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2021年の夏休み図書として、これまでにあまり読まなかったようなジャンルを読んでみたくなり、近所の書店の科学・テクノロジー系における啓蒙書類のコーナーで本書のオレンジ色の背表紙が目に留まり購入。
これまでマット・リドレーの本は読んだことがなかったのだが、本書は450ページを超えるボリュームであることに加えて、同時期に他の本も並行して読んでいたことから、読了するまでに約半年を要してしまった。
イノベーションに関する本は数多存在するが、動物学の博士号を持ちながらも"合理的楽観主義者"として世界の多くのビジネスリーダーに影響を与えている著者が、人類のイノベーションの本質にどのように切り込んでいくのかについて、興味深く読み進めることができた。
冒頭では、動物学博士らしい導入からイノベーションとは何かという問いかけに始まり、エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、ローテク、通信とコンピュータ、偽物など、一般的にはあまり注目されないハイテク以外の分野においても、これでもかというくらいに具体的なイノベーション事例を挙げ、それらに通底する本質をあぶりだしていく。
シュンペーターやクリステンセンが世界に広めた『イノベーション』という言葉は、主にハイテク分野において、時に破壊的な作用を伴い、国や大企業が保有する多くの資金や発明によって実現されるものとイメージされがちであるが、著者はそれに対して真っ向からアンチテーゼを唱える。
また、イノベーションに関してだけでなく、世間一般で常識だと考えられている事柄に対して、様々な視点でエビデンスを提示しながら著者の反論が展開されていく論調は、意外性と示唆に富み、読み手を飽きさせない。
文字通り楽観主義的な考察も散見されるが、読み終わってみると本書邦題のサブタイトルが腑に落ちる。
自分は社会人になってから経営学を修めたが、研究テーマはイノベーション関連ではなかったものの、本書に述べられているような視点や考え方を持ち合わせていれば、論文にもう少し深みと厚みを持たせられたのではないかと思える一冊であった。
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電球、飛行機からエネルギー、食料、衛生、など多岐にわたる領域の「イノベーション」の豊富な事例紹介。とくにそれらが生み出された過程について。
それらを俯瞰してイノベーションの再現性を考察しつつ、最後はいまの特許制度がこれを阻害している、と締めている。
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イノベーションとはどういったことか知りたい人におすすめ。
【概要】
●各分野のイノベーション
エネルギー、公衆衛生、輸送、食料、ローテク、通信とコンピュータ、先史時代
●イノベーションの本質、経済学
●偽物のイノベーション
●イノベーションへの抵抗
【感想】
●歴史から見たイノベーションを各分野において説明している。雑学として読むのも面白いと思った。
●イノベーションを示す際にはいろいろな抵抗があるのも良く理解できた。過去の例を見れば枚挙にいとまがない。社会の発展にはイノベーションが必要であるため、イノベーションを阻害することがあってはならないと思った。
●改革に自由な発想は必要であり、アイデア出しの時点で真っ向から否定するのはよくない。ただし、明らかに組織の目的と合致していないものは不要であるため、別の機会を得て提示する必要があるのだろう。
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農業の発生とENIACと予防接種や蒸気機関を同列に並べる手法はとても興味深い。モノの見方の観点を変える訓練になる。
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過去のイノベーションを紐解き、これからの道筋を照らす。と言う趣旨ではないのかもしれないけど、産業、農業、そして、ITと、その時、何がと言う事が記されております。教育テレビなどで、発明家の偉人伝として見せるストーリーがギュッと凝縮されています。読み応え満点で、一つ一つのイノベーションも興味深いが、こうやって体系立ててみると、類似性やら気になることもでてきます。なぜ同じ頃に発露されるそのアイデアは、いったいどこからと興味は尽きません。
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イノベーションがいかに人類に豊かさをもたらしたかについてで、蒸気機関や電球などのエネルギー、ワクチンや水道などの公衆衛生、鉄道や飛行機などの輸送、ジャガイモや遺伝子編集などの食料、0やS字パイプなどのローテク、通信とコンピュータ、農業や家畜化なと先史時代といったそれぞれの分野の代表的なイノベーションを紹介。そしてイノベーションの本質、経済学、偽物、抵抗、現代における欠乏について論じている。
イノベーションには信じられているような瞬間的なものではなく、漸進的で段階的である。誰かがいないとなかったイノベーションはなく、他の誰かが辿り着いただろうというものがほとんど。原子力発電は安全性が求められ、イノベーションに不可欠な幾度もの実験ができないのでイノベーションが起きにくい。政府の形は社会学的シーラカンスといえるほどイノベーションがない。特許を巡る法廷での争いに多くの貴重な時間とお金が浪費されている。
前著に比べるとやや悲観的なトーンが見えるのは、Covid-19の影響か。
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イノベーションとは、発明ではない。
発明を人々が安価に使えるようになるまでの
