだと思えました。
最後の方は内容に反して淡々としていて、どこか読者を突き放すような雰囲気です。
複雑ですが、決してこういった読後感は嫌いではないです。
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多くを語らず、風景を淡々と言葉で紡いでいく小説家の叔父と、リフティングやドリブルの特訓をし旅に色付けをするサッカー少女が鹿島を目指し「練習の旅」をする。旅の思い出としては何気ない、日々の幸福を描き続けている。
その土地の事実や柳田國男の小説、ジーコの自伝をも取り入れながら旅を進め、風景を描写、記録する小説家の叔父の考え方や、爛漫なサッカー少女、旅で出会う自信の持てないみどりさんを通して随所に散りばめられた学びや気付きを感じることができるが、今ひとつインパクトに欠けるままページと旅が進んでいく。
ただ、2ヶ月後の記録がいきなり語られる場面があったり、叔父にとって記録をする旅に中盤から「忍耐」という言葉が再三出てきたり。なにかを暗示させるような描写が増えていき、引っかかりが取れぬまま物語は大きな抑揚なく進む。
「私しか見なかったことを先々へ残すことに、私は少し焦っているかもしれないが本気である。」や、「書いたことは無くならない。」など序盤のあくまで記録や描写を優先してきた記し方からあからさまな感情が見え隠れする。
「本当は運命なんて考えることなく見たものを書き留めたいのに、私の怠惰がそれを許さない。心が動かなければ書き始めることはできない。そのくせ、感動を忍耐しなければ書くことはままならない。」
その何かを明かさないまま、明らかな葛藤と、幸せな日常の「記録」が混在をみせる。序盤の抑揚のなさも記録し続ける「平凡な幸せ」も本書においては大きなコントラストを生み出し、胸がダル痒くなってくる。
平凡なこと、そしてそれを長く記録すること、またそのことが誰かの気持ちや意識を変えること、これらがどれだけ難しいことなのか。最後の最後で思い知らされる羽目になった。
「大切なことに生きるのを合わせてみるよ、私も。」
大切なことは新たな環境で変わってしまうもの。それを変えない、忘れたくないというのは変化することよりも難しいことなのかもしれない。
「唯一読んだ本の題名を訊いておけばよかった。」「名前の由来を教えてやればよかった。」
一見、難しくも特別なことでもないような言葉たちがクライマックスを際立たせる。
総数170ページで半日で読めてしまうが、確実に2度読むことをお勧めする。
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書くこと、書かれたこと、書かれなかったこと。「書く」ことにまつわるそれら全てが、今ここで生きている自分と、目の前にいる人・過去を生きた人・その生活・思い・時間・自然、私の生きる場所にある(あった)全てをつないでくれる旅の小説。それは小説家である主人公が「本当に大切なもの」に「自分を合わせて生き」ている姿そのものでもあるように思いました。
主人公と一緒に「練習」をしながら旅をするサッカー少女・亜美ちゃんに、ジーコを敬愛し、自分に自信のないみどりさん、生涯文学を拒んで土地に残る伝承を集め続けた柳田國男。彼らが書いたこと、書かなかったこと、それらを丁寧に紐解きながら、彼らについて主人公が書く。
全ては「発願」から始まり、願いを叶えるため「忍耐」し、その「忍耐」を忘れぬよう「願」いを「記憶」し続けること。
ともすれば流され、忘れてしまう弱さを起点に、自分へ、憧れの誰かへ、強い想いを抱いたその瞬間を忘れず大切に(なにより大切だから感動に流されることなく忍耐)し続けたい想いが真っ直ぐに書かれていて、本当に乗代雄介の小説が大好きです。
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サッカーや真言宗の事など、ちょくちょく難しい事が書かれていて、思ってたよりページをめくる手が遅くなった。なんだかモヤモヤする書き方だなぁと思っていたが、最後の1ページで理由が分かった。だけど個人的には違うラストが見たかった…とゆうか叔父さんが博識でスゴイ。
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人生をブログを書くことに費やしてきた偉人こと乗代さんの作品をはじめて読んだ。いたずらに文章を書きなぐるだけではきっとたどり着けないその魅力的な文体にただただ引きつけられた。
こんな文章が気に入った。
・「あんまり人をじろじろ見るなよ」 「鳥を見るのはいいのに、なんで人はだめなのさ」
・ふんふんと生返事でリフティングしながら歩き始めた亜美は、みどりさんに大層ほめられて気を良くしながら、今日はこれ以上明るくなりそうもない一日くもり予報の朝に、ボールの弾む音を響かせる。
・ひどいとかバカとか叫ぶ亜美の後ろで時計を見ると、もう二時になろうというところだ。
・どんなものでも死はありふれたものと知りながら、それがもたらすものを我々は計りかねている。それでも何か失われたように感じるのは、生きることが何事かもたらすという思い上がりの裏返しだろうか。
・ただ大事なのは発願である。
他の作品も読んでみたい。
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そうと知っていれば、この結末を予感させる言葉が何度も見え隠れしていたことに気付けたのに…同じくらいの年の姪を思い浮かべながら、春のまだ浅い、旅の日々を呑気に楽しんで読んでしまいました。
かけがえがないことに気づけば、もう遅い。
何度も読み返すことになりそうな一冊。
芥川賞、なんで逃したんやろ。
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ロードノベルを読んだのは久しぶりでした。最後に読んだのはなんだったか。そう考えるほど、時代はコロナで様変わりし、そんな小説は初めてでした。
道中、亜美ちゃんが言った「大切なものに、自分を合わせていく」という言葉、大人になった今だからわかる、この難しさともどかしさ。途中みどりさんが仲間になって、幾分賑やかになるところもいいですね。とても面白かったです。