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・「例外状況の社会民主主義」
→介護保険導入時、子ども子育て新制度 社会保障の機能強化と消費増税と結びつき 財務省
・「磁力としての新自由主義」
→国と地方の長期債務、有権者・納税者の不信、自治体の制度構造
・「日常的現実としての保守主義」
→十分な公的負担が得られず、結果として家族に頼る以外にない状況
・ベーシックアセット
(貧困)
・日本型生活保障の三重構造の破壊
→行政・会社・家族
・新しい生活困難層⇔福祉受給層
・トリクルダウンは起きない 生産拠点の海外移転、国際金融・知的サービス分野で稼ぐしかない
→二極化
・北欧型の福祉政策は、福祉受給層などにならないための予防的施策 よって、そのまま日本に移行しても機能しない
・日本の新自由主義は、欧米で福祉受給層に就労を迫ったのと違い、給付を単に減額し、対象をさらに絞ることに終始した。
・低い国民負担率なのに重税感が高いのは何故か。①納税者への還元の弱さ、②制度不振の深さと強さ、③税の循環の見えにくさ
・今後の方向性
→①包括的相談支援⇔就学前教育、リカレント
②オーダーメイド型雇用⇔生産性の高い
③補完型所得保障⇔失業期間、再教育期間の保障
(介護)
・ポイント→サービスの多元的な供給体制
・準市場
→政府が費用を負担し、当事者間に交換関係がある
・介護市場において大企業が占める割合は9%に過ぎない。意図的に抑制。市場志向の経済的自由主義が圧倒しているわけでhない。
・ケアマネの中立性も課題→市場の論理に拘束
・準市場の形が家族主義型、保守主義に近づく
→低所得者を排除するような制度改革が進むのであれば、新しい生活困難層が排除
ただし完全に市場志向型にはならない(そもそも儲かる市場ではない)
(育児)
・女性の就労促進と育児の両立支援が重視されているが、日本において女性就業率の上昇が家計収入の安定化や子供の貧困抑制に結びついていない。
→雇用の拡大が雇用の劣化と表裏一体だから
・経済的自由主義は女性の就労支援とあわせて専業主婦の優遇制度を撤廃しようとするが、育児・介護の公的支援は不十分に
・保育サービスのマタイ効果
→中間層の利用率が高く、低所得層は低い
・家族政策の類型
→①両性就労支援型、②一般家族支援型、③市場志向型
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これからの社会民主主義がどのような普遍主義を実現するのか、人々に何を保障していくことを目指すのかと考えたとき、「ベーシックアセット」は有力な回答の一つとなる。
(引用)貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ、著者:宮本太郎、発行所:朝日新聞出版、2021年、299
我が国においては、多様な福祉課題が存在する。その中においても、「貧困」「介護」「育児」といった3つの課題は、我が国において喫緊であり、最重要の課題として位置付けられるものであろう。
先日、「アンダークラス化する若者たち(明石出版、2021年)」を拝読した。本書では、主として貧困家庭に育ち、まともな学校教育が受けられず、正規雇用に就くこともできない多くの若者の存在を知った。そこには、満足な収入が得られない中で、「新たな生活困難層」として位置付けられ、従来の家庭・会社・行政という三重構造で成り立っていた社会保障の狭間でもがき苦しむ若者たちの姿があった。「アンダークラス化する若者たち」を編著された宮本太郎氏は、同書の中で、「ベーシックアセット」の必要性を提言していた。
ちなみに、アセットとは、ひとかたまりの有益な資源という意味である。その点では給付も公共サービスもアセットである(本書、22)。
これからの福祉政策は、なぜ、いま、AIの進展により、再び注目されつつあるベーシックインカムでもベーシックサービスでもなくベーシックアセットであるのか。また、ベーシックアセットという考えをどのように福祉政策に取り入れていくのか。その解を得るべく、福祉政治論の第一人者である宮本太郎氏による「貧困・介護・育児の政治(朝日新聞出版社)」を拝読させていただくこととした。
まず感じたことは、福祉政策は政治的影響を受けやすいということだ。