一連のプロセスであり、1人の天才が
実現するものではない。
イノベーションは、
偶然により起きる
組み合わせで起きる
人々の間のアイデア交換で起こる、
従って、人々が出会う場が多い都市で起きる
組み合わせを試す、失敗への許容が有る
ところで起きる
逆に、
既得権を守る組織、
多くの規制がある国
人の集積を妨げる要因がある地域
(高い土地代など)
では、イノベーションが起きない
ただし、本としては、冗長すぎる
第8章の半分くらいが趣旨なので
13分の1の半分、1/26はいらないのでは、と
思ってしまう
本当に忙しいビルゲイツやザッカーバーグが
推奨しているのだろうか
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成長とはより少ない資源からより多くの利益を得ること
少ない資源であれば、地中から掘り起こすことなく
地上にあるもの(海の中は含まれるか)を利用するようになりそうだ
原子と電子の再配列
ここは私自身も抵抗を感じている
でも何故といわれると明確な理由もない
自由と失敗で進化する
最近、失敗していないな
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イノベーションはどのように起こるのか、何が促進し、何が阻害するのか。ハイテクからローテクまで様々なイノベーションを検証して共通する事象を考察する。
・イノベーションは段階的で、漸進的で、集積的でどうしても避けられないプロセス
・自由と失敗の中で、実用化できるほど安価に利用できるものとなって社会を大きく変革する
→規制による弊害
→失敗できない技術のイノベーションの困難さ
・トロッコ問題のようなトレードオフを受け入れるエビデンス
・世の中の準備が整わないとイノベーションは実現できない
例)キャスター付きカバン
・変化を起こすのは発明ではなく商業化
例)マクドナルド:簡単な食事は皿やフォークなしで食べられる形式を標準にして用意できる
・集団が小さいと脱イノベーションが起こる。スキルを学習する必要があるので、テクノロジーは小規模集団内の限定された専門化によってサポートできるまでに縮小。
・セレンディピティ:もともとは探していなかったものを、偶然に深い洞察力によって発見する
例)グーグルは検索エンジンを求めて起業したわけではない。インスタグラム創業者はゲームアプリをつくろうとしていた。
・アマラ・ハイプサイクル:初期の失望とのちの過大評価のあいだに、人びとが正しく理解する瞬間がある。15年後?
・分権・都市・脱物質化
・規制はイノベーションを遅滞させ、特許はイノベーションを促進しない。
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イノベーションはアイデアの生殖
とにかく試行錯誤が必要
エジソンのようにとにかく試してその経験を次に活かす
今の豊かさはイノベーションのおかげ
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これは読んで損なし。
海外の学者タイプの本は、なかなかリズムが合わず読みにくいけど、我慢して最後まで行けば、学びばかり。
移動時間、暇な時間が有意義なひと時になった。
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チェルノブイリと福島の事故を含め、原子力が電力一単位あたりで出す死者の数は、石炭の2000分の1、バイオ燃料の50分の1、ガスの40分の1、水力の15分の1、太陽光の5分の1、風力の2分の1。
18世紀の戦争によって軍に穀物の倉庫や家畜小屋が襲われたため、それを免れるジャガイモの栽培がヨーロッパで広まった。
現在、世界のエネルギーの約1%が窒素固定に使われており、人間の食糧に含まれる窒素原子の約半分を供給している。2010年の飢餓による年間死亡率は、1960年の100分の1になった。
1988年、サトウキビ畑から空気中の窒素を固定する能力があるグルコンアセトバクター・ジアゾトロフィクスが発見された。これを様々な植物の細胞内に生息させることが試みられ、トウモロコシ、コムギ、コメで収穫量とタンパク質含有量が顕著に向上することが示されている。
緑の革命が環境問題や農民の自殺のような社会問題を引き起こしたとするのは、フェイクニュースであることが判明している。
1838年、モールスは電線を介して符号を用いたメッセージを送ることに成功し、1843年に電線を敷設する予算が承認された。電信線の海底ケーブルは、1850年に英仏海峡を横断し、1866年に大西洋を横断し、1870年にイギリスからインドまでが開通し、1872年にはオーストラリアまで届いた。
クリシュナ・ヴィーラマは、4700~7000年前のイヌの骨化石から採取したDNAを分析し、現代の犬やオオカミのDNA配列と比較し、イヌはオオカミから約4万年前に分岐し、2万年前に東西に2分したと結論付けた。
人々はイノベーションについて最初の10年は過剰な期待をし、20年後には過小評価する。今日の経済成長の主エンジンの源は、より多くの資源を使うことではなく、より少ないもので、より多くを行うイノベーションを利用することだという流れが急増している。
著者は、GM作物や除草剤ラウンドアップへの抵抗や予防原則に対して批判的であることが興味深い。規制によって携帯電話やドローンの開発が遅れたことを挙げている。知的財産権もイノベーションを阻害すると主張する。知的財産権がもたらす額の4倍が訴訟に注がれていると言う。
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すぐれたアイデアや発明を実際に人々の役にたつ実用的で手頃な価格のイノベーションに変えるのに多くの労力がかかる。
遠くの領域と結合して、イノベーションは起こる。失敗は、できないやり方の発見。