投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
階級社会、日々の生活もやっと、現代ではありえないブラックな職場環境の中、生きていく過程を得るため、おばあちゃんの教えを忠実に守り、堅実に生きていく、お針子の主人公。今では絶滅したと思われる、依頼主の家へ出向き針仕事を進める職人としての経験の中で、様々な出会いや、理不尽、恐怖体験に遭遇する。
生まれ育った環境ゆえ、素直になれなかったり、安定した収入を得て戸惑ったりしながら、変化した人間関係で、人を助けたり、助けられたりする。
最後の方で怒涛の展開が押し寄せるので、目が離せません。
出てくるレースやドレスなど、実物があったらどんなに美しいだろうと想像力を掻き立てられます。
当時の文化・歴史を学べる本でもあるし、働く女性を応援する本でもあり、主人公が昔語りをする中で、毎回何かが起こるので、飽きずに最後まで楽しめる良書です。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
19世紀末のイタリアを舞台に、お針子の女性の人生を丁寧に描いた物語。
失われていく世界を記録したいという思いあっての作品だそうです。
祖母以外の家族を病で失い、祖母に裁縫を教え込まれた「私」。
当時の階級社会で、お針子は決して恵まれた立場ではないが、腕が良ければそれなりにいい仕事だった。
お邸に出向いて白いリネンで作るシーツやナプキン、ブラウスや寝間着など一切を縫い上げる。
具体的に詳しく描かれていて、目に浮かぶようです。
明るく無邪気なエステルお嬢様とは仲良くなり、その結婚のいきさつを見届けることにもなった。
慎ましく生真面目で、丁寧に仕事をする主人公のすがすがしさ。
自分で縫った服をきちんと着ている彼女の清潔感ある佇まいに、優しい若者が惹かれるのもよくわかります。
ただし、その若者は、大金持ちで偏屈な高齢女性の親族で、身分違い。
思わぬ波乱に見舞われながらも、生き抜いていく姿に心励まされます。
19世紀末のイタリアについてはあまり知りませんが、映画ならヴィスコンティ監督作品がありますね。
英国のドラマなら、「ダウントン・アビー」よりも少し前からということになります。
労働する階級は低賃金でこき使われ、上流階級の美しいものを作ったり手入れしたりすることに人生を捧げていた。
その技術は失われつつあるようですが‥
暮らしや立場が良くなったのなら、それもよし。
けれども現に、途上国での労働搾取という問題もあり、一筋縄ではいかない事なのですね。
読み応えのある作品でした。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
19世紀イタリアが舞台
お針子として上流階級の顧客を持つ主人公の人生
読みやすい文章で、ワクワクしながら読み終えることができました!
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ビアンカ・ピッツォルノ…、ちらりとこの本を見かけた時、名前をきいてすぐハッとした。
「あたしのクオレ」じゃないか。
これは期待できそう。
さっそく図書館で借りてみる。
児童文学関係の文芸で有名な作者だが、こちらは大人向けの本だそう。
20世紀前半?のイタリアを舞台にした、ひとりのお針子の人生。
主人公は名前が出ない。そのことに最後まで気づかないほど夢中で読んだ。
町の名前も固有名詞にはならない。
お針子の祖母に育てられ、縫製の素養と人生哲学を叩き込まれ、祖母が亡くなった後も、彼女は一人で、誇りを持って仕事に携わっていく。
小さな町でのさまざまな顧客のドラマもあり、巻き込まれながら、技術を学び、ちょっとほろ苦い想いもする。
主人公は貧しいながらもお金をなんとか工面してオペラを桟敷席で見て、金持ちのお嬢さんと親しくなって字を覚え、本を読み、一生懸命自分を育てていく話。
後半からは彼女もまた、病身の友人の子を預かり、必死に育てていく。
1話目からなかなかハード。重くて濃い。
でもやっぱりすごく面白い。
読み終わって思ったのは、もしイタリアに朝ドラがあったら、絶対これをドラマ化したらいい、ということ笑。
おしんのお針子バージョンというか、全体の流れもあり、一話ごとのドラマも読み応えあり、1人の女性の仕事、人生のドラマとして、別れもあり、出会いもあり、山あり谷ありでこちらも伴走のしがいがある。