本書では、我が国における、貧困政治、介護政治、育児政治を通して、「社会民主主義」、「経済的自由主義(新自由主義)」、「保守主義」の3つの政治潮流の対抗を明らかにする。
中曽根政権による「増税なき財政再建」や小泉政権による「聖域なき構造改革」において、筆者は、財政的制約を第一条件とする「磁力として」の新自由主義という表現を用いる。この「磁力としての経済的自由主義」は、政治が安定すると復調してくる。この「磁力としての経済的自由主義」では、例えば、介護保険については、低所得層が制度から排除される傾向が強まるなどが発生する。また、小泉政権を引き継いだ麻生政権が自民党政治の揺ぐ中、「例外的状況」として社会民主主義的な提起が制度として実現することとなった。本書では、準市場や社会的投資をとおして、人々を社会参加可能とする最低限のアセットとつなぐ。そして、ポスト「第三の道」として、社会民主主義の再生を試みているところに興味を惹かれた。
政治潮流を背景とし、筆者は、ベーシックインカム、ベーシックサービスの対比を試みながら、ベーシックアセットへの道を提言する。
このベーシックアセットという言葉を聞いて、次の言葉を思い出した。
「Collective Impact」
直訳すれ��、「集まることによる力」となる。社会が抱える課題を、行政、企業、NPOなど役割の違う組織が、それぞれの特徴を生かして解決を探る考え方である。
朝日新聞記事では、東京都文京区における児童扶養手当、就学援助を受ける世帯に「こども宅食」を届ける例が紹介されている。1)
私は、「アンダークラス化する若者たち」と「貧困・介護・育児の政治」という一連の福祉政策の書籍からは、何よりも省庁や行政の縦割りの打破と関係機関との連携、そしてその考えを含めたベーシックアセットという考え方が必要であろうと思うに至った。それは、多様な支援機関の資源を活用するとともに、個々のニーズに即した、きめ細やかな施策が可能となることを期待するからだ。
現在、国では、こども庁の創設が進む。
新しく創設されるこども庁が情報を横断的に集約・分析し、強い総合調整機能を持ちながら、アンダークラス化する若者たちに対しての政策を展開してほしいと真に思う。そして、NPOや企業、各自治体とも連携しながら、国民に根差したものにしてほしいと思う。
このことは、各自治体においても、同様のことが言えよう。
コロナ禍において、さらなる分断な社会が進む。「貧困」は、さらなる複雑化・多様化する様相をみせる。政治潮流にも左右されやすい福祉政策であるが、「新たな生活困難層」が置き去りにされないことだけは、強く求められると感じた。例えば、「待機児童の解消」だけでは、少子化対策につながらない。ベーシックアセットという考えを常に意識し、福祉政策を進めるまちには、幸福感が増し、人々が集う。
具体的なベーシックアセットの政策例については、本書においてはあまり触れられていないが、筆者によって、3つの重要性を示している。それらの重要性を考慮しながら、政策を立案していく必要があるのだろうと感じた。
そして、少子高齢化や貧困化が顕在する現代において、新たなまちづくりは、まず、福祉政策の徹底にあるのではないだろうか。そうすることで、私たちのまちは輝きを取り戻し、少子高齢化や貧困といった社会課題の解決の糸口を探すことが可能となる。いま、日本の、そして地域の”福祉力”が何より問われていると強く感じた。
1)朝日新聞、波聞風問「子どもの貧困対策 企業ノウハウ未来への投資」、編集委員:多賀谷克彦、2017年9月19日朝刊
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日常的感覚としての保守主義、磁力としての新自由主義、例外状況としての社会民主主義の枠組みがすごくわかりやすかった。
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税が保険に投入されている結果、税のみを財源とする制度(生活保護など)で生きる人たちの貧困が深刻化&税しか払ってない(保険入ってない)人たちは損
ベーシックアセット…現金給付、サービス、コモンズ(公共財。とくにコミュニティ)を、個々人に必要な量をちゃんと必要な人に届けること。必要な人の相談に乗り、把握し、繋ぎ止めること重要。新自由主義的になりがち…(生活保護抑制など)それは△
なるほど、、