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失われた30年と言われる中、日本の人間主義的経営の良さを認識させてくれる。急激な変化には適さないものの、サステイナブルな成長にはこちらの方が合っている気がしている。
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ミネルバの梟(ふくろう)は黄昏に飛び立つ。
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル
(引用)NEVER STOP イノベーティブに勝ち抜く経営、著者:フィリップ・コトラー、古森重隆、発行:日経BP、日本経済新聞出版本部、2021年、54
これは、贅沢な本だ。”近代マーケティングの父”と呼ばれるフィリップ・コトラーと富士フィルムホールディングス代表取締役会長兼CEOの古森重隆氏がタッグを組み、イノベーティブに勝ち抜く経営について語ってくれる。富士フィルムといえば、やはり”写真”だ。私も写真撮影が好きで、フィルム時代からお世話になっている。緑の箱に入った富士フィルムのリバーサルフィルムである”ベルビア”や”プロビア”は、デジタル写真のように撮影後の露出変更ができない。そのため、同じカットの撮影でも、通常、マイナス1、プラス1といったように変更しながら最低3カットを撮影したことを思い出す。しかし、今やフィルムで写真を撮影する人たちは、殆ど皆無に近い。私も一眼レフカメラをデジタルに変えて、十何年経つ。
当時、世界で40社あったフィルム会社は、デジタル化の波に押され、4社となり、さらに2社となり、最後に1社だけが残ることとなる。この1社は、言わずとしれた富士フィルムである。すでに、チャールズ・A,オライリーやマイケル・L.タッシュマンらによる「両利きの経営(東洋経済新報社、2019年)によって、富士フィルムの勝ち抜く経営は、ハーバードビジネススクールでも高い評価を得ている。本書では、なぜ、富士フィルムが迅速に自社の技術を生かし、新たな医療画像診断事業、再生医療事業、化粧品事業へと多角的に展開して成功できたのか。また、コトラー教授が提唱してきたマーケティング4.0とは何なのかを知ることができる。さらに本書では、「ケイパビリティ」という単語が頻繁に登場する。ケイパビリティとは、直訳すれば「能力」や「才能」である。そして企業経営に当てはめると、一般的には、企業成長の原動力となる組織的能力や強みのことを指す。まさに、富士フィルムの多角経営は、本書にも登場する四象限マトリックスによって整理されている。これは、富士フィルムの古森氏が技術の棚卸しをし、強み×強みで新たな新規市場への参入を可能にした。これは、古森氏が正しい方向を示し、企業のケイパビリティがそれに応えたからできたのだと理解した。
かつて、ピーター・F・ドラッカーは、企業の成長には、イノベーションとマーケティングが必要だとした。コトラーによれば、このたびの富士フィルムの事例により、マーケティングとイノベーションは、別個の独立したものとみなすべきでないと結論づけている(本書240)。そして、私はリーダーシップ、マーケティング、イノベーションの根幹をなしているのは、「人間力」であると感じた。危機的状況を共有し、プライオリティをつけ、ダイナミックに、スピード感を持って、進化した。そこでは、危機を理解し、素早く進化を遂げることができた大きな要因の一つとして、人間力の総和によるものであると感じざるを得ない。
富士フィルムの先進研究所のシンボルは、ミネルバという女神と��(ふくろう)だ。古森氏によれば、ローマ神話の女神ミネルバは、技術や戦の神であり、知性の擬人化とみなされた。そしてミネルバは一つの文明、一つの時代が終わるとき、梟を飛ばしたという。それまでの時代がどのような世界であったのか、そしてどうして終わってしまったのかを梟の大きな目で見させて総括させたと言われている(本書64)。
時代の流れは速い。イーロン・マスクの盟友ピーター・ディアマンディスが著した「2030年 すべてが『加速』する世界に備えよ(株式会社ニューズピックス、2020年)」では、情報科学技術の進展により、自動運転技術や家事ロボットなどが進展し、私達の生活が激変し、より豊かに暮らせるようになることを示唆している。特にこれからの時代、量子コンピュータの普及は、これからの私達の日常生活を覆すものになるだろう。それとあわせ、現在、第4波と言われる新型コロナウイルスの影響、持続可能な世界を構築するSDGsなど、私達を取り巻く社会変化も目まぐるしい。そのなかで、私達は、古森氏が言われる梟になって、まず何が起こっているのかという現状分析からスタートし、次の時代に備える。今の時代だからこそ、コトラー・古森ウエイが必要であると感じた。
二人の巨人が辿り着いた、どんな状況下に置いても勝ち抜く経営の奥義。本書では、この二人の巨人により、如何なる状況下においても勝ち抜くことができる経営の真実が明らかとなった。
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会社から支給の書籍を読了しました。
「本業の衰退」から驚異の復活を遂げた富士フイルムの、所謂「第二の創業」成功譚と、人と組織とイノベーションを中心としたビジネス書です。
某自動車メーカーと同じく「人」基軸がキーになり・・・
と、書いてある事はわかるのですが・・・コトラー氏のパートの翻訳部分がとにかく長くて・・・ちと手こずりましたが、何とか・・(^_^;)
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悪くないと思うのですが、とにかく翻訳(コトラー氏)の個所が読みにくく感じました。
展開も洋書(翻訳本)寄りで、太字等の強調箇所も少なくダラっと続く感じなので、メリハリのついたビジネス書に慣れている人には少し辛い本かなと…
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「マーケティング視点のDX (江端浩人著)」で本書および富士フィルムホールディングスのDX事例が触れられていたことから手に取りました。
マーケティングの大家コトラーと企業イノベーションの成功者古森氏の共著ということで期待していましたが、イノベイティブであることは企業存続に不可欠だねということと、コトラー氏による企業の社会的な役割(マーケティング3、0以降のテーマ)に多くの紙面が割かれている印象で新しい知見に触れることはなかったのが残念。