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面白く、文体も読みやすいので、一気に読めました。
筆者が介護現場で経験したエピソードを、医療・介護の問題点への考察を含めて書いています。筆者は介護士をされていますが、重度障害者施設、老人施設、緩和ケアまで様々な介護施設を経験しているようで、見識が広く客観的な視点を持っているように思いました。
介護士さんが忙しさや死に慣れてしまったりで利用者さんをもの扱いしてしまうと自省的に書かれていますが、書かれているエピソードは心温まるものが多く、人間を尊重する姿勢を感じられました。介護の現場の様子が伝わるようで、医療者として勉強になりました。
人間の死や尊厳に対して鈍感になるという点では医者の方がむしろひどいかもしれません。患者の病院での様子しか見られず、実際の生活の様子については知らなかったりします。介護士の方はその人の普段の面を見てるんだろうと感じました。介護ともコミュニケーションを取って医療を行う必要があると感じました。
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ゴシップ感強めな文体ではあるが、一般の人々の目に晒されることのない現場の一端であることは確かなんだろう。
私も介護士の端くれだけど、筆者が勤務されてきたような過酷な施設(高齢者、障害者)は経験していないので、どこか遠い出来事と感じてしまう部分もあるが、反面、介護するされるどちら側でも、自分がその渦中にいたらと想像するだけで恐ろしくなる。
誰かがやらなければならない。
誰もが当事者になる可能性がある。
筆者は繰り返し、想像せよと読者に訴えている。
どこかで虐待が起きる。世間はその加害者を糾弾する。
「何かを断罪するというのは、自分が窮地に立たされた時、同じように世間から断罪される世の中を作ることと同じだ。」p136
誰しも歳を取る。
あるいは思いがけず病や障害を追うかもしれない。
「自分たちの平穏な生活が突然終わりを告げ、選択する余地もなく知らない場所に閉じ込められる」p204 のが有りがちな現状だという。
自分で自分を支えられなくなった時、次に訪れるのはどんな世界なのか?
人生の締めくくりがいかに脆く厳しいものか...「人間らしく」生きることの難しさを思う。
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利用者から見た施設での一日の語り口は、ちょっと大げさな部分もあるけど、大体あたってるかも。ちゃんとしている介護士ももちろんたくさんいる。
まあでも、実際に見たりやったりしないと、腹落ちはしないだろうなあ。多分若い人ほど想像できないことだろうから。
共感ポイント
・精神安定剤を投与されて壊れていく利用者
暴れはしなくなったけど、生気も人間らしさも失った
・食事介助時間かかってると、「まだ終わらないの?」という周囲からの無言のプレッシャー。とにかく急いで口に詰め込む。食事も、とろみがついた水分も。どう頑張ってもむせるけど、それは急いでだからなのか、利用者自身の嚥下力が落ちているからかはわからない。ぜんぶごはんもおかずも味噌汁も、全部一緒にかき混ぜてぐちゃぐちゃにする人いるなあ。職員も、利用者も。
・介護士と看護師は平等と教科書には書いてあっても、実際の現場では看護師は介護士より上という認識がどちらにも浸透している
・まともな人ほど早く離れ、壊れてしまった人ほど長く介護の仕事を続けている