主人公の性格がいい。
頑固で真面目、仕事熱心、素直になれず、でも優しい。
途中で親しくなったアメリカ人女性(通称ミス)の別れの際の言葉がこの本の核の一つ。
p133
ミスは私を抱きしめた。こんなことをするご婦人は今までなかった。エステル嬢だけが何度かしたぐらいだ。このふたりは特別な女性だった。
「いいこと?」ミスは重々しく言った。「あなたはまだ若いし、恋をすることもあるでしょう。でも、決して男に、あなたに対する尊重を欠くような振る舞いを許してはだめよ。あなたが正しい思うこと、必要だと思うこと、あなたの好きなことを邪魔されてはだめ。人生はあなたのもの。あなただけのもの。覚えておいて。自分自身に対する以外は、義務なんてないのよ。」
まだ女性が弱い時代、社会的に庇護してくれる男性(父や夫)を亡くしたり、ひどい夫の振る舞いに耐えながら、女性たちが必死で生きている様子が胸に残る。
貧しくも支え合ってきた、病身の友人の子供、アッスンティーナを連れての、人生初めての旅、それも海を見に行った話がとても印象的だった。
最後の宝物の隠し場所も、それにまつわる大変なエピソードも上手い。
今の時代、既製服は簡単に手に入るが、そうなるまでは、服に限らず、身の回りの布地全てを管理し、更新していく人が存在して、そのことは途方もなく手間や技術、お金のいることだったんだなと思う。
この本には、そんな手仕事へのあらゆる思いがある。
前書きに作者が書くように、今もなお、主に途上国では、低賃金長時間の労働で働く女性たちの手によって服は作られている。ク��エイティブもないその中に、彼女たちが健康を害するような労働環境がある。
そのことを覚えておいて、gapのセールをみるとなんとも言えない気分になる…。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
とても素晴らしいお話だった。
20世紀初頭のドレスの作り方や文化を学ぶことができる。
主人公が時に周りと戦いながらも、女性として自立して生きていく様が清々しい。
私たちはそろそろ大量生産、大量消費の生活を改めなければならない時期が来ているのではと感じた。そういったことにも気づかせてくれる本だった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
表紙の綺麗な絵に惹かれて読みたいと思った本。
お針子と言えば『バルザックと小さな中国のお針子』が思い出される。
この本は19世紀末のイタリアを舞台にした貧しいお針子の成長物語。コレラで家族を亡くした5歳の「私」は祖母と二人きりになった。祖母から教わったのは裁縫の技術と職業人として生きる知恵。
当時のイタリアがこれ程までに階級社会で、男女格差がひどかったとは驚いてしまった。
半地階に住み、お屋敷からの裁縫仕事を請け負う日々。祖母は私が読み書きが出来るようにと先生を頼んでくれた。布に一針一針刺繍が施されるように「読む」ことはお針子が見る世界を少しずつ広げてくれたのだろう。エステル嬢や英語教師のミスの存在も大きかったと思う。主人公がお針子であることの矜持を保ちながら生き抜く姿に共感させられた。
物語は、布の表と裏をひっくり返すようにくるくると展開するので読者を飽きさせない。着飾る人とそれを縫う人、既製服と手縫いの洋服、まともな人生と苦しく不名誉な人生…など対比するものの描き方も上手い。そしてなんと言っても繊細な針仕事のシーンがとても魅力的。
足踏みミシンがカタカタ鳴る音を感じながら一気に読み終えることができた。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
読み出したら途中で読み止めるのが惜しくなり、次々と先を求める様にページをめくり読み終えた。端正で折り目正しく几帳面そうな文章、著者の本をまた読みたくなる様な物語。
階級差、男尊女卑、不条理な世界に底辺に生きる主人公を応援したなくるような筋書き、読んで良かったと思える一冊となった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
小さい頃からお針子として生きてきた
ひとりの女性が一人称で語る話なのですが
よく考えたら一度も、誰の口からも
名前を呼ばれていない!
