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キャッチコピー「反戦とエロスの孤高の巨星」を実感。テレビでしか知らないが、歌謡曲の作詞家というより得体知れない危険人物だと思っていたが、予想を遥かに超えていた。若い頃、7人の女性とかわるがわる遊んでいたが面倒になり一軒家に住まわせて暮らしていた話に笑ったが、人間的な妖しい魅力と構えが昔から尋常で無かったのだろう。
特に唸ったのは、小林秀雄が戦争協力者であり狡猾な人物と見抜けなかった自己の愚かさへの言及、加藤周一の天皇制批判と『九条の会』への賛同、そして平成天皇の政権に対する抵抗を評価しつつ平和憲法の尊重と遵守の表明。芸能の中心人物が音楽はもちろん文学、絵画、映画演劇を縦横に論じ、その根底で正しい政治ときっちり通じている嬉しさは格別。そして、選び抜いた言葉がとてもわかりやすい。素直で親切な人だ。前にも書いたが、愛という感情を魂の行為と言い切る、わかったようでわからない標題(笑)が読後もさまよい続けている。