違和感なく読み終えてから気がついた。
なんだろう…読み手と同化させるためかな。
世界大戦のはじまる前のイタリアが舞台。
まだ工業化はそれほど進んでいなくて
主人公は手仕事で市井の人たちの洋服や
下着、リネン類まで縫っている。
祖母譲りの腕が確かなことで
少し上の階級からもお声がかかり
仕事を請け負うようになるのだけど
そのせいで嫌な思いをしたり
彼らの秘密を知ってしまったりもする。
懇意になった先進的なお嬢様との
親しき中にも礼儀ありな関係も素敵だし
自分の裁縫技術に対する
生真面目なプライドも頼もしい。
一方で、淡い恋心を抱いた青年と
身分が違うことに苦悩したり
本当にもう朝ドラにできるってくらい
けなげに生きる彼女の姿に心つかまれた(TへT)
あと、当時のイタリアの服飾に関することや
刺繍なんかのことも描かれていて
そこも楽しかったです。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
階級社会で生きるお針子さんの目を通して、金銭による権力、女性差別、、など現代に続く問題の歴史を知ることができた。その時代にあっても正義を貫く人もいて、後世で幸せに暮らしている結末に希望が見えた。後味は悪くない小説だった。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
5才の時にコレラの流行により裁縫で生計を立てる祖母以外の親族を失った主人公が、お針子の仕事をしながら階級と富によって厳格に分断されたイタリアの小さな町で様々な出来事を経験する物語。虚栄心に満ちたプロヴェーラ家、アメリカ人ジャーナリストのリリー・ローズ、馬に乗り、機械学と古代ギリシャ語を研究するマルケジーナ・エステル、町の権力者で100才になるドンナ・リチニア、隣人のズィータとその娘アッスンティーナ、そして主人公に恋するリチニアの甥グイド。それぞれの人生の物語は、プロヴェーラ家の裁縫師シニョリーナ・ジェンマが「縫い合わせたパーツを私の手から受け取ってデリケートに揺りうごかすと、そのとたんに、合わせた布切れが変身を遂げてひとつになり、三次元の優雅な形をとる」ように、繊細に織り込まれたゴブラン織りタペストリーのように描かれる。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
女性の権利が認められないことが「普通」である文化。
その「普通」から外れることは、当の女性からも攻撃の対象となる。
それは現代日本も同じね。
「普通」に縛られている。
今の私たちが読めば滑稽にも思える「普通」、いつか未来の、いつかどこかの人間が見れば、今の日本の「普通」もまた同じように見えるだろう。
実はそんなに変わらない。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
〈 19世紀末の身寄りのない日雇いのお針子の少女が、仕事を通して各家庭の様々な秘密を共有したり難題を乗り越え、成長していく。イタリアでベストセラー、ページをめくる手がとまらない!〉
イタリアの小説を読むことがなかった
著者は児童文学でもたくさんの本を出しているとか
厳しい階級社会、女性差別
その中で自由に憧れ、一歩ずつ険しい道を切り開いていく
前書きに「お針子さんの時代は終わった。この本は、そういう時代のことが忘れられてしまわないようにと願って書いた」とある
知らない時代の知らない事実をたくさん見せてもらった。
よい読書体験だった
≪ ミシン手に 切り開いてく 人生を ≫
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
柿谷美雨さんのエッセイに出てきたので、早速読みました。昔はハンカチや寝具のカバー類などもすべてお針子が縫っていたのですね。そしてそういう仕事をする人と、貴婦人のドレスを縫う仕事は全く別のものとして扱われていた事を知りました。紳士服は男性のみが扱い、全く別に作られていたので成り立ちが全く違うことなと、興味深く読みました。
もちろんストーリーは抜群に面白いです。
投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
「19世紀末、階級社会のイタリア。お屋敷に通って針仕事を請け負うなかで知った、上流家庭の驚くべき秘密とは―ミシンひとつで自由に力強く人生を切り開いた小さなお針子の波瀾万丈の物語。」
「19世紀の終わりごろのイタリアにも、おばあちゃんから針仕事をみっちり仕込まれた女の子がいました。この本は表紙も美しいですね。これらの流行で家族を失った孫娘のためにおばあちゃんは「お針子」として生きてゆこうと決心します。おばああちゃん亡きあとも、女の子はその腕の確かさとわきまえた態度のおかげで、よい働き口を見つけ、成長してゆきます。上流階級のお屋敷でおこる数々のエピソードは興味深く、ページをめくる手がとめられないほどです。作者の子どもの頃にいた「お針子」の時代を忘れないために書いたということです。」
(『わたしたち、子どもの本の応援団』越高令子+山浦美幸+佐藤あけみ著 かもがわ出版 2022 